3兆円の巨額投資、日本が水素エネルギーに「国運」を賭ける理由

2026-01-30 21:18
川崎重工業は2022年、世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」を用い、オーストラリアから日本へ液化水素を海上輸送した。これにより、マイナス253度に冷却・圧縮された水素の長距離海上輸送が可能であることが実証された。(資料写真/hydrogenenergysupplychain.comより)
川崎重工業は2022年、世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」を用い、オーストラリアから日本へ液化水素を海上輸送した。これにより、マイナス253度に冷却・圧縮された水素の長距離海上輸送が可能であることが実証された。(資料写真/hydrogenenergysupplychain.comより)

2021年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)以降、世界各国が「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」へと舵を切る中、日本は数年にわたる技術実証と方針策定を経て、2025年、ついにエネルギー戦略の重要な転換点を迎えた。

経済産業省が発表した最新の『エネルギー白書2025』において、欧米によるグリーンエネルギー分野での攻勢や、EV(電気自動車)・電池サプライチェーンにおける中国の独占的地位に対抗すべく、「水素社会」の実装ロードマップが正式に確立された。日本政府は3兆円規模の支援を投じ、2030年までに日本主導による国際的な水素・アンモニア供給網(サプライチェーン)の構築を目指している。

日本における水素戦略の地位はどう変わったのか

かつて水素は「夢のエネルギー」と期待されながらも、高コストとサプライチェーンの欠如が普及を阻む壁となっていた。しかし、2022年のロシアによるウクライナ侵攻が招いた世界的なエネルギー危機、そして2050年カーボンニュートラルへのタイムリミットが迫る中、その戦略的地位は劇的に変化した。最新のエネルギー白書では、水素、アンモニア、合成燃料(e-fuel)、および合成メタン(e-methane)が、将来の日本のエネルギーにおける確固たる「選択肢の一つ」として定義されている。

2021年11月,聯合國氣候變遷大會(COP26),蘇格蘭格拉斯哥(AP)
2021年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、世界各国が相次いで2050年のカーボンニュートラル達成を宣言した。(資料写真、AP通信)

資料によれば、2024年は日本の水素発展史における分水嶺となった。国会で成立した「低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素社会推進法)」が同年10月に施行。これにより、水素政策は単なる短期的な補助金事業から、法律による長期的保障を得た国家戦略へと昇華したのである。

白書は、世界中で「資源と適地の争奪戦」が起きていると指摘。資源に乏しい日本は、法整備と財政支援を通じて日本企業の海外における権益確保(「囲い込み」)を後押しし、将来の水素ソースを確保しなければならないと強調している。

「素材」と「輸送」で欧米への劣勢を覆す

今回の白書では、水素サプライチェーン構築への強い意志が示された。特に水電解装置(エレクトロライザー)の分野において、装置の大型化・規模拡大で先行する欧米に対し、日本は異なるアプローチで勝負を挑む。

白書は、日本が電解効率や寿命を左右する「膜」や「触媒」といった核心素材(マテリアル)において技術的優位性を保持しており、これらが多くの海外企業に採用されている点に着目。政府は「グリーンイノベーション基金」を活用し、旭化成やカナデビア(旧日立造船)などの企業を支援。アルカリ水電解装置の大型化・モジュール化を進め、2030年には装置コストを2021年比で6分の1まで低減することを目指す。 (関連記事: 東京都、「水素がうごかす未来シティ」開催へ ゆうちゃみと学ぶ水素エネルギー、高輪ゲートウェイシティで無料体験 関連記事をもっと読む

旭化成(Asahi Kasei)。(取自旭化成官網)
旭化成などの企業は、アルカリ水電解装置の「大型化とモジュール化」に取り組んでいる。(写真:旭化成公式サイトより)

また、水素普及の最大のボトルネックである輸送面においても、日本は先行している。川崎重工業は2022年、世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」により、豪州から日本への海上輸送を完遂。水素をマイナス253度に冷却・圧縮して長距離輸送する技術を実証した。

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