【46%関税】「ベトナム製」がNike直撃 トランプがスニーカー市場を揺らす

2025年4月3日。ベトナムのハノイにあるナイキショップの前を通過する男性。(AP)

過去数年、多くの企業は米中貿易戦争の影響を避けるため、生産拠点を中国からベトナムに移してきた。だが、もはや逃げ場はない。米国のドナルド・トランプ大統領は4月2日、貿易戦争を世界規模へ拡大する方針を発表し、ベトナムはその第一の標的となった。ベトナム製品に対して46%の輸入関税を課すという。英フィナンシャル・タイムズは6日、ベトナムに130の工場を持ち、スニーカーの生産量の半分を同国に依存するNikeにとって、これはまさに強烈な一撃だと報じた。

Nikeは2月に最新のランニングシューズ「Vomero 18」を発売したばかりで、エリオット・ヒルCEOはこのモデルによって他ブランドへ流れたランナーを呼び戻すことを期待していた。だが今、そのシューズに貼られた「ベトナム製」のラベルが新たな問題となっている。

フィナンシャル・タイムズ』によると、ベトナムはすでに世界的なスニーカー生産拠点となっている。トランプ氏は製造業を米国へ回帰させるため、ベトナム製品に46%の関税を課すと発表し、9日から施行する予定だ。しかし専門家らは、米国には靴の生産に必要な専用設備や熟練労働者が不足していることから、実際の影響はスニーカーの価格上昇にとどまる可能性が高いと見ている。

『AP通信』によると、米国には熟練かつ靴作りに従事したい労働力が不足しているだけでなく、米国靴卸・小売業協会(Footwear Distributors and Retailers of America)がトランプ政権に提出した意見書の中でも、米国内には通常の靴を製造するのに必要な70種類以上の素材が揃っていないと指摘されている。

米国に本社を置くNikeは、すでに1995年にはベトナムに進出し、5つの委託工場と提携して工場を設立した。同社はベトナム初期の外資系企業のひとつであり、安価な労働力を背景に急速にサプライチェーンを拡大、多数の雇用を生み出してきた。現在、Nikeはベトナムに130の工場を持ち、シューズ、アパレル、アクセサリーを生産している。『フィナンシャル・タイムズ』によると、Nikeのシューズの半分はベトナム製で、ドイツのライバルAdidasも39%をベトナムで製造している。

Adidas、Nike和Puma跟数百間製造工廠合作,這些工廠許多位在被美國課徵最高關稅稅率的國家。
Adidas、NikeとPumaは数百の製造工場と提携しており、これらの工場の多くは米国が最高の関税率を課している国々に位置している。

データ分析会社Kantarの副社長デイビッド・マルコット(David Marcotte)氏は冗談交じりに「ベトナムより安い生産拠点を見つけるには地球を離れるしかない」と語った。

米国衣料・履物協会(American Apparel & Footwear Association)によると、米国は2022年に布製スニーカーに20%の関税を課しており、今回の46%はこれにさらに上乗せされる形となる。 (関連記事: 台湾株式市場、2,000ポイント超の急落で取引開始 「TSMCは848台湾ドルに下落」過去最大の下げ幅を記録 関連記事をもっと読む

S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのサプライチェーン研究責任者クリス・ロジャース(Chris Rogers)氏は、メーカーが他国へ生産を移す選択肢はあるが、こうした調整には通常2年を要し企業は5年単位で計画を立てていると指摘する。