トップ ニュース トランプ氏「戦争は非常に早く終わる」 原油一時119ドル、原油高と選挙圧力に市場注目
トランプ氏「戦争は非常に早く終わる」 原油一時119ドル、原油高と選挙圧力に市場注目 米大統領のドナルド・トランプ氏。(写真/AP通信提供)
米国とイランによる軍事衝突の激化を受け、原油価格が高騰し株式市場が急落する中、ドナルド・トランプ米大統領は3月9日、突如として「米軍はイランの空軍および海軍に甚大な打撃を与えた。この衝突は、当初想定していた『4週間』よりも早く終結するだろう」と宣言した。しかし、ロイター通信は、トランプ氏がいまだ「勝利」の定義を明確にしておらず、戦争の終結が具体的に何を意味するのかは不透明であると鋭く指摘している。
トランプ氏は9日、フロリダ州での記者会見において、世界的な石油供給の5分の1を担うホルムズ海峡をイランが封鎖しようとすれば、米軍の攻撃は大幅に強化されると警告。「我々は彼らを徹底的に叩き、イランやその協力者が二度とその海域を運用できないようにする」と述べた。一方で、米CBSテレビの電話インタビューでは「この戦争は極めて完遂に近い。ほぼ終わった」と語り、米国がホルムズ海峡の管理権を掌握することさえ検討していると付け加えた。
退かないテヘラン当局と最高指導者への降伏要求 ワシントンからの圧力に対し、テヘラン当局に退く気配はない。イラン革命防衛隊の報道官は、米国とイスラエルの攻撃が続くのであれば、この地域から「1リットルの石油」も出すことは許さないと強硬に反論。「戦争をいつ終わらせるかを決めるのは我々だ」と強調した。また、最高指導者に就任したばかりのモジュタバ・ハメネイ師(Mojtaba Khamenei)について、トランプ氏は「受け入れられない」と表明し、イランに対し継続して「無条件降伏」を求めている。
同日の終値は前日比約7%高となり、2022年以来の記録的な水準となった。原油価格は一時119ドルまで高騰した後に反落したが、2月28日に米イスラエルが共同でイランを空爆して以降、国際原油価格は大幅に上昇している(2月27日時点のWTI原油は1バレル66.96ドル、ブレント原油は約70.79〜72.48ドル)。
「ガソリン価格」というトランプ氏の弱点 ロイター通信は、米国において油価は極めて政治的に敏感な問題であり、有権者の最大の関心事も民生と物価であると指摘する。ロイターとイプソス(Reuters/Ipsos)による最新の世論調査では、アメリカ人の67%が今後数カ月でガソリン価格が上昇すると予想しており、この戦争を支持する割合はわずか29%にとどまっている。
パイオニア・インベストメンツ(Pioneer Investments)の戦略家パレシュ・ウパディヤヤ(Paresh Upadhyaya)氏は、ブルームバーグの取材に対し、トランプ氏の急な方針転換の理由を次のように断言した。「トランプ大統領の弱点が見つかったのは明らかだ。中間選挙を控え、ガソリン価格の暴騰による巨大な政治的反発に直面しているのだ」
喫緊の課題を解決するため、トランプ氏はロシアのプーチン大統領と電話会談を行った後、供給不足を緩和するために「特定の国」に対して石油関連の制裁を免除する方針を示した。複数の情報筋によれば、これはウクライナ侵攻に伴うロシアへの制裁をさらに緩和することを意味する可能性があり、モスクワへの処罰を複雑化させる懸念があるという。また、ワシントンの選択肢には、戦略石油備蓄の放出や米国内の輸出制限も含まれているとロイターは伝えている。
インフレの脅威が再燃 世界の中央銀行による利下げ観測は後退 原油価格の高騰は、世界の債券市場とインフレ期待に直結している。ブルームバーグの報道によると、国際通貨基金(IMF)は、エネルギーコストが10%上昇し1年間継続した場合、世界のインフレ率は約0.4ポイント押し上げられ、世界経済の成長率は最大0.2ポイント低下すると試算している。また、ブルームバーグ・インテリジェンスは、原油価格が1バレル133ドルに達すると、一般的に「需要破壊」が引き起こされると警告した。
ティー・ロウ・プライスのマルチアセット部門資本市場アナリスト、ティム・マレー(Tim Murray)氏は、「石油は世界のインフレにおいて、最も重要な単一の入力変数(インプット)と言える」と指摘。さらに、多くのアジア経済圏は主要な石油の純輸入国であるため、現在のリスクオフ環境下では、同地域にとって相対的な逆風になると付け加えた。
