トップ ニュース 頼清徳氏はなぜ「高市早苗氏」になれないのか 日台の決定的差「成熟した民主主義」と不在者投票
頼清徳氏はなぜ「高市早苗氏」になれないのか 日台の決定的差「成熟した民主主義」と不在者投票 日本の高市早苗首相率いる自民党が衆院選で圧勝したことは、同様に「抗中」を掲げる頼清徳政権にとって大きな鼓舞となった。写真は11日、「国家の安全は待ったなし!国防調達特別条例を支持」と題する記者会見に出席した台湾総統・頼清徳氏(写真/柯承恵撮影)。
「台湾有事は日本有事」という日中間の緊張が高まる中、日本の高市早苗首相が断行した衆議院解散・総選挙は、与党が大勝する結果となった。与党連合は一挙に憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を獲得した。今回の衆院選には「対中強硬(抗中)」の空気が漂っていたため、これまで「抗中カード」を切ってきた台湾の頼清徳政権は、高市氏の大勝を自身の「代替的勝利」と捉え、「高市氏の圧勝で頼清徳氏の勢いも増す」といった姿勢を見せている。しかし、こうした雰囲気によって頼氏が高市氏になれるわけではない。その違いは「成熟した民主主義」という言葉にある。
台湾人は日本人に劣るのか? 不在者投票制度すら認められない現状 今回の日本の総選挙は、投票日がちょうど極端な悪天候と重なった。広い地域で降雪が予想され、投票率の低下を懸念する声が広がっていた。しかし実際には、期日前投票を利用する有権者が過去最多を記録した。衆議院小選挙区における期日前投票者数は2,701万7,098人に達し、有権者総数(1月26日時点)の26.10%に相当する。言い換えれば、4分の1以上の有権者が投票日当日ではなく、事前に投票を済ませたことになる。高市早苗氏も期日前投票を申請しており、国家指導者として日程や時間を調整しやすくするためとみられる。日本では期日前投票のほか、不在者投票制度も整備されており、国内外で実施されている。台湾在住の日本国民は郵便投票に加え、日本台湾交流協会の台北および高雄事務所において、1月28日から現地での投票も可能となっている。
高市氏の大勝を称賛する一方で、台湾の有権者からは「台湾人は日本人に及ばない」との嘆きも聞かれる。前会期において、民衆党および国民党は不在者投票制度に関する選挙罷免法改正案を提出したが、与党は選挙実務上の対応が困難であることを理由に繰り返し阻止してきた。野党側の提案は中国大陸を含まない国内移転投票に限るものだったにもかかわらず、与党陣営は制度を導入すれば中国の介入や買収の助長など多くの弊害が生じると警告している。多くの民主国家で長年実施されてきた不在者投票制度が、台湾ではなぜか問題の根源とみなされているのである。与党が反対の理由として挙げる論拠には、台湾市民の資質を信頼せず、完全な民主制度を享受するに値しないとする発想が透けて見える。日本の選挙を間近で観察すると、そこには「主権は国民にあり、国家は国民のために存在する」という理念を体現した制度があると強く感じられる。それに対し、台湾の選挙は表面上は大規模な動員戦の様相を呈しているものの、実際には持ち家のある人々に有利で、外地で働く人々に不利となり得る潜在的に不公平な制度であると言わざるを得ない。
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議院内閣制なら国会解散は当然――頼政権は「体制外の手法」に踏み込んだのか もちろん、最終的には野党・国民党内にも異論があったため、この改正案は委員会付託の段階にとどまり、立法院の改選に伴って事実上立ち消えとなった。しかし、仮に立法院で野党が本当に採決を通したとしても、民進党の激しい反対ぶりを見れば、この法律が実施される可能性は低く、不在者投票が実現することもなかっただろう。
実際、行政院長・卓栄泰氏はこれまで、立法院で可決された年金改革修正案に対し、副署を行わないことで事実上執行を見送った。さらに財政収支配分法の改正案に続き、先週も立法院が可決した眷村改建条例への副署を拒否した。また、立法院が可決した軍人給与引き上げ案を予算に計上しないなどの対応も見られる。頼政権は政治的膠着状態を打開する決意や能力を欠いているだけでなく、違法・違憲とも受け取られかねない姿勢で事態に対処することで、膠着を一層深刻な政治対立へと悪化させている。
高市早苗氏が就任から国会解散までに要した期間は、日本史上でも最短クラスと言える。しかし、これは議院内閣制の利点であり、最も有利なタイミングを柔軟に選んで国会の安定多数を確保することは、与党指導者の責任でもある。高市氏の政治的判断には十分な正当性がある。従来の日本の指導者と異なるのは、あえて自らを賭けに出し、国会解散と同時に「与党連合が過半数を得られなければ党首を辞任する」と明言した点だ。彼女は勝負に出て、そして勝ち切った。
