トップ ニュース 米軍の来援を阻む「海上の長城」か 中国が東シナ海で数千隻の漁船を展開、500キロの隊列を形成
米軍の来援を阻む「海上の長城」か 中国が東シナ海で数千隻の漁船を展開、500キロの隊列を形成 2023年4月22日、南シナ海の紛争海域に姿を現した中国の海上民兵。(写真/AP通信)
ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は16日、中国が過去数週間にわたり、東シナ海で数千隻規模の漁船団を2度にわたって極秘裏に展開させたと報じた。全長200マイル(約320キロ)を超える「浮遊する障壁」を形成したその動きは、驚異的な調整能力を示しており、北京が係争海域において新たな支配手段を確立しつつあることを示唆している。
NYT紙によると、これら2回の行動は外部にほとんど察知されていなかった。しかし、データ分析企業「ingeniSPACE」のCOOである王柏仁(ワン・ボーレン)氏が異常を検知した後、同紙が船舶追跡データを提供する「Starboard Maritime Intelligence」を通じて独自に検証。中国側の動きが驚くべき規模と複雑さを持っていることが明らかになった。韓国の『朝鮮日報』は、この東シナ海における漁船の集結を「海上の長城(Great Wall at Sea)」と形容している。
🤯 "China quietly mobilized thousands of fishing boats twice in recent weeks to form massive floating barriers of at least 200 miles long, showing a new level of coordination that could give Beijing more ways to impose control in contested seas. The two recent operations unfolded…pic.twitter.com/jTvEQmsDJV
— Michael Kovrig (@MichaelKovrig)January 17, 2026
謎の「漁船団」展開 クリスマスの異変 直近の動きは2週間前から始まった。約1,400隻の中国漁船が突如として通常の漁労活動を停止し、東シナ海で大挙して集結したのだ。船舶位置情報(AIS)のデータによると、1月11日時点で、これらの船は200マイル以上にわたる隊列を形成。その密度は極めて高く、付近を航行していた貨物船が迂回したり、ジグザグ航行を余儀なくされたりするほどだった。
第一発見者である王柏仁氏はNYTに対し、「これほど大規模かつユニークな隊形は、過去数百隻の中国船を追跡してきた中でも見たことがない」と、その異様さを語った。 長年中国の海上民兵を監視してきた専門家たちも衝撃を受けている。Starboard社のアナリスト、マーク・ダグラス氏は、「これほど多くの船が協調して動く光景は衝撃的だ」と述べ、「極めて規律ある編隊であり、高度な調整レベルが必要とされる」と指摘した。
2026.1.18 Thousands of Chinese fishing boats didn’t go fishing; they quietly rehearsed for war. Satellite data shows up to 2,000 vessels forming massive, coordinated barriers across the East China Sea, forcing commercial ships to reroute. Experts identify this as the CCP’s…pic.twitter.com/Drj6qThA6X
— NFSC Speaks (@NFSCSpeak)January 18, 2026
台湾有事の「デコイ」と「封鎖」 専門家の警鐘 海事および軍事専門家は、これら一連の動きを「海上民兵の実戦演習」と断定している。 NYT紙は、もし台湾を巡る紛争や危機が発生した場合、中国は数万隻の民間船を動員して海上航路を塞ぎ、敵対勢力の軍事行動や補給作業を混乱に陥れる可能性があると指摘する。
漁船自体のトン数(排水量)は小さく、軍艦による封鎖任務を直接遂行するのは困難だ。しかし、元米情報将校のロニー・ヘンリー氏や、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のトーマス・シュガート研究員は、以下の戦術的脅威を指摘する:
米軍艦艇の機動阻害: 大量の漁船が物理的な障壁となり、米海軍の展開を遅らせる。ミサイル・魚雷のデコイ(囮): 圧倒的な数で標的を飽和させ、高価な兵器を浪費させる。センサーの無力化: 大量の目標物でレーダーやドローンのセンサーを麻痺させる。CSISによる全面封鎖の概念図。赤点は中国海軍の水上戦闘支隊、白点は中国海警局の船、青点は海上民兵、右下の大きな赤丸は中国の空母打撃群を示している。(CSIS報告書より引用)
「漁労ではない」国家主導の演習 アナリストらの分析によれば、これらの漁船の位置は比較的安定的であり、周回や往復といった典型的な漁労パターンを示していない。王氏は、これは中国が他国の船の妨害や監視において高度な訓練を受けており、民間船を徴用・指揮・統制する能力を高めている証拠だと見る。
王氏とダグラス氏は、船舶信号データに偽造の形跡はなく、信頼できるものだと判断している。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)も独自のシステムで同様の異常を観測しており、同所のアジア海事透明性イニシアチブ(AMTI)のグレゴリー・ポーリング所長は、「彼らが漁をしていないのは確実だ。国家主導以外の説明がつかない」と断言する。
2023年12月2日、フィリピンが主権を主張するウィットサン礁付近に現れた、中国海上民兵と疑われる船舶。(共同・AP) ポーリング氏はNYTへのメールで、 「この演習の真の目的は、将来の緊急事態において民間人を大規模に動員する実行力をテストすることにある。例えば、台湾に対する隔離や封鎖、その他の圧力手段の実施を支援するためのものだ」と分析した。
NYTは、現場海域は上海(世界で最も忙しい港の一つ)から続く主要航路に近く、 アメリカ向けの輸出貨物もここを通過すると指摘。中国が他国と衝突した場合、この海域は極めて重要な海上動脈になると警鐘を鳴らした。
米海軍大学 のアンドリュー・エリクソン (Andrew S. Erickson)教授は、船同士の緊密な連携から「海上民兵部隊の動員演習」である可能性が高いと指摘。 中国漁船による今回の大規模な行動は、最近の日中間の外交的緊張を受け 、「反日 」の意思表示や、日中・中台対立のシミュレーションである可能性も示唆されている。
なお、中国外交部、日本の防衛省および海上保安庁は、今回の二度にわたる大規模集結について、現時点でコメントを発表していない。
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