米台「対等貿易協定」が成立 台湾、米国産バイソン肉を解禁へ LNG・航空機など13兆円超の大型調達でトランプ政権と合意

2026-02-13 17:03
米通商代表部(USTR)のグリア代表、レモンド商務長官、台湾の鄭麗君・行政院副院長が「米台相互貿易協定(ART)」に署名した。(写真/米通商代表部提供)
米通商代表部(USTR)のグリア代表、レモンド商務長官、台湾の鄭麗君・行政院副院長が「米台相互貿易協定(ART)」に署名した。(写真/米通商代表部提供)

台湾・行政院(内閣)の鄭麗君(チェン・リーチュン)副院長(副首相)率いる台湾交渉団は、米東部時間2月12日、ワシントンD.C.で米通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア(Jamieson Greer)代表ら米側交渉チームと会談し、「米台相互貿易協定(Agreement on Reciprocal Trade、略称ART)」について合意に達した。その後、グリア代表、ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官、アレクサンダー・ユイ駐米代表(大使に相当)、および米国在台協会(AIT)のイングリッド・ラーソン執行理事が署名を行い、「米台相互貿易協定(詳細版)」が正式に成立した。

米通商代表部(USTR)の発表によると、台湾は米国産の牛肉、豚肉、家禽肉、加工ジャガイモなどに対する非関税障壁の解決と防止を約束した。また、米国産バイソン肉(野牛)の輸入解禁に向け、関連規制の整備を米側と協力して進めることで合意した。

エネルギー・航空機など848億ドルの大型調達計画

さらに台湾は、2025年から2029年の期間中に、米国製品の長期調達を総額848億ドル(約13兆円規模)拡大する計画を明らかにした。主な内訳は以下の通りである。

  1. 液化天然ガス(LNG)および原油: 440億ドル以上
  2. 民間航空機およびエンジン: 152億ドル
  3. 電力設備、送電網、関連製品: 252億ドル

加えて、米国産の牛肉、乳製品、豚肉、小麦、医療製品、自動車などの商品に対し、市場をさらに開放することも約束された。

グリア代表は声明で、「この協定は、米国からの輸出が直面する関税および非関税障壁を撤廃し、米国の農家、牧場主、漁業者、労働者、中小企業、製造業者にさらなる機会を創出するものである」と指摘。「本協定は、我々の長期的な経済貿易関係を強固にし、特にハイテク分野におけるサプライチェーンの強靭(きょうじん)性を著しく向上させるだろう」と評価した。

一方、ブルームバーグの報道によると、台湾が約束したとされる米国での半導体製造に対する融資や投資に関する具体的な取り決めは依然として不透明であり、協定文書には資金使途の詳細までは記載されていないという。

全文は以下の通り。

AITとTECROの枠組みで署名、製造業の拡大を促進

米東部時間2月12日、米国在台協会(AIT)と駐米台北経済文化代表処(TECRO)の枠組みの下、「相互貿易協定」が締結された。本協定は、米国と台湾の経済・貿易関係を強化し、双方に互恵的な利益をもたらすことを目的としている。関税の大幅な引き下げ、非関税障壁の撤廃、重点産業および製品への投資・調達拡大を通じて、米国製造業の顕著な拡大と成長を促進する狙いだ。

今回の「相互貿易協定」は、米台関係の重要性を明確に示すものであり、双方向の投資とビジネス機会の拡大、ハイテク分野における戦略的パートナーシップの深化、サプライチェーンの強靭性確保、そして安定と繁栄を共に促進するという共通の意思を反映している。

画期的な協定条項 関税撤廃から半導体投資まで

今回合意された「米台相互貿易協定」には、以下の12項目の主要条項が含まれている。これは台湾市場の構造的な開放を意味する画期的な内容となっている。

1. 米国工業・農産品に対する関税障壁の低減

台湾側は、関税障壁の99%を撤廃または削減し、米国製品に優遇的な市場アクセスを提供する。

  • 工業製品: 自動車および部品、化学品、水産物、機械、医療製品、電機製品、金属・鉱物など。
  • 農産品: 園芸作物、小麦、牛肉・同製品、乳製品、豚肉・同製品、羊肉、ナッツ類、ペットフード、ケチャップ、落花生など。

2. 工業製品の非関税障壁の撤廃

長年、米国の輸出を阻んできた自動車、医療機器、医薬品の非関税障壁を解消する。

  • 自動車:輸入数量制限を撤廃。米国の連邦安全基準および排出ガス基準に適合した車両について、追加要件なしで台湾市場への参入を認める。
  • 医療機器・医薬品: 米食品医薬品局(FDA)の製造販売承認を受け入れ、追加の市場参入条件を課さない。また、医療制度下での保険償還やリスト収載プロセスの透明性と公平性を確保する。

