評論》「頼17条」に懸念、台湾学者76人が異議声明 頼清徳総統の大冒険

複数の学者が26日に「台湾の民主法治と平和安全を守る声明」記者会見を開催、左翼連盟事務局長の黄徳北(右3)、中央研究院研究員の盧倩儀(左2)、政治大学教授の馮建三(左1)、民進党創党党員の楊祖珺(右2)らが出席。(柯承惠撮影)

台湾・中央研究院の陳培哲院士ら76名が主導した「台湾民主法治と平和安全の擁護に関する声明」が、中国籍配偶者の亜亜(劉振亜)が出国した翌日(26日)に発表されました。同声明は「頼17条」に対する不満と懸念を表明し、台湾の言論自由の空間が急速に制限されつつあると認識し、戒厳時代の思想審査体制が台湾に迫っていると指摘し、「法に基づく統治」の憲政体制を深刻に損なっているとして、民進党政府に対し思いとどまるよう呼びかけています。

転換期正義への道のりは遠く、戒厳時代の論理を完全に再現

総統府はこの声明に対し尊重の意を示しつつも、台湾への侵略戦争や憎悪、暴力行為を扇動することは、民主主義と言論自由のレッドラインに抵触すると強く反論しました。この姿勢は、政府が方針を変えず、徹底的に推進することを宣言したも同然です。案の定、「人を対象にして事を対象にしない」という台湾民主主義の特徴が再び発揮され、ネット上の支持者たちは声明に参加した76人の個人情報を暴露し、さらには婚姻関係まで取り上げて大々的に批判しています。その目的は、この声明の代表性を否定することに他なりません。人格や人間性を破壊するだけでなく、彼らを社会の周縁人と見なし、自分たちが政治的に正しい陣営に属していることを誇示しています。

このような緊迫した状況下で、多くの人々が沈黙を選ぶ中、76人が実名で政府を批判する声明を発起したことは、たとえ意見が異なるとしても称賛に値します。少なくとも、政治的リスクを冒してでも、崩れかけている民主主義と自由を守ろうとする人々がまだ存在するのです。アメリカ建国の父トーマス・ジェファーソン(Thomas Jefferson)の名言に「信頼は専制の母であり、自由な政府は信頼ではなく、疑念に基づいて築かれると述べています。この声明には、そのような精神が見られます。 (関連記事: 独占》北京、頼政権に「政治的斬首」警告か?「頼17条」への反撃、中国が重大文書を準備、「台湾独立派リスト」も更新へ 関連記事をもっと読む

頼清徳総統は今年(2025年)の二二八事件中央記念式典で、政府は更なる転換期正義の実現に努めると述べました。私たちは心から頼総統がその言葉を実行することを期待しています。なぜなら、権威主義時代の負の遺産は今日に至るまで完全には除去されておらず、むしろ再燃の明確な兆しすら見られるからです。政府を無条件に支持し、信じることを求め、疑問を呈する者には集団で攻撃を加える、あるいは戒厳令に似た手段で「民主主義を守る」と主張し、さらには特定の人物が将来的に国家安全保障上のリスクとなる可能性があると「推論」し、事前に「処理」する必要があるという考えなど。これらはかつて戒厳や動員勘乱を正当化した論理であり、今日、一般のネットユーザーや院士クラスの高学歴者の口から完璧に再現されています。1970年代に「孤影」というペンネームで書かれた『一市民の心の声』が、今なお台湾社会全体の思考や行動を支配しているのです。