台湾が大好きな日本人、坂本志於里さんは、これまでに世界47か国を訪れ、台湾に対しても深い愛情を抱いています。今年はほぼ毎月のように台湾を訪れ、真剣に中国語を学んでおり、過去には台湾への留学経験もあります。
大学では教育学部に在籍し、小・中・高すべての教員免許を取得しましたが、当時の自分の視野の狭さを痛感し、「本当に良い先生になるのは難しいかもしれない」と感じたといいます。そこで、もっと広い世界を知るために海外へ飛び出すことを決意し、バックパッカーとして世界を旅し始めました。
この経験を通して旅行への強い関心が芽生え、やがて「もっと多くの日本人に旅の魅力を伝えたい」と思うようになったそうです。坂本さんは、「旅行や恋愛は単に世界を知る手段ではなく、自分自身を発見し、人生の可能性を広げるきっかけになる」と語っています。
坂本志於里さんは1991年11月23日、茨城県に生まれ、東京学芸大学教育学部初等教育教員養成課程国際教育専攻を卒業しました。在学中にはすでに47か国を訪れ、自身の視野を広げるとともに、2000人規模の学生団体でイベント企画に携わり、チケットを完売させるという実績も残しました。
卒業後は旅行会社に就職し、学生の教育旅行の手配を担当。その中で、彼女が行った恋愛相談サービスが学生の間で話題となり、翌年には特定の団体向けツアーガイドに抜擢され、社内に新たな前例を築きました。その後は広報、人事、コンテンツ制作など、多岐にわたる業務で活躍しました。
5年間旅行会社で働いた後、人材会社に転職し、「旅人採用」という新サービスの立ち上げに携わります。このサービスは、旅行やバックパック、留学経験のある若者が自分に合った仕事を見つけられるよう支援するものでした。
坂本さんは、海外経験を持つ多くの若者が、日本社会の働き方にうまく馴染めない現実を目の当たりにし、彼らの国際経験や個性を活かせるような支援をしたいという強い思いを持つようになります。
しかし、新型コロナウイルスの影響で「旅人採用」は一時的に停止を余儀なくされ、坂本さん自身も会社を離れることとなりました。仕事を失った後は、友人の業務を手伝いながら生活を続けていたものの、次第に仕事の依頼が増え、気がつけばフルタイムのフリーランスとして活動するようになっていました。
現在はフリーランスとして5年目を迎え、主にスポーツや音楽、旅行関連のイベント企画・運営を中心に活動しています。3社と関わりながら、ある日は国内外のイベントを現地で担当し、またある日はリモートで企業役員のスケジュール管理やメール対応といった秘書業務を行うなど、多岐にわたる働き方を実践しています。
坂本さんは、仕事と趣味はひとつに絞る必要はなく、さまざまな組み合わせ方があると考えています。パンデミック中にはライターやオンライン秘書など新しい職種に次々と挑戦し、その経験を通じて自身のスキルや興味、そして社会のニーズをより深く理解できたと語ります。
座右の銘は「人を成長させるのは旅行と恋愛」。坂本さんは今後も、自らの経験を活かしながら、多くの人に新しい可能性を届ける活動を続けていきたいと考えています。

旅と恋が人生を変えた──台湾を愛し、世界47か国を巡った坂本志於里さんの物語。(黃信維撮影)
「嫌な仕事の経験にも価値がある」 坂本志於里、これまでに47か国を訪問
坂本志於里さんにとって、たとえ好きではない仕事の経験であっても、それには価値があるといいます。それらの経験が、自身の強みや好みをより明確にする助けとなるからです。現在の坂本さんの働き方は、柔軟性と多様性を重視しており、イベント運営に積極的に取り組む日もあれば、フルリモートで働くことを選び、独自の生活スタイルと職業スタイルを両立させています。迷いを感じている多くの人に対して、彼女は「新しいことに挑戦することが大切」と語ります。「やりたいことがわからないのは、単にまだやったことがないからだ」と考え、不安や挑戦を通じて自分に本当に合った働き方や人生の方向性を見つけるべきだと述べています。その生き方は、坂本さん自身の姿勢を如実に反映しており、常に自分を成長させ、前進する彼女の在り方を示しています。
坂本さんはこれまでに47か国を訪問しており、その中でも特に印象に残っているのがキューバです。2018年に初めて一人旅で訪れたこの社会主義国家は、彼女に強い衝撃を与えました。キューバでは医療や教育がすべて無料で提供され、主食や野菜、肉、卵なども国から配給される一方、職業選択の自由がなく、仕事が完全に政府によって割り当てられるという現実に驚きを感じたといいます。この経験を通じて坂本さんは「自分とは何か」を深く考えるきっかけを得ると同時に、「キャリア教育」に対する興味が一層深まったと語っています。キューバ旅行を通じて、日本とは全く異なる生活様式を目の当たりにし、個人の価値や選択について新たな視点を得たそうです。
