天邑(てんゆう)は、大阪府堺市出身のシンガーソングライターであり、日本人の父と台湾人の母を持つハーフである。天邑は《風傳媒》のインタビューにおいて、自身が音楽の道を歩み始めたきっかけについて語った。彼女は小学生の頃、いたずらをして母に叱られそうになり、家の押し入れに隠れたことがあった。そこで偶然ギターを見つけ、それが音楽の世界への入り口となったという。
彼女の楽曲はすべて自身が作詞・作曲しており、創作の過程で特に印象に残っている思い出も語った。その中でも最も記憶に残る作品は、家族に捧げた楽曲であり、特に父のために作った歌「パパの唄」は、アーティストとしての歩みを始めて以来、12年間の活動の中で特別な存在だという。

天邑
日常会話と映画の台詞がインスピレーションの源泉 本よりも「言葉が生きている場所」
天邑は、自身の楽曲のインスピレーション源について、日常会話や映画の台詞が大きな影響を与えていると語った。彼女は映画を観ながら、気に入った台詞をメモし、それを歌詞の素材として活用している。主に日本映画を観ることが多いため、日本語の語彙の組み合わせ方に独特な魅力を感じており、台詞を通じて言葉の表現を学ぶだけでなく、音楽制作のインスピレーションも得ているという。
また、彼女は読書があまり得意ではないと率直に語り、本からも豊富な言葉を学べるものの、映画や会話など外部の情報から得られるインスピレーションのほうが自分にとっては身近だと話した。そのため、彼女の楽曲は周囲の環境から受けた感情や思考が色濃く反映されている。
リスナーと共に悩み、共に歩む存在でありたい「私の歌で頑張ろうと思ってほしい」
自身の音楽におけるスタンスについて、天邑は「みんなが憧れるようなアーティスト」ではなく、リスナーと同じ視点で一緒に人生の困難に立ち向かう存在でありたいと語った。彼女自身も、日々悩みや困難を抱えながらも前に進もうとしており、音楽を通じて「私たちはみんな同じ、共に頑張っている」と感じてもらいたいという。彼女は「私の曲を聴いたときに『私も頑張ろう!』と思ってもらえたら、それが一番嬉しい」と語り、自身の音楽が共感を生むことを目指している。
また、天邑は台湾と日本の両文化を持つハーフとしてのアイデンティティに誇りを持ち、音楽を通じて日台の文化をつなぐ架け橋になりたいという願いも語った。
ネイルアートへの情熱と母の愛 音楽と並ぶもう一つの表現手段
それ以来、ネイルアートに興味を持ち、高校ではネイルアートの専門課程を履修し、資格も取得した。現在、天邑はシンガーソングライターとしての活動を続ける一方で、プロのネイリストとしても活動しており、中国や台湾からの顧客を含む多くの固定客を持っている。彼女はネイルを施す際、顧客との会話を通じて中国語を学ぶこともあり、言語能力の向上にもつながっていると語った。

天邑
新曲『MY CHANCE』に込めたメッセージ「自分を認めること」から始まる応援歌
天邑は、2024年11月29日にリリースした新曲『MY CHANCE』について語った。この楽曲は、すべての努力を続けるすべての人々への応援ソングとして制作されたものであり、彼女はこの曲を通じてリスナーを励まし、「自己肯定」の大切さを伝えたいと考えている。彼女は、「自分で自分を褒めなければ、誰も代わりに褒めてくれない。自分を好きにならなければ、他人のことを本当に好きになるのも難しい」と強調した。そのため、天邑は飾らない自然体の自分を表現することを大切にし、この曲がリスナーに力を与え、共感を呼ぶことを願っている。
台湾一周と西門町ライブを夢見て「音楽の夢を全力で追いかけたい」
また、天邑は台湾での活動にも興味があると語った。彼女は今後の目標の一つとして、車で台湾一周をしてみたいと考えており、さらには、過去に大阪のストリートで歌っていた経験を活かし、台北・西門町でのストリートライブにも挑戦したいという。
インタビューの最後に、天邑は将来の目標についても語った。彼女は、ただ「こうなりたい」と考えるだけでなく、言葉に出して実現に向けて行動し、自信を持って歌い続けていきたいと強調した。音楽活動における夢については、「もし日本の音楽シーンで順調にキャリアを築けたら、武道館ライブや紅白歌合戦といった大舞台にも挑戦したい」と意欲を見せた。彼女は、「自分にできることはすべてやりたい。与えられたチャンスは全力で掴み、音楽の夢を追い続けたい」と、力強く語った。
音楽とネイル、二つの夢を追うマルチアーティスト
天邑は12歳から独学でギターを学び、15歳で地元・堺市にてストリートライブを開始した。2016年11月に初のシングル『どんなバツでも。』をリリースし、2019年8月には2枚目のシングル『ボクが望む僕』を発表。2022年に活動拠点を東京に移し、ライブ活動やSNSでの発信、ストリートパフォーマンスなど多方面での音楽活動を展開している。また、オーストラリアの老舗ギターブランドMaton Guitarsの認定公認アーティストとしても活躍している。さらに、天邑はネイリストの検定も合格しており、東京でネイルの仕事も行っている。
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台湾文化との出会いがくれた温もりと刺激
天邑は日本と台湾、二つの文化を体験した自身の感想について語った。彼女は特に、台湾人が家族や親戚を大切にする文化に魅力を感じていると述べた。台湾では、両親や親戚とのつながりをとても大切にするため、家庭の温かさをより強く感じるという。日本とは異なるこの価値観は、彼女にとって特に印象的だった。また、台湾と日本の食文化の違いにも言及し、特に朝食文化の違いが興味深いと話した。台湾では朝食店が多く、すぐ近くで蛋餅や茶葉蛋などを買えるため、とても便利だという。台湾にいると、朝食のために早起きするモチベーションが上がるとも語った。
天邑は名古屋で行われる台湾文化イベントに3年連続で出演しており、そこでの経験についても語った。このイベントでは多くの台湾料理の屋台が出店されており、年々来場者が増えているという。彼女は、このイベントのステージを通じて自身の音楽を知ってくれる人が増え、毎年新しいファンが増えることが嬉しいと話した。さらに、ステージが終わった後は屋台を巡り、台湾グルメを楽しむのもイベントの醍醐味だと述べた。彼女は特に、米粉湯、陽春麺、大鶏排が好きで、このイベントを通じて台湾の味を堪能できるのが楽しみの一つだと語った。

