トップ ニュース 2026年は「グレイ・スワン」に警戒せよ BNPパリバ中空氏が説くAIバブル崩壊と「悪い円安」のリスク
2026年は「グレイ・スワン」に警戒せよ BNPパリバ中空氏が説くAIバブル崩壊と「悪い円安」のリスク 2026年の世界経済は緩やかな成長軌道にあるものの、AIバブルの崩壊や各国の財政規律の緩みといった「グレイ・スワン」への警戒と、有事に備えた徹底的な分散投資が求められている。(写真/日本記者クラブ提供)
BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈氏は1月19日、日本記者クラブで「2026年のクレジット市場見通し~グレイ・スワンに備えながらのリスクテイク~」と題して講演を行った。
基本シナリオは「安定成長」、だが死角も 中空氏は、2026年の世界経済について、基本的には緩やかで安定的な成長が継続するとの見通しを示した。米国や欧州の景気は底堅く、中国も減速傾向にはあるものの4.5%程度の成長は維持できるとし、日本についても0.7〜0.8%程度の成長を見込む。
クレジット市場においても、需給環境の良化や、市場の警鐘役とされるCLO(ローン担保証券)のスプレッドがタイト化(縮小)して安定していることから、リーマンショックのような巨大な金融危機の発生確率は低いと分析した。
しかし、中空氏は市場に潜む「グレイ・スワン(確率は低いが起こり得るリスク)」として、米国の政治動向、AIバブルとプライベートクレジットの連鎖、そして各国の財政悪化などを挙げ、楽観論の中でリスクを見極める重要性を強調した。
トランプ政権の予測不能な行動とインフレ圧力 最大のリスク要因の一つとして挙げられたのが、トランプ米大統領の政策運営と米国経済の行方だ。中空氏は、年初のベネズエラ情勢への介入などを例に挙げ、トランプ政権の予測不能な行動が地政学リスクを高める可能性に言及した。特に懸念されるのは、関税引き上げや厳格な移民政策がもたらすインフレ圧力と労働市場への影響だ。
これまでの米国経済はインフレと成長のバランスが保たれていたが、関税による物価上昇や中小企業のコスト転嫁が進むことで、消費が圧迫される恐れがある。また、家計のバランスシートは全体では良好に見えるものの、富裕層とそれ以外の格差が拡大しており、クレジットカードや学生ローンの延滞率が上昇している点も指摘。局所的なデフォルト(債務不履行)リスクが高まっているとし、米国経済の足元の強さに隠れた脆弱性を注視すべきだとした。
「令和版錬金術」?AIバブルとプライベートクレジットの連鎖 また、急速に拡大する「プライベートクレジット(未公開企業向け融資)」市場とAI(人工知能)バブルの関連性についても警鐘を鳴らした。プライベートクレジット市場は過去5年で急成長し、市場規模はハイイールド債やレバレッジドローン市場に匹敵する水準に達している。
2026年中に決定的な崩壊が起きる可能性は低いとしつつも、オラクルなどの大手企業であっても資金調達環境が変化しており、AI関連の成長が止まった場合の市場への衝撃は計り知れないとした。
日本の財政規律喪失と「悪い円安」 日本の財政状況については、極めて厳しい見方を示した。日本の国債市場では30年債利回りが一時3.5%に達するなど、財政リスクを織り込む動きが出始めている。中空氏は、現在は過去の低金利と円安による企業業績の向上で税収が増える「財政ボーナス期」にあるため表面的な数字は悪くないが、将来的にはプライマリーバランス(基礎的財政収支)が悪化していくことは確実だと指摘した。
それにもかかわらず、政治の場では消費税減税やバラマキ的な財政出動ばかりが議論され、将来の財政悪化に対する危機感が欠如していると批判。金利上昇と円安が同時に進む「悪い円安」のスパイラルに陥るリスクがあり、格付け機関による日本国債の格下げも将来的には十分にあり得ると警戒感を示した。
為替については、1ドル=135円から160円のレンジで推移すると予測しつつも、日本の基礎体力が強化されなければ円安基調は変わらないと述べた。
「悲観は気分、楽観は意思」 講演の締めくくりとして中空氏は、日本政府の産業政策についても言及した。政府は巨額の基金を設立しているが、投資先が分散しており、国家としてどの産業で勝負するのかという戦略が見えないと指摘。ドイツや米国のように、特定の有望分野や企業に集中的に資本を投下しなければ、グローバルな競争には勝てないと断じた。
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