台湾先住民が映像で語る「忘れられた戦い」 3年をかけた記録作品『百年原殤』

ブロガーが『百年の痛み』を深く評価:歴史を単一的な視点から解放し、先住民族の心の中にある抗争の記憶を再現。(写真/原住民族委員会提供)

台湾原住民族委員会(原民会)と財団法人原住民族文化事業基金会(原文会)が3年をかけて共同制作した映像作品『百年原殤』が、4月2日のプレミア上映以降、各方面から高い評価を受けている。台湾社会における原住民族史への関心を呼び起こし、多くの観客の共感を誘った。映画ブロガー「映画好きのポニョ愛看電影的波妞)」は、鑑賞後に「これは単なる歴史の回顧ではなく、歴史の語りを取り戻す作品だ」と感想を語った。

ポニョ氏は、「歴史はひとつの声で語られるべきではない」と述べたうえで、本作は『原住民族重大歴史事件シリーズ』を原作に、Cepo'戦役、タロコ族の抗日戦役、大豹社抗日戦争という3つの事件を、ドキュメンタリーとドラマの両軸で描いた構成だと評価。特に18年に及んだタロコ族の抗日戦役は、台湾原住民族抗日の中でも最大規模の戦いであったにもかかわらず、「しばしば簡略化されたり、無視されてきた」。本作はその空白を映像で埋め、民族の記憶を現代に蘇らせたという。

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ドキュメンタリーとドラマで描く、心の記憶と民族の選択

ポニョ氏は、タロコ族の抗戦を描いたドキュメンタリー『抵禦之山』と、ドラマ作品『抉擇』の2作が特に印象に残ったと語る。『抵禦之山』の監督・楊鈞凱氏は、部落でのフィールド調査を徹底し、年配者による口述と若者の祖霊探しを通して、過去の戦場と現代の部落がつながる構成に仕上げた。
「雄大な山林と、祖先の足跡をたどる険しい古道を映し出す映像は、銃弾の応酬だけでなく、土地と文化を守る戦いでもあったことを強く感じさせる」

一方、『抉擇』の監督・蘇弘恩氏は、若い族人Uminの視点から、戦争による葛藤や民族存続をかけた決断を描く。Uminは、族長の慎重な判断、兄の戦士としての誇り、そして民族の命運の間で、苦渋の選択を迫られる。「光と影、場面転換の演出を通じて、観客が感情移入しやすくなっており、戦争とは単なる対立ではなく、未来に向けた決断でもあることが理解できる」とポニョ氏は語る。

そして何より、「これらの作品は単なる歴史の回顧ではなく、語りの主導権を取り戻す試みそのもの」と強調。「歴史の重みが博物館や教科書の中にとどまらず、自らのアイデンティティとして受け継がれるようになっている」と述べ、3年にわたる丁寧な現地調査と、年長者の記憶や若者のルーツ探しがもたらすリアリティは、作品に深い感動を与えていると評価した。

先住民による語りが、台湾社会に多様な声を届ける

『百年原殤』は、原住民族出身の監督や俳優が自ら参加したことに意義がある。ポニョ氏は「これまでの原住民族の抗日史は、主流の歴史観に基づいた一面的な記述に偏っていたが、本作は先住民自身の視点から語られた歴史として、まったく新しい意味を持っている」と述べる。

この作品は「沈黙を破るものであると同時に、文化的アイデンティティと歴史的正義を問うものであり、より多くの人に観てほしい」と訴える。

「この映像を通じて、歴史は教科書の中の図や文章ではなく、現代の私たちとつながる文化継承の形になる。これは過去を描く作品であると同時に、未来を考えるための対話でもある」と締めくくった。

文化の伝承は映像にとどまらず、『百年原殤』は未来への語りかけ

『百年原殤』シリーズは、4月5日より台湾原住民族テレビで順次放送中。この作品を通じて、より多くの人々が歴史に触れ、この土地に生きる多様な声と向き合う機会となることが期待されている。

先住民自身が語る命の物語が、台湾の多元文化の豊かさと奥深さをより多くの人に届け、受け継がれていくことを願ってやまない。

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