トップ ニュース 【舞台裏】防衛特別予算案、米国が台湾最大野党の国民党に早期可決求める 「3月24日」提示との情報も
【舞台裏】防衛特別予算案、米国が台湾最大野党の国民党に早期可決求める 「3月24日」提示との情報も 地政学上の重要な位置にある台湾の防衛特別予算案の可決をを促すため、米国側は早くから野党への説得工作を進めている。写真は米国在台協会(AIT)。(写真/柯承恵撮影)
台湾の与野党は2025年末から防衛特別予算案を巡り激しい攻防を繰り広げてきた。数カ月にわたる対立の末、立法院(国会)は3月6日、与野党3党の予算案を委員会審議に付託した。しかし、予算規模を巡る各党の主張には依然として大きな開きがある。行政院(内閣)案が武器調達や軍事施設、防衛投資に充てる総額1兆2500億台湾ドル(約6.2兆円)であるのに対し、第2野党の台湾民衆党は約4000億台湾ドル(約2兆円) への大幅縮小を主張。最大野党の中国国民党は、財政負担の急拡大を避けるため「3800億台湾ドル +N」規模とし、複数年での分割計上を求めている。与野党案の間には1兆台湾ドル(約5兆円) 近い差があり、台湾にとって近年最大規模の防衛投資計画は、立法院の審議前から激しい政治的駆け引きの場となっている。
地政学的な要因から、米国側の関心は高まり続けている。関係者によれば、米国政府はこの数カ月、複数のルートを通じて台湾政界にメッセージを送り、行政院版の1兆2500億台湾ドル(約6.2兆円) 規模が大幅な削減なく可決されることを強く望んでいる。ワシントンによる民衆党の黄国昌(こう・こくしょう)主席の訪米手配や、AIT(米国在台協会)による立法院への直接的な接触など、米側の動きはこれまでにない異例のものとなっている。
台湾の防衛予算拡大を後押しするため、米国側 は前例のない働きかけを行っているとみられる。写真は高機動ロケット砲システム「ハイマース(HIMARS)」による射撃 。(写真/劉偉宏撮影)
民衆党説得へ、黄国昌氏の訪米を手配 米国の積極的な働きかけは、黄氏の訪米セッティングに遡る。黄氏は台湾での米側との接触において、民衆党は防衛投資の増加そのものに反対しているわけではなく、重要な軍事支出については理性的な議論を行う用意があると伝えた。一方で、重大な政治的判断を下す前に、米国の政策や戦略的背景を深く理解したいとの希望を示した。
こうした背景から、米国はNSC(国家安全保障会議)、国務省、防衛当局高官との一連の面会を調整し、黄氏側の要請に応じてUSTR(米通商代表部)職員との面会もセットした。米側にとっての最大の期待は、国内の政争によって、黄氏および民衆党が国家安全保障に必要な判断を誤らないことにある。
米国の政府関係者は 、第一列島線の各国が防衛能力の強化を急ぐ中、台湾が内部の政治紛争によって軍事投資を停滞させれば深刻な結果を招くと指摘する。米国が黄氏を厚遇し、過密な日程を組んだ目的は、黄氏が同問題においてより包括的な判断を下せるよう支援することに他ならない。米側は、黄氏が帰国後に民衆党を率い、安全保障や外交において民主主義陣営の盟友と同じ立場に立つことを期待している。
台北での外交攻勢、AITが民衆党案に「不十分」と指摘 会談中、米側は行政院版の1兆2500億台湾ドル(約6.2兆円) 予算案が順調に通過することを望むと明言。民衆党が提示した4000億台湾ドル(約2兆円) 案は規模が小さすぎ、地域の安全保障環境の変化に対応するには不十分であるとの認識を示した。これに対し、民衆党側は防衛投資には反対していないが、手続き上まずは委員会での審査を行い、その後逐条審議で詳細を議論したいと回答した。
民衆党の黄国昌主席 (写真)が訪米後、軍事調達案に対して示した態度は米国側の期待に沿うものとはならなかった。(資料写真/柯承恵撮影)