一方で頼政権の問題は、議院内閣制と総統制の双方の利点を享受しようとしながら、責任を引き受けようとしない点にある。例えば卓栄泰氏は繰り返し野党に対し不信任案の提出を迫ってきた。仮に卓氏自身が身を引く覚悟を示したとしても、その犠牲は実質的な意味を持たない。なぜなら、根本的な問題は、頼政権自身が台湾の現行体制を議院内閣制とは捉えていないことにあるからだ。卓氏も頼清徳氏も、内閣が国会に対して責任を負うべきだとは考えておらず、行政と立法はそれぞれ独立した民意の基盤を持つと見なしている。そうであるならば、野党が不信任案を可決しても、たとえ多数を維持していたとしても内閣の方向性を主導することはできない。せいぜい総統自身も交代を望んでいるかもしれない行政トップを替える程度にとどまる。不信任案を提出することに、いったいどれほどの意味があるのか。
1997年の憲法改正および民進党政権の認識によれば、台湾の政治体制は総統制に傾いているとされる。総統制の国家においては、行政と立法が異なる政党によって担われる「分裂政府」の状況を解消するには、協議と妥協による調整しかない。
そのため、この大規模リコールが民意によって否決されたことは、頼政権による「迂回的国会解散」の試みもまた民意に否定されたことを意味する。現在の台湾政治は依然として行政と立法が分裂した状態にある。頼政権に残された道は、与野党間の協議と政党間の協力を通じて打開策を探ること以外にない。
野党議員を摘発――国会多数を握るための“もう一つの手法”か 明らかに、頼政権は与野党対話という教訓を学んでいない。「副署せず、執行しない」という手法が、大規模リコールでの失敗後に打ち出された新たな戦略であり、依然として野党と“共倒れも辞さない”対決路線を歩んでいる。政党間協力によって国会多数を確保しないのであれば、頼政権はどこから多数を得ようとしているのか。
台北地検が先日、調査局国家安全担当部門を指揮し、無所属立法委員の高金素梅氏を捜査したことは、これまでささやかれてきた「野党議員への捜査強化」の噂と呼応するものであり、政界に緊張をもたらしている。もちろん、国会議員といえども刑事責任を免れるわけではない。しかし、検察・調査当局が30カ所に及ぶ大規模な捜索を行ったにもかかわらず、現在伝えられている容疑内容には首をかしげざるを得ない点もある。
秘書給与を架空名義で不正請求した疑いについては、今後より具体的な証拠が示されるのを待つ必要がある。一方で、国家安全の名の下に、中国製の新型コロナ抗原検査キットを輸入し医療機器管理法に違反したとする指摘については、小題大作との印象も否めない。とりわけパンデミック初期には検査キットが不足していた状況を踏まえれば、緊急対応としての行動が今になって国家安全関連の罪として扱われることに、恣意的な立件ではないかとの疑念が生じるのも無理はない。
さらに、高金素梅氏が設立した「台湾原住民多族群文化交流協会」が、原住民族委員会や台湾電力、中油などの国営企業から近隣対策費の補助を受け、不実の領収書で水増し請求した疑いも指摘されている。しかし、近隣対策費は国営企業が長年続けてきた慣行であり、本来は地域の反発を和らげるための支出だったものが、やがて立法委員の「選挙区サービス」に流用されるようになった経緯がある。多くの立法委員が関連団体を設立して申請しており、精算手続きも比較的緩やかだったため、この「暗黙のルール」は深く問題視されてこなかった。
全ての立法委員が申請している中で、高金素梅氏だけが特に不適切だったとは限らない。検察・調査当局がこの慣行を選択的に取り上げるのではなく、立法委員全体の資金使用状況を包括的に調査すべきだろう。頼政権もまた、こうした近隣対策費という慣行そのものを廃止することで根本的な解決を図るべきであり、選択的な立件で政治的圧力の道具とするべきではない。
汚職の摘発自体は問題ではなく、政府の責務でもある。しかし、頼政権発足以降、検察当局がしばしば拘束措置を用いて野党に圧力をかけ、威嚇や羞辱の手段としているとの批判も強い。いわゆる「拘束による自白強要」との指摘も絶えない。これは頼政権と高市早苗氏との大きな違いの一つと言える。成熟した民主国家において、政府が司法を政治的武器として用いることは許されない。司法の武器化こそ、権威主義への第一歩だからである。
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