「旅行と恋愛は、人生に不可欠な要素ではないかもしれない」
これらの考えは、現在の坂本さんの仕事理念や方向性にも影響を与え続けています。彼女は「旅行と恋愛は必ずしも人生に欠かせないものではないかもしれないが、多くの人にとって喜びをもたらす体験である」と語ります。これらの経験は、人間の純粋で真摯な感情、すなわち「喜びから求める」「憧れから追い求める」といった感情から生まれるものだと考えています。旅行や恋愛には予測できない挑戦や困難がつきものですが、それらを乗り越え、時には痛みを経験してもなお、再び旅に出たり恋愛に飛び込んだりする意欲を失わないといいます。挫折や傷つく経験はその瞬間こそ心を折るかもしれませんが、時間が経つと、それらは貴重な思い出や笑い話へと変わるのだと語ります。
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坂本さんは笑いながらこう言います。「これ以上に不思議で素晴らしいことってあるでしょうか?」人間は予測できない出来事や文化の違いに直面するときに、内なる成長の可能性が引き出されると感じているそうです。困難に対処するプロセスや、自分自身の「非常識」と「非日常」と対話することを学ぶ過程は、成長と新たな発見をもたらしてくれます。坂本さんは、旅行や恋愛の魅力は未知の世界と触れ合う機会を提供し、自分を見つめ直すきっかけを与えてくれるところにあるといいます。そして「旅行や恋愛は私たちを成長させ、新たな自分を発見する契機となり、思考や感情の幅を広げてくれる」と力強く語りました。こうした経験が、彼女により深い感受性と洞察力をもたらし、その人生観や価値観に大きな影響を与えているのです。
2016年初めて台湾を訪問 中学生野球チームの国際大会に参加
坂本志於里さんが初めて台湾を訪れたのは2016年、旅行会社の添乗員として中学生野球チームの国際大会に参加したときでした。大会期間中、彼女は日本と台湾の中学生チームによる試合を見守りながら、選手たちをサポートする役割を担いました。このイベントは毎年12月23日から翌年1月3日にかけて行われるため、坂本さんにとってはクリスマスと年末をほぼ仕事に捧げる時期となりました。この経験を通じて、彼女は台湾の現地パートナーと深い絆を築くことができました。
特に印象に残っているのは、各バスに配置された台湾の大学生通訳との交流です。坂本さんは、「私は全く中国語がわからなかったのに、彼女は流暢な日本語を話していて本当に素晴らしかった」と振り返ります。その通訳の女性から教わった可愛らしい台湾華語の言い回しは、新鮮で楽しかったと語りました。言葉が通じない中での交流に台湾人の人情味を強く感じた一方で、自分の思いを十分に伝えられないもどかしさも覚えたそうです。この経験がきっかけで「いつか必ず台湾に留学したい」という目標を持つようになり、今年ついにその願いを実現し、台湾での留学生活を始めることができました。

旅と恋が人生を変えた──台湾を愛し、世界47か国を巡った坂本志於里さんの物語。(黃信維撮影)
「人と人との距離感が魅力」台湾で感じた特別な生活
坂本さんが毎月訪れる台湾で最も気に入っているのは、「人と人との距離感」だといいます。この距離感が非常に心地よく、台湾ではより自分らしくいられると感じているそうです。彼女は、台湾の人々が多くの場合、他者を助けることに積極的である点を挙げ、「迷ったときに道案内だけでなく、実際に目的地まで連れて行ってくれる」といった友人のエピソードを紹介しました。このような親切な態度に触れたとき、日本の田舎のおじいさんやおばあさん、または大阪のおばちゃんを思い出したといいます。親しみやすく、時には少しお節介にも感じられるその距離感が、彼女にとっては絶妙なバランスだと感じたそうです。
さらに、台湾では店やレストラン、図書館、さらにはエレベーターの中でも誰かが話しかけてくれることが多く、そうした人々の温かさに感動していると語ります。彼女は、「こうした距離感に慣れない人もいるかもしれませんが、私にとってはとても心地よいものです」と述べ、台湾の親しみやすい文化に魅了されていると話しました。坂本さんは、台湾人のように積極的に会話を楽しむことを心がけ、レストランで隣の席に座る面白そうな人に話しかけることもあるそうです。これは日本では考えにくい行動だと振り返ります。
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台湾での特別な思い出 レストランでの偶然の出会いが生んだ友情