3. 農産品の非関税障壁の撤廃

米国産牛肉、豚肉、家禽肉、加工ジャガイモなどに対する非関税障壁を解決・防止する。また、米国産バイソン肉(野牛)の輸入解禁に向けた法的手続きを米側と協力して完了させる。

4. 原産地名称(GI)と市場アクセス

画期的な条項として、チーズや食肉の一般的な名称(パルメザン、ボローニャなど)を使用する権利を保障する。特定の地理的表示(GI)保護を理由に、米国製品の市場参入が不当に制限されないよう、透明かつ公平な基準を確立する。

5. 知的財産権の保護強化

知的財産権の保護を強化し、侵害行為を優先的に取り締まることで、米国のイノベーターやクリエイターの利益を守る。主要な国際条約の基準に準拠させる。

6. 労働基準の改善

国際的に認められた労働者の権利保護を確認。強制労働による製品の輸入禁止、遠洋漁業船員の権利保護、特定産業における斡旋手数料問題の解決、身分証取り上げの禁止、労働法規の執行強化を行う。また、結社の自由と団体交渉権を保障する改革を推進する。

7. 環境保護の強化

高い環境保護基準を維持し、資源効率の高い経済を促進する。違法伐採、漁業補助金問題、違法漁業(IUU)、野生生物の違法取引の撲滅に取り組む。

8. 国営企業と補助金問題

公共サービスや中小企業支援、安全保障上の目的を除き、商品を生産する国営企業に対して非商業的な援助や補助金を提供しないことを約束する。

9. 貿易円滑化と適正な規制慣行

規制の適正化、通関および貿易の円滑化、標準・技術規定、サービス・デジタル貿易の分野で協力を推進し、価値観を共有する。

10. 双方向投資の促進

クロスボーダー投資を促進する環境を整備する。米国側は法律に基づき、民間部門と協力して台湾の重要産業への投資融資を検討する。

また、2026年1月15日にAITとTECROが署名した覚書(MOU)に言及し、台湾は米国と協力して産業パークやクラスターを構築し、米国内のハイテク生産能力向上を支援する。

  • 台湾企業のコミットメント: 半導体サプライチェーン、電子機器受託製造サービス(AI応用含む)、エネルギー分野において、対米投資を大幅に拡大し、資金的支援を行う。
  • 米国の優遇措置: 米側は通商拡大法232条に基づく半導体および製造装置の調査において、台湾との経済・安全保障上の連携を考慮し、関税や救済措置での優遇待遇を付与することを確認した。

11. サプライチェーンの強靭性と経済安全保障

サプライチェーンの強靭(きょうじん)化に向けた協力を強化し、関税回避の防止に取り組む。また、国際調達において同様の義務を負う国のみが恩恵を受けられるよう、経済安全保障協力を深化させる。

12. 米国製品調達の拡大

台湾は2025年から2029年にかけて、以下の米国製品の長期調達を拡大する計画を示した。

  • 液化天然ガス(LNG)および原油: 444億ドル
  • 民間航空機およびエンジン: 152億ドル
  • 電力インフラ設備等:252億ドル(送電網、発電機、蓄電施設、製鉄設備など)

繁栄に向けた次のステップ

協定の発効には、台湾の立法院(国会)での審議を含む国内手続きの完了が必要となる。台湾がより強力で対等な貿易関係の構築に尽力したことを受け、米国側も台湾原産品の関税引き下げを約束した。適用される関税率は、米国の最恵国待遇(MFN)税率、または一律15%の「相互関税」(MFNに2025年4月2日の大統領令第14257号で定義された相互関税を加えたもの)のうち、高い方が適用される。ただし一部製品は相互関税の適用外となる。

なお、2024年の米台間の物品・サービス貿易総額は1,850億ドルを超えている。

トランプ政権、「不公正貿易」是正への成果

トランプ大統領は就任初日から、米国が長年被ってきた不公正な貿易慣行に異議を唱えてきた。4月2日には、二国間貿易の不均衡がもたらす大規模かつ継続的な貿易赤字の脅威に対応するため、国家非常事態を宣言している。

今回の発表は、米国の農家、漁業者、中小企業、製造業者の輸出機会を拡大し、米台貿易関係に具体的なロードマップを提供するものであり、均衡のとれた対等な貿易を推進する大統領の公約を体現するものといえる。

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編集:梅木奈実

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