経済成長の停滞とインフレが同時に進行する「スタグフレーション」への懸念から、主要中央銀行による早期利下げを期待していた投資家の目論見は完全に崩れ去った。ブルームバーグによれば、市場のトレーダーは現在、米連邦準備制度理事会(FRB)による次回の0.25%(25ベーシスポイント)の利下げは、早ければ2026年9月になると予測している。2月28日の米国によるイラン攻撃以前は、市場は7月までの利下げを予想していた。債券オプションのデータによれば、一部のトレーダーはFRBが年内に利下げを一切行わない可能性にさえ賭けている。
市場データによれば、インフレ期待を測る指標である米国の消費者物価指数(CPI)1年物インフレ・スワップ金利は、昨年10月以来初めて一時3%を突破した後、2.76%まで回帰した。一方で、米国では2月に雇用者数が予想外に減少し、失業率が上昇した。物価圧力が強まる中で、これらのデータは労働市場における亀裂を浮き彫りにしている。
市場に広がる安堵感 米債利回りの低下とドル安 市場が悲観的なムードに包まれる中、トランプ氏の「戦争は終結間近」との発言は、まさに「恵みの雨」となった。ブルームバーグの報道によれば、トランプ氏が事態緩和のシグナルを発したことで、原油価格は9日午後に1バレル90ドルを下回る水準まで反落した。
これを受け債券市場も即座に反応。31兆ドル規模の米国債市場はニューヨーク市場終盤に反発し、一時4.21%まで急騰していた米10年債利回りは、前日比4ベーシスポイント(bp)低い約4.09%で取引を終えた。前日までの世界的な債券安(利回りは上昇)は凄まじく、英2年債利回りは一時30bp急騰した後に3.98%(11bp上昇)で引け、独2年債利回りも一時9bp上昇の2.40%を付けた後、2.32%まで低下した。
トランプ氏のスタンス転換について、ING米州調査部責任者のパドレイク・ガーベイ氏はブルームバーグに対し、「原油高、ボラティリティの増大、利回りの上昇、そして悪化の一途をたどるリスクオフ心理を通じて、市場はすでに(政府に対し)意思表示をしていた。トランプ政権にとって、泥沼化する長期戦よりも短期決戦で幕を引く方が、はるかに得策といえる」と分析している。
一方、コーペイ(Corpay)のチーフ・マーケット・ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「市場にとっての大きな疑問は、トランプ氏が『体制転換(レジーム・チェンジ)』を掲げる強硬姿勢から後退したように見えることが、戦争目的の真の転換を反映しているのか、それとも単に低強度の戦闘を継続しながら早期に勝利宣言を試みているだけなのか、という点にある」と指摘した。
また、リスクオフ心理の減退に伴い、主要な安全資産として買われてきたドルも下落に転じた。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は9日に0.1%低下した。2月28日の衝突勃発以来、米国が世界最大の産油国であるという背景もあり、ドルは強く支持されてきた。BMOアセット・マネジメントの専務理事ビパン・ライ氏は「トランプ氏の発言により、エネルギー価格におけるテールリスクの一部は取り除かれたが、すべてではない」と言及。JPモルガン・チェースの外為戦略家パット・ロック氏も、トランプ氏の発言は大きな圧力にさらされていた市場にとって「歓迎すべき安堵」としつつ、ドルの下落が持続するかは依然として不透明であるとの見解を示した。
金相場は高値圏で足踏み 利下げ期待の後退が重石に こうした動乱の中で、金相場は比較的落ち着いた動きを見せている。ブルームバーグによれば、トランプ氏による戦争終結の示唆を受けてドルが反落したことで、前日に0.6%下落した現物金価格は下げ止まり、10日早朝時点では1オンスあたり5,140ドル近辺で推移した。
金相場は直近の変動で上昇の勢いが鈍化しているものの、年初来では2割近い上昇を記録している。トランプ氏によるグローバル貿易や地縁政治の攪乱、そして連邦準備制度理事会(FRB)の独立性に対する脅威は、安全資産としての金を大きく支えてきた。
しかし、TDセキュリティーズ(TD Securities) のシニア・コモディティ・ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は、市場から利下げ期待が排除されるにつれ、金の保有は困難に直面していると指摘。実物市場では安値拾いの動きも見られるが、「出来高は限られており、規模も標準的な水準にとどまっている」と述べた。
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編集:柄澤南
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