坂本さんは、台湾での特別な思い出の一つとして、昨年夏にレストランで偶然出会った男性たちとのエピソードを挙げました。彼らは彼女の父親と同年代で、その場で親しくなり、現在も連絡を取り合う友人関係を築いているといいます。彼らと再会するために台中まで食事に行ったこともあり、この経験を通じて台湾人の温かさを改めて感じたと語りました。
また、坂本さんは台湾人の魅力について、他人の目や評価をあまり気にせず、自分の意志を大切にするところにあると述べています。このようなありのままの自分でいる姿勢や無償の優しさに触れることで、彼女自身もより自分らしくいられるようになり、自己を肯定し、真実の感情を追求することを学んだそうです。
台湾の外食文化に感動 地瓜球から豆花まで満喫
坂本さんは台湾の外食文化にも特に惹かれていると語ります。早朝から営業している朝食店や深夜まで賑わう夜市、多様な食事の選択肢に感動しているそうです。特に地瓜球や蛋餅、豆花といった台湾グルメを好んでおり、その美味しさに毎回心を奪われているとのことです。台湾での生活を通じて得たこれらの経験は、坂本さんにとって特別なインスピレーションを与え続けています。
観光業での経験を活かして 坂本志於里が語る台湾観光の魅力
坂本志於里さんは、台湾観光に関するおすすめとして、U-Bikeのレンタルシステムを挙げています。30分以内であれば無料という経済的で実用的な仕組みは、都市を探索する旅行者にとって非常に便利だといいます。また、初めて台湾を訪れる人には台北から始めることを推奨しつつも、「台湾の魅力は台北だけに留まらない」と強調。台湾には魅力的な地域が数多くあり、一度では全てを満喫することが難しいため、何度か訪れて異なるエリアを少しずつ楽しむことを勧めています。
さらに、坂本さんは「日本から台湾へは飛行機で約3時間半。短期間の旅行に最適です」と語り、金曜の仕事終わりに出発し、週末2日間を利用する「弾丸旅行」が日本のビジネスパーソンに特に人気であると述べています。また、昭和の懐かしい雰囲気が残る街並み、美味しいグルメ、そして数多くの観光名所が台湾の魅力であると改めて強調しました。

旅と恋が人生を変えた──台湾を愛し、世界47か国を巡った坂本志於里さんの物語。(黃信維撮影)
台湾生活とその魅力 長期滞在で得られる特別な体験
坂本さんは、長期滞在による台湾の魅力を深く体験することの重要性も指摘しています。特にWi-Fiや電源コンセントが充実したカフェが多い点を挙げ、リモートワーカーやフリーランスにとって台湾は理想的な「ワーケーション」スポットだと語りました。また、日本人が中長期的に台湾で生活し、多文化や独特のライフスタイルを体験することを奨励。「台湾は、短期間の旅行だけでなく、生活することでさらに深い魅力を発見できる場所です」と述べました。
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坂本さんは「台湾は私が定住を考えた唯一の国」と断言します。これまでに48か国を訪れた経験を持つ彼女ですが、今年の約半分は台湾で過ごしており、まさに半定住状態と言える生活を送っています。台湾の伝統文化を大切にしつつ、新しいものを創り出すクリエイティブさ、多様性や異文化を尊重する姿勢、そしてLGBTQ+に対する受容性を特に評価しています。また、町中に点在する緑地や自然、終わりのない夏、さらには美味しい料理と親切な店主たちが、彼女にとって台湾をさらに魅力的にしている要素だといいます。
台湾を愛する理由 距離感と人情味が最大の魅力
坂本志於里さんは、台湾への愛情について語る際、その目に特別な輝きが宿ります。「台湾にいると安心感があり、心が癒される。特に台湾人の適度な距離感がとても心地よい」と彼女は述べています。日本人として東京で暮らす中で、無意識のうちに周囲の目を気にしてしまい、それが長期間続くと知らず知らずのうちに疲れやストレスを感じるようになるといいます。一方、台湾では人々がより自由に生活し、他人の目をあまり気にしないため、彼女自身も次第に解放感を覚えるようになったそうです。
坂本さんにとって、日本の礼儀や遠慮が時にストレスとなることもあるのに対し、台湾ではより自然体で過ごすことができると感じています。「台湾では人間関係がより親しみやすく自然」と述べ、日本では社会的礼儀に気を配る必要がある一方、台湾ではそれほど気にする必要がなく、その適度な距離感が非常に心地よいと話します。
日常に溶け込む優しさ──台湾で出会った人々