天邑
母の味と夜市の思い出が紡ぐアイデンティティ
また、最も好きな台湾料理は母親が作る油飯だと話した。台湾の油飯は地域によって味が異なるが、彼女の母親は台北出身のため、甘めの味付けが好みだという。さらに、家庭では魯肉飯もよく作られ、天邑のワンマンライブの際には、母親が台湾料理を用意し、スタッフや観客に振る舞うこともあるという。みんなから「おいしい」と言われることが、とても嬉しいそうだ。
台湾の夜市についても話が及び、天邑が最も好きな夜市グルメはトマトの糖葫蘆だと語った。トマトは酸味のあるものもあるが、中にはとても甘い品種もあり、彼女にとってお気に入りのスイーツだという。こうした台湾の食文化や家庭の温かさを体験することが、彼女にとって大きな喜びとなっている。
音楽とネイルを軸に生きる日常と創作
天邑のネイルデザインはすべて自身で手がけており、取材時はバレンタインの時期だったため、最近はイチゴやチョコレートをテーマにしたデザインをしていると語った。、自身の音楽活動とネイルアートという二つの情熱を並行できることが幸福だと語る。
また、猫と美容は彼女の日常生活に欠かせない要素であり、音楽創作にも影響を与えているという。彼女は「琥珀」と「コテツ」という2匹の猫を飼っており、それぞれにちなんだ楽曲を作ったことを明かした。幼少期から母親の影響を受け、台湾の「家族を大切にする文化」の中で育ったこともあり、猫も家族の一員として深く愛している。彼女は音楽を通して、この特別な感情を表現したいと考えている。
台湾との音楽的つながりとYouTubeの反響
個人の創作活動に加え、天邑は台湾のアーティストとのコラボレーションにも意欲的で、特にYouTube上でのデュエット企画に興味があるという。過去には、米津玄師とAimerの楽曲をカバーし、YouTubeで700万回以上再生された経験があり、その際には台湾のリスナーからも多くの称賛コメントが寄せられた。このような反響に励まされ、台湾の音楽シーンともつながりたいと考えるようになった。
また、天邑はネイリストとしての活動を通じて日々のインスピレーションを得ているとも語る。彼女は、日常の出来事が音楽制作に影響を与えると考えており、「毎日経験することすべてが曲に反映されていく」と強調した。彼女にとって、顧客との何気ない会話さえも創作のヒントになるのだという。
さらに、天邑は美容に関しても独自のこだわりを持っている。化粧品に対する強いこだわりはないものの、撮影前には必ず顔のマッサージ(刮痧)を行い、フェイスラインを引き締めることを欠かさない。特に、母親がプレゼントしてくれた台湾製の海洋珊瑚を成分に含む美容アイテムを愛用しており、これを使うことで肌を整えているという。彼女にとって、美容ケアは単なるルーティンではなく、「家族とのつながりを感じる大切な時間」でもあると語った。
台湾語の歌と台湾一周の夢——未来にかける想い
言語については、現在も台湾語や中国語を学習中だが、今後は自身の楽曲に台湾語の歌詞を取り入れたいと考えている。彼女は、台湾のリスナーにとってもより親しみやすい音楽を作りたいと願っており、最終的には日本と台湾の両方で広く聴かれる楽曲を生み出し、両国の観客が一緒に合唱できるような場を作ることが夢だと語った。
また、天邑は将来台湾をもっと深く知りたいとも考えており、もし機会があれば車で台湾一周をして、各地の風景や文化を自分の目で見て体験したいと話した。さらに、台湾の音楽シーンとの交流を深めるために、台北・西門町でのストリートライブにも挑戦したいと考えている。彼女は、「台湾のリスナーともっと直接つながる機会を増やしたい」と語り、未来の活動への意欲を見せた。