トップ ニュース サイバー攻撃の「武器化」が企業を襲う 笹川平和財団・大澤淳氏が語る、地政学リスクとしての防衛戦略と経営層の責務
サイバー攻撃の「武器化」が企業を襲う 笹川平和財団・大澤淳氏が語る、地政学リスクとしての防衛戦略と経営層の責務 ランサムウェアやDDoS攻撃が地政学的な報復手段として武器化される中、企業はサイバーセキュリティを技術的な問題としてではなく、事業存続に関わる経営リスクとして再定義し、サプライチェーン全体を含めた対策強化が急務となっている。(写真/笹川平和財団提供)
笹川平和財団安全保障・日米グループが運営する情報発信サイト「国際情報ネットワーク分析(IINA)」は2月5日、同財団上席フェローの大澤淳氏による論考を公開した。大澤氏は、近年激化するランサムウェアおよびDDoS攻撃が、従来のITリスクを超え、企業の存続を左右する「地政学リスク」へと変貌している現状について、経営層へ向けて強い警鐘を鳴らした。
ランサムウェアやDDoS攻撃が地政学的な報復手段として武器化される中、企業はサイバーセキュリティを技術的な問題としてではなく、事業存続に関わる経営リスクとして再定義し、サプライチェーン全体を含めた対策強化が急務となっている。(写真/笹川平和財団提供)
過去最多の被害 日常化するサイバーインシデント 大澤氏は、2024年から2025年にかけて日本企業や重要インフラに対するサイバーインシデントが急増し、攻撃が日常的なリスクとして定着したと指摘している。特に、企業の事業継続を直接脅かすランサムウェア攻撃と、社会基盤を麻痺させるDDoS攻撃が顕著であり、これらは単なるシステム障害ではなく、経営そのものを揺るがす重大な脅威となっている。
トレンドマイクロの集計によると、2024年の日本企業によるランサムウェア被害公表件数は過去最多の84件に達し、前年比で2割以上増加した。大手小売業や物流企業、動画配信プラットフォームなどが相次いで攻撃を受け、業務停止や商品の欠品、個人情報の流出といった実害が発生しており、サプライチェーン全体に波及する長期的な混乱を引き起こしている。
地政学的対立の「武器」となるDDoS攻撃 また、論考ではDDoS攻撃が地政学的な対立と結びつき、サイバー空間における報復手段として「武器化」されている点にも言及している。ロシアによるウクライナ侵攻に関連し、日本政府の制裁強化への反発として、ロシア系ハッカー集団が日本の関連機関やインフラ企業に対し、共同演習などの政治的なタイミングに合わせて攻撃を仕掛ける事例が確認されている。金融や交通機関が標的となり、市民生活に直結するサービスが停止するなど、サイバー空間が外交・安全保障上のメッセージ発信の場として利用されている現状が浮き彫りとなった。
経営層に求められる3つのアクション こうした「防ぎきれない攻撃」に対し、大澤氏はサイバーリスクを財務リスクや自然災害と同様の最優先課題として扱うよう提言している。具体的には、システム停止が事業に与える影響を棚卸しし、許容可能な停止時間を定義すること、取引先や委託先を含めたサプライチェーン全体でのリスク管理を徹底すること、そして地政学リスクを考慮した危機管理シナリオを策定することが求められる。
大澤氏は、攻撃を完全に防ぐことは困難であるとの前提に立ち、インシデント発生時の迅速な復旧と、ステークホルダーへの説明責任を含めた「サイバーレジリエンス(回復力)」の強化こそが、企業の存続戦略そのものであると結論付けている。
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