トップ ニュース イランが周辺国へ軍事報復、ドバイ・ドーハで交通網寸断 専門家が指摘する「真の戦略目標」と米国が抱えるジレンマ
イランが周辺国へ軍事報復、ドバイ・ドーハで交通網寸断 専門家が指摘する「真の戦略目標」と米国が抱えるジレンマ 2026年3月1日、イランによる空爆を受けたUAEシャルジャ市の工業地帯(写真/AP通信提供)
米国とイスラエルの連合軍は2月28日からイランへの空爆を開始した。イランの軍事・政治指導者を殺害し、軍事施設を打撃したが、これに対しイランは米軍だけでなく中東諸国にも「報復」を行っている。これによりドバイ、アブダビ、ドーハなどで交通網が遮断される事態となった。これについて、イラン系米国人の中東問題専門家は、イランの行動が中東問題における米国のジレンマを浮き彫りにしたと指摘している。
イランの戦略目標とは何か 米シンクタンク「アジア・ソサエティ(Asia Society)」は米東部時間3月3日、イラン問題の著名な専門家である米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)のヴァリ・ナスル教授と、同じくイラン系で米投資会社「レッドバード・キャピタル(RedBird Capital Partners)」のパートナー、ハミド・ビグラリ氏を招き、オンライン対談を開催した。
ナスル氏は次のように指摘した。イラン政府にとって、中東の湾岸諸国は美しい都市や大使館を持ち、米国の同盟国ではあるが、最終的にイランの側に立つことはない。また、湾岸諸国の「中立」や「友好」はイランにとって何の利益ももたらさないとし、「平和や和解の時には経済的利益をもたらすかもしれないが、生死に関わる局面では何の役にも立たない」と述べた。
ナスル氏はさらに説明する。イラン指導部は、オマーン(あるいはある程度パキスタン)以外の国と外交関係を築くつもりはなく、これは「個人的な恨み」によるものではない。つまり、イランがカタールの液化天然ガス(LNG)受入基地を攻撃対象に選んだ際、その目的は欧州を弱体化させ、ガス価格を高騰させることにあり、「カタール人とは無関係だ」としている。
さらにナスル氏は、イラン側にはある種の雰囲気を醸成する狙いもあると指摘する。それは、戦争が起きている最中に、湾岸諸国だけが何事もなかったかのようにグローバルビジネスを展開し、エネルギー価格を安定させることなど許されない、というメッセージだ。
米シンクタンク「アジア・ソサエティ」が3月3日に開催した対談の様子。イラン問題の専門家であるジョンズ・ホプキンス大学のヴァリ・ナスル教授(左)と、実業家のハミド・ビグラリ氏(右)。(画像/ライブ配信より抜粋)
アラブ世界は戦略の再考を迫られるか ナスル氏は、イランの軍事戦略によって、米国が実際には湾岸諸国を守ることができず、またそれらを保護することが米国の最優先事項ではないという事実が露呈したと述べる。そのため、ある意味で中東地域の米軍基地は、今や地元諸国にとってのお荷物になっているとし、「ひとたび開戦すれば、これらの基地は湾岸地域を守るどころか、かえって湾岸地域を攻撃の対象にしてしまう」と分析した。
さらにナスル氏は、この戦争で最も驚くべき点は、イランによるアラブ諸国への攻撃であり、これはドナルド・トランプ米大統領や米国のエリート層にとっても予想外であったとの見方を示した。しかし結局のところ、イランの唯一の目標は、事態をより悪化させ、混乱させ、イランが得意とする領域、すなわちビジネスと石油価格の掌握に持ち込むことにあるという。
ナスル氏は1960年、旧イラン王国の首都テヘラン生まれ。その後米国へ移住し、中東問題の著名な専門家となった。2009年から2011年にかけては、リチャード・ホルブルック米アフガニスタン・パキスタン担当特別代表の上級顧問を務めたほか、イランの歴史や中東問題に関する著書も多数ある。
米国のマルコ・ルビオ国務長官は3月3日、ワシントンの連邦議会議事堂地下にある機密室で、議員向けのイラン情勢に関するブリーフィングに参加した。(写真/AP通信提供)
米国の軍事手段はエスカレートするしかないのか 対談においてビグラリ氏は、イランの報復が経済的に深刻な破壊をもたらす場合、湾岸地域の海上輸送を保護することが最重要課題になると述べた。同氏は、米政府が対応目標を拡大する必要に迫られ、その結果、現地情勢がエスカレートする可能性が高いと見ている。トランプ大統領について言えば、予測不可能性がその個人的スタイルのひとつであるが、「イラン人も同様の駆け引きをしようとしている」と指摘した。
ビグラリ氏はイラン生まれで、後に米国へ移住。プリンストン大学で天体物理学の博士号を取得している。レッドバード・キャピタル入社以前は、2000年から2013年までシティグループの上級管理職を務め、退職時にはシティグループ副会長兼シティ・新興国市場グローバル統括の職にあった。シティグループ入社前はマッキンゼーのパートナーも務めた経歴を持つ。
今後の紛争が「制御不能」に陥るかという問いに対し、ナスル氏は状況がさらに悪化すると予測した。「主な理由は、イランが非常に危険なゲーム、つまり火遊びをしているからだ」と述べた。イランは相手のミスを期待するだけでなく、かつてロシアがナポレオンに対抗した戦略を模倣する可能性があるという。すなわち、米国とイスラエルを「先に攻め込ませ」、相手に全力を出させて消耗させた上で、最終的に取引を持ちかけるという戦略だ。
そのような状況下において、ナスル氏は「ボール」は基本的にトランプ氏の足元にあると述べた。トランプ氏がいつ決断を下すか、あるいは軍事行動のさらなる強化に踏み切るかどうかが極めて重要になる。ナスル氏はベネズエラの状況と比較し、「今回は彼(トランプ氏)にとって、より困難なものになるだろう。なぜなら、これはより大規模な戦争だからだ」との見解を示した。
イスラエル当局の統計によると、2月28日から3月3日にかけ、イランはミサイルや無人機(ドローン)を用いてイスラエルの民間施設を攻撃した。
トランプ氏は経済的影響を考慮していない? ナスル氏は、トランプ大統領の先日の年次「一般教書演説」を分析し、1時間48分に及ぶ演説の中でイランについて語ったのはわずか2、3分未満だったと指摘。「これはまるで、彼が問題を過小評価しようとしているかのようだ。そして、これこそが彼が真にコントロールを失っている部分であり、戦場での制御不能よりも深刻だ」と解説した。
言い換えれば、「米国を再び偉大に(MAGA)」派の支持層の中から、「これは我々が望んだ結果ではない」という声が多く上がっているとナスル氏は分析する。今後、原油価格の上昇やインフレ率の急騰が始まって初めて、トランプ氏はイラン当局の行動そのものではなく、国内経済への影響を理由に戦争終結を決意する可能性がある。イラン側はその点を熟知しているが、「トランプ氏はこれらの問題を真剣に考慮していない。また、この戦争が長引くとも予想していなかった」と指摘している。
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