米台貿易協定の裏に潜む不安 「米酒騒動」の悪夢再び?台湾社会が恐れる「説明なき関税撤廃」

2026-02-15 16:32
台湾は2000年に世界貿易機関(WTO)への加盟を申請した際、米酒価格の急騰をきっかけに「米酒騒動」が発生した。(写真/洪煜勛撮影)
台湾は2000年に世界貿易機関(WTO)への加盟を申請した際、米酒価格の急騰をきっかけに「米酒騒動」が発生した。(写真/洪煜勛撮影)

台湾と米国による関税交渉は最終局面を迎えている。両国が協定に署名すれば、新たな関税措置が正式に確定する見通しだ。

協定締結を前に、対外貿易交渉を担当する行政院経貿談判弁公室(OTN)、国境における関税管理を所管する財政部、国内産業への影響を所管する経済部は、一部産業団体との意見交換を行ってきた。しかし、関税が調整された後に各産業がどのように対応していくのか、また段階的な調整にどの程度の期間を設けるのかについては、現時点で明確な説明は示されていない。

産業界からは、これまで国内で実施されてきた関税調整にはいずれも明確な引き下げスケジュールが示されてきたのに対し、今回の台米貿易交渉ではそうした具体的な工程表が見当たらないとして、「どのように産業界に説明するのか」との疑問が上がっている。さらに、2000年に発生したいわゆる「米酒騒動」の記憶はいまなお鮮明だとして、同様の混乱が再び生じる事態は避けるべきだとの声も出ている。

前例は「米酒騒動」 国内需要を見誤った関税設定

台湾が2000年に世界貿易機関(WTO)への加盟を申請した際、欧州連合(EU)や米国などと幅広い関税協定を締結した。その対象には生活必需品とされる米酒も含まれていたが、国内での関税調整が拙速に進められた結果、「米酒騒動」と呼ばれる混乱が発生した。

当時、台湾はWTO加盟に向けて国内制度の見直しを迫られ、とりわけ影響が大きかったのが、約50年にわたり続いてきた「たばこ・酒専売制度」の廃止だった。交渉の場では、米国やEUなど酒類輸出国が、台湾が国産のたばこや酒を保護し、輸入洋酒に高関税を課していることに長年不満を示していた。外国側の代表は「内国民待遇の原則」を掲げ、すべての酒類を同等に扱い、国内産業保護を理由とする差別的な関税を撤廃するよう求めた。

2025年3月19日,美國喬治亞州的特斯拉門市。(美聯社)
台米関税交渉を受け、米国車がより安く購入できるのではないかとの期待が台湾の消費者の間で広がっている。写真は米電気自動車メーカー、テスラ。(写真/AP通信提供)

しかし、交渉過程で最大の争点となったのは、台湾の多くの家庭の台所に欠かせない「紅標米酒」だった。台湾側の交渉団は、米酒はウォッカやウイスキーのような「飲用の蒸留酒」ではなく、シャオジウジー(酒鶏)や姜母鴨(ショウガ入り鴨鍋)、産後のいわゆる「坐月子(産後の伝統的な休養方法)」の期間の食事などに用いられる「料理酒」だと強く訴えた。

この文化的な特殊性を伝えるため、台湾側は米国側交渉担当者の訪台に合わせて会食の場を設け、米酒を使った伝統料理を並べるなど、嗅覚や味覚を通じて米酒が台湾の食文化に不可欠な基盤であることを理解してもらおうとした。

ただ、こうした「酒鶏外交」は想定した効果を上げなかった。外国側は、一定以上のアルコール度数を持ち、蒸留工程を経た液体である以上、国際分類上は「蒸留酒」に区分されるべきだと主張した。WTOの規範では、蒸留酒は価格に対する割合で課税する「従価税」ではなく、数量に応じて課税する「従量税」を採用しなければならないとされる。 (関連記事: トランプ政権、TSMCへの「半導体関税」免除に条件か 生産能力の4割米国移転も?施俊吉氏が指摘する「割当枠」の衝撃 関連記事をもっと読む

当時の交渉結果として、台湾は加盟後、米酒の税率を段階的に引き上げ、最終的に1リットル当たり約200台湾元の税負担を課すことに同意せざるを得なかった。この決定は、米酒の価格がそれまでの1本20台湾元から、一般の人々が負担しにくい水準へ急騰することを事実上示唆するものだった。

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