元陸自・五ノ井里奈さん、国と和解成立「自らの足で歩むスタート」 性被害訴訟が終結、新団体設立も発表

元陸自隊員の五ノ井里奈さんが性被害訴訟で国と和解を成立させ、被害者支援の新団体設立と共に約4年半の闘いに区切りをつけた。(写真/FCCJ提供)
元陸自隊員の五ノ井里奈さんが性被害訴訟で国と和解を成立させ、被害者支援の新団体設立と共に約4年半の闘いに区切りをつけた。(写真/FCCJ提供)

元陸上自衛官の五ノ井里奈さんが2026年1月26日午後、東京・丸の内の日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を開き、陸上自衛隊在籍中に受けた性被害をめぐり、国と元隊員に対して損害賠償を求めていた民事訴訟で、国および元隊員との間で和解が成立したと発表した。2022年8月に実名で被害を告発してから約4年半、刑事裁判での有罪判決を経て、民事訴訟も終結を迎え、一連の法廷闘争は事実上の決着を見た。

元陸上自衛官・五ノ井里奈さん、性被害訴訟で国と和解成立 謝罪なき決着も「未来へのスタート」 

五ノ井さんの代理人を務める太田愛子弁護士によると、和解の内容は、国が国家賠償法第1条1号に基づく損害賠償金として110万円、安全配慮義務違反に基づく損害賠償金として50万円、合計160万円を五ノ井さんに支払うというものである。本訴訟は当初、国と性暴力に関与した元隊員5名を被告として提起されたが、元隊員1名とは2023年10月に、別の元隊員3名とは2024年7月にすでに和解が成立しており、今回は残る1名の元1等陸曹との間で和解に至った。

注目されたのは、元1等陸曹との間で金銭賠償や謝罪に関する条項が盛り込まれなかった点である。太田弁護士の説明によれば、裁判所からの和解案打診に対し、原告側は被告本人による謝罪文言の挿入を求めた。しかし、元1等陸曹側から提示された内容は「自らの過ちを認めるものではなく、部下が行った行為により苦痛を与えたことへの謝罪」という趣旨にとどまった。

支援団体「ミライセーフティジャパン」設立

五ノ井さんは「部下の行為ではなく、本人が行った行為に向き合い誠実に謝ってほしかった」とし、責任を回避するような形式的な謝罪は無意味であると判断、謝罪条項を含まない形での和解を決断した。国が責任を認め賠償金を支払うことで、一定の権利回復が図られたと判断したことも背景にある。

会見で五ノ井さんは、被害を訴えてからの4年半を「振り返ると長くて重く、それでも立ち止まることができない時間だった」と述懐した。「声を上げることには大きな勇気が要り、その勇気が必ずしも守られるとは限らない現実もあった」と苦悩を滲ませつつも、「声を上げた先で『あなたのおかげで救われた』というたくさんの声に出会えた。声を上げたことを後悔していない」と力強く語った。今回の和解については「これで終わりではなく、ようやく自分の人生を自分の足で歩き出すためのスタート」と位置づけた。

また、五ノ井さんは新たな活動として、2026年1月16日に一般社団法人「ミライセーフティジャパン」を設立したことを発表した。同法人は「小さな声を社会につなげる」を理念に掲げ、ハラスメント被害の相談窓口の設置や、学校・職場での防止教育、被害者が孤立しないための啓発活動を行う。五ノ井さんは自身の経験を踏まえ、「小さな違和感や苦しみが一人の中で消えてしまわない社会であってほしい」と設立の動機を説明した。

質疑応答では、自衛隊という組織への思いを問われ、「東日本大震災で助けてくれた女性自衛官に憧れて入隊した場所であり、今でも感謝している。あの時間は間違いなく私の青春だった」と変わらぬ愛着を口にした。「もし18、19歳の自分が目の前にいたら、もう一度入隊を勧めるか」との問いには「勧めると思います」と即答。その上で、「問題が起きた時に隠蔽せず、速やかに認め謝罪し、声を上げた人が不利益を被らずに済む環境になれば、私も辞めることはなかった」と述べ、組織の自浄作用と環境改善の重要性を訴えた。

編集:柄澤南

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