AITが国民党幹部と面会 単刀直入に「先延ばしは許されない」と要求 一方で、国民党の鄭麗文(てい・れいぶん)主席が行政院版の軍購特別条例案に反対する中、AITは同党に対しても積極的に働きかけを行っている。国民党関係者によれば、旧正月前に米側と国民党高層との間で、より直接的な会談が行われたという。当時、AITの高官が自ら国民党の党務要人を訪ね、国防特別条例の立法進捗について協議したが、その際の雰囲気は、過去に米側が見せてきた「硬軟織り交ぜた」外交姿勢とは明らかに異なっていた。AIT官員はほぼ単刀直入に、1兆2500億台湾ドル(約6.2兆円) の軍購特別条例案を速やかに立法院での審議に乗せ、遅延することなく3月24日までに可決するよう国民党に要求したとされる。
国民党側は、現在の膠着状態の要因として、与党が軍人の待遇改善(昇給予算など)を全体計画に盛り込んでいないことなどを説明しようとした。しかし、AIT官員はその発言を遮り、「それらはすべてあなた方の問題であり、我々には関係のないことだ」と言い放ったという。米側はさらに、国民党が関連法案の立法手続きを完了させなければ、その後に政治的報いを招くことになると強調し、強い圧力をかけた。
国民党の鄭麗文主席 (写真)が行政院版の特別条例に反対の立場を取る中、米国は旧正月前に国民党幹部と面会した。(写真/ 顔麟宇撮影)
米側が国民党立委と会合、平行線で終わる協議に米側は「落胆の首振り」 国際情勢の急変に伴い、防衛特別予算案の成立が焦眉の急となる中、AITは審議を加速させるべく野党への直接的な働きかけを強化している。旧正月明け、AITは立法院に次々と担当者を派遣し野党議員との接触を図った。派遣されたのは高官級であり、米国から直接来台した者も少なくなかった。軍出身の国民党・陳永康(ちん・えいこう)立委のほか、3月5日にはAITと国民党立委による重要な会合が行われた。出席者には、国民党党団書記長の林沛祥(りん・はいしょう)氏、前書記長の羅智強(ら・ちきょう)氏、外交国防委員会の牛煦庭(ぎゅう・くいてい)氏や徐巧芯(じょ・こうしん)氏らが名を連ねた。
米側の期待に対し、国民党側は従来の立場を堅持した。出席者によれば、野党は武器調達や防衛投資そのものには反対していないが、1兆2500億台湾ドル(約6.2兆円) という規模は過大であり、当時は党内でも3500億台湾ドル(約1.7兆円) 案を支持する声が強かったという。また、与党に主導権を握られることへの抵抗感も示された。会合では十分な意見交換がなされたものの、最終的な合意には至らなかった。会議終了時、米側関係者が無念そうに首を振る姿が見られ、予算規模に対する双方の認識に依然として巨大な落差があることが浮き彫りとなった。
羅智強氏はAITとの会合に出席して武器調達案について議論した国民党立法委員の一人。(資料写真/陳品佑撮影)
柯文哲氏は「妨害しない」と表明、国民党は米国を無視し続けられるか 関係筋によれば、AITとの会合後、国民党党団は最終的に約3500億台湾ドル(約1.7兆円) をベースとする方針を固めつつあった。しかし一部の議員から、米国との安保協力計画には政府間調達(FMS)の枠組み外のものも含まれるとの指摘があった。例えば、米議会が可決した「台湾安全保障協力イニシアチブ」に関連する10億ドルの資金提供や、米台の沿岸警備隊(海巡)による訓練機会の拡大計画などは、FMSに厳格に限定すると予算化が難しくなる。そのため、弾力的な予算枠を確保すべきとの提案がなされ、同党の検討案は従来の約3500億台湾ドル(約1.7兆円) から約3800億台湾ドル(約1.8兆円) へと微増修正された。
黄国昌氏の訪米セッティングからAITによる度重なる立法院への働きかけまで、防衛投資拡大を促す米国の外交攻勢は、過去の同種の案件をはるかに凌ぐ規模となっている。ワシントンの態度が明確になる中、民衆党はすでに柔軟な姿勢を見せており、創設者の柯文哲(か・ぶんてつ)氏は「道理が通れば支持する。妨害はしない」と明言した。対して国民党は依然として独自の立場を崩していない。「後ろ盾」である米国の要求を、国民党はこのまま無視し続けられるのか。その結末に注目が集まっている。
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