トップ ニュース 「米国の言いなり」を拒否したカーニー首相の賭け 中国からの菜種大量受注は「劇薬」か カナダ財界に広がる戦慄
「米国の言いなり」を拒否したカーニー首相の賭け 中国からの菜種大量受注は「劇薬」か カナダ財界に広がる戦慄 2026年1月15日、北京に到着し、中国の李強首相と共に儀仗隊を観閲するカナダのマーク・カーニー首相。(写真/AP通信)
トランプ米大統領の強硬な圧力により、オタワ(カナダ政府)とワシントンの関係は氷点下に達している。カナダのマーク・カーニー首相は、ダボス会議(世界経済フォーラム)でトランプ氏による国際秩序の破壊を暗に批判する一方、水面下で北京を訪問。菜種(キャノーラ)貨物船10隻分の大口契約を取り付け、カナダ農業の急場を凌いだ。
ホワイトハウスから電話会談での態度を「弱腰で退縮した」と指弾されると、カーニー氏は「現在の米国にまともなことなど殆どない」と強烈に反論。
中國からのオリーブの枝 菜種貨物船10隻の大口注文 ロイター通信がシンガポールと北京から得た独占情報によると、カーニー首相が今月初旬に極秘裏に北京を訪問した直後、中国の輸入業者がカナダ産菜種を積んだ貨物船最大10隻を迅速に確保したという。
事情に詳しい2人の貿易商によれば、貨物は1ロットあたり約6万5,000トンで、今年2月から4月にかけて船積みされる予定だ。総量65万トンと仮定した場合、この単発契約だけで中国の2024年年間輸入量(639万トン)の10%強、前年の輸入総量(約250万トン)に対しては26%にも相当する規模となる。
この取引の裏には、年初に中加間で交わされた「手打ち」がある。カナダが中国製電気自動車(EV)に対する関税障壁を引き下げる見返りに、北京側がカナダ産菜種の輸入規制を緩和するという合意だ。この取引によりカナダの農家は一息ついたかもしれないが、地球の裏側にいるオーストラリアの農家にとっては不意打ちとなった。
ロイターによれば、中国国有の食糧大手「中糧集団(COFCO)」は最近、約50万トンのオーストラリア産菜種を購入したばかりで、豪州農家は市場回復を期待していた。しかし、カーニー氏と北京の和解により状況は一変。情報筋によると、すでに中国に到着している豪州産菜種2船分はまだ加工が始まっておらず、中国の巨大な搾油業界は、カナダからの大量入荷を待つ「待機状態」に入っているという。ある国際農業商社の関係者は「豪州産の貨物がどうなるか不透明だ」と懸念を示している。
米政府の侮辱とカーニー氏の応戦 北京の注文が「アメ」なら、ワシントンは依然として「ムチ」を振り回している。
これに対し、ベッセント米財務長官はFOXニュースで、カーニー氏がトランプ氏との電話会談において「ダボスでの不幸な発言を撤回した」と述べ、カナダ首相がトランプ氏の前で「弱腰になり謝罪した」かのような印象操作を行った。
しかし、カナダ紙『グローブ・アンド・メール』によると、カーニー氏はホワイトハウスによるこの屈辱的な定性化に対し、正面から応戦した。彼はベッセント氏の主張を二度にわたり否定し、「はっきりさせておくが、私はトランプ大統領にもそう伝えたが、ダボスで私が語ったことこそが、私の本意だ」と強硬に反論した。
USMCA(米墨加協定)の行方は カーニー氏はダボスでの主張を曲げるつもりはないが、カナダのルブラン貿易相は「北京と自由貿易協定(FTA)の交渉はしていない」と火消しに追われている。カーニー氏も26日の電話会談で、トランプ氏に対し「カナダはUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定、カナダ名CUSMA)の見直し協議を進める準備ができている」と伝えた。
USMCAの定期見直し協議は今年7月に予定されている。野党・ブロック・ケベコワのブランシェ党首は国会質問で、カーニー氏に対し「米国と新たな貿易協定を結ぶ保証はあるのか」と詰め寄った。これに対しカーニー氏は具体的な保証を示せず、「正式な交渉は数週間以内に始まる」と述べるにとどまった。この答弁は、対中接近というカードを切りつつも、最大の貿易相手国である米国との関係修復に苦慮するカナダの厳しい現状を浮き彫りにしている。