特に印象的なのは、坂本さんが笑顔で語る「台湾の人は感謝されたいからではなく、親切心で行動している」という観察です。台湾ではエレベーターの中で見知らぬ人から「何階ですか」と声をかけられることも珍しくなく、こうした日常的な交流が日本では考えられない親しみやすさだと指摘します。当初は台湾の食べ物や観光に惹かれて訪れていましたが、最近ではむしろ様々な人との出会いや会話を楽しみにしていると語ります。
坂本さんは2024年に約12回台湾を訪れ、3月から5月の約3か月は留学のため台湾に短期移住したほか、10月と11月にもそれぞれ2回訪問したといいます。計算してみると、年間のおよそ半分(49%)を台湾で過ごしたことになるそうです。この頻繁な往来を可能にするため、現在はゴールドカードビザの取得を検討中とのこと。現時点では観光ビザでの短期滞在を繰り返していますが、より柔軟に台湾での活動を展開できるよう準備を進めています。
台湾で生まれた友情と信頼
台湾での経験について、坂本さんは印象的なエピソードを語りました。台湾ではカフェやレストラン、バーで偶然の出会いから友情が生まれることが珍しくないといいます。台北のレストランで知り合った台中出身の65歳の男性2人とのエピソードは特に心に残っているそうです。彼らが日本語を少し話せたことから会話が始まり、連絡先を交換。日本なら社交辞令で終わりそうなやりとりが、2か月後に台中を訪れた際には、高鐵駅まで迎えに来てくれただけでなく、観光案内をしてくれ、「自宅に泊まってもいい」と申し出てくれたといいます。「こんなに親切な人が本当にいるの?」と感動したと振り返ります。
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台湾との未来を見据えて──2025年の計画と展望
2025年の予定について、坂本さんは1月7日から2週間の台湾旅行を計画しており、2月中旬には台中でのサッカー関連イベントに参加するために約2週間滞在する予定です。本田圭佑さん関連の仕事を終えた後は、日本と台湾の文化やブランド交流に専念したいと考えているそうです。日本の食品やブランドを台湾でポップアップイベントとして展開したり、逆に台湾のブランドを日本で紹介する活動に取り組みたいと熱く語ります。
近年は日本国内の台湾関連イベントにも積極的に参加している坂本さん。「台湾祭」などの大規模な文化交流イベントに携わる中で、台湾のインフルエンサーや意見リーダーとの交流も増えてきたことが、日台間の文化的架け橋になりたいという彼女の願いをさらに強めているようです。「台湾について気になることがあれば、私に聞けば解決できる」という信頼関係を築き、台湾に関心を持つ日本人にもっと多くの情報やサポートを提供したいと語ります。
語学の壁と向き合いながら
ただ、坂本さんは自身の中国語能力がまだ理想的なレベルに達していないと感じており、再び台湾で留学するか検討中です。過去に国立師範大学語学センターで学んだ経験を「美しく、言語を磨くための理想的な場所」と表現し、昨年1か月、今年は3か月学んだといいます。1年間集中して学べば良いレベルに到達できると感じつつも、仕事とのバランスの難しさも吐露しました。
台湾の家庭内の密接なつながりについても触れ、ほぼ毎日連絡を取り合う台湾の文化が、日本の家庭のコミュニケーションと対照的だと感じているそうです。若者にプレッシャーになる側面もある一方で、家庭の温かさや帰属意識を感じられる文化だとも評価しています。
未来への展望 日台交流をさらに深めるために
坂本さんにとって台湾は、単なる旅先ではなく、心を落ち着け、親しみを感じられる特別な場所です。台湾ならではの温かな雰囲気、美味しい食べ物、豊かな自然、そして何よりも人々の情にあふれた文化は、彼女の心を強く惹きつけてやみません。そんな彼女が抱く「自身の経験と努力を通じて、日台間の文化交流をさらに深めていきたい」という思いは、今後の活動を支える大きな原動力となっていくでしょう。
坂本さんは、「台湾推進大使」としての自覚を持ちながら、これからも台湾の魅力を伝える取り組みを続けていく意欲を見せています。台湾を頻繁に訪れ、そこで出会った美しい文化や景色、人々とのふれあいをさまざまな形で発信していくことが目標です。「台湾については、まだまだ知らないことがたくさんあります。これからももっと足を運び、新たな魅力を発見していきたいです」と語り、今後も日台の文化的な架け橋として貢献したいと力を込めました。
そして最後に坂本さんは、「台湾の素晴らしさを、もっと多くの日本の方々に知っていただきたい」と力強く語り、日台両国の交流が今後ますます深まり、広がっていくことを心から願っていると締めくくりました。