カナダ経済界の見解は二分 カナダの有力紙『グローブ・アンド・メール』によれば、カナダ経済界はカーニー首相が掲げた「旧秩序の崩壊」という認識や、「中堅国家が団結して経済的威圧(エコノミック・コインーション)に対抗すべきだ」という主張そのものは支持している。しかし、多くの企業トップやCEOたちが、首相のあまりに率直な物言いが「強大な隣人(米国)」を激怒させるのではないかと懸念しているのも事実だ。
カーニー氏の発言は、事実上のトランプ氏への猛烈な批判として解釈されている。ビジネスリーダーたちは、この予測不能な「猛獣」を刺激しないよう、細心の注意を払っているのだ。トロント証券取引所を運営するTMXグループのジョン・マッケンジーCEOの言葉が、その空気を象徴している。「総理は勇敢な演説を行った。だが、勇気には必ず『代償』が伴うものだ」
USMCA交渉への暗雲 「USMCA(米墨加協定)」の再交渉期限が迫る中、多くのCEOが抱く懸念は深い。トランプ氏がその気になれば、カナダを懲罰する手段はいくらでもあるからだ。
カナダ・ビジネス評議会のゴールディ・ハイダーCEOは今週、ワシントンで米通商代表や議員らと会談したが、そこで突きつけられたのは米国側の冷ややかな疑念だった。ハイダー氏によれば、米側は「カーニー氏があれほど情熱的な演説をした後で、カナダは本気でUSMCAを更新する気があるのか? そして、まだ『ファイブ・アイズ』の情報共有体制に留まるつもりがあるのか」と疑問を呈しているという。
「政権は変わるが、貿易は続く」 もちろん、カーニー氏がダボスで見せた姿勢を「世界レベルのリーダーシップ」と称賛するCEOも少なくない。しかし、TMXグループのマッケンジー氏が指摘するように、カナダ企業は米国市場を維持しつつ、その他の海外市場も開拓し続けなければならないのが現実だ。
エネルギー大手セノバス・エナジーのアレックス・ポアベックス会長は、米国が自社産業にとって最大の貿易相手国であり、その構図は短期的には変わらないとの見方を示している。「政府や政治家はいずれ交代する。カナダと米国の悪化した貿易関係も、永遠に続くわけではない」。この言葉には、政治的対立を超えてビジネスを継続させようとする経済界の冷静な意志が込められている。
更多新聞請搜尋🔍風傳媒日文版
最新ニュース
「米国は恩人、中国は身内」台湾野党トップが新定義 政府は痛烈皮肉「倒産を狙う親戚など不要」 台湾の最大野党・国民党は1月28日、2月2日から4日にかけて北京で中国共産党とのシンクタンク交流フォーラムを開催すると発表した。これに合わせ、国民党の鄭麗文(てい・れいぶん)主席は「米国は恩人だが、中国大陸は身内である」とする新たな対中・対米論述を提唱し、「米中間でどちらかを選ぶことはしない」と強調した。これに対し、対中政策を管轄する台湾政府の大陸委員会(陸......
マドゥロ拘束後のベネズエラ、トランプ政権が選んだ「理念より石油」の冷徹な実利主義 日本記者クラブ(JNPC)で2026年1月27日、アジア経済研究所主任研究員でベネズエラ研究の第一人者である坂口安紀氏が登壇し、1月3日に米軍によって実行されたニコラス・マドゥロ大統領(当時)の拘束劇と、その後の混乱する情勢について詳細な分析を行った。坂口氏は、マドゥロ政権下での壊滅的な経済破綻と人権侵害の実態を振り返りつつ、2024年大統領選で反体制派が科......
3兆円の巨額投資、日本が水素エネルギーに「国運」を賭ける理由 2021年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)以降、世界各国が「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」へと舵を切る中、日本は数年にわたる技術実証と方針策定を経て、2025年、ついにエネルギー戦略の重要な転換点を迎えた。経済産業省が発表した最新の『エネルギー白書2025』において、欧米によるグリーンエネルギー分野での攻勢や、EV......
【評論】米中対立下で中国貿易が過去最高を記録 米国の「封じ込め政策」は失敗か 中国が発表した2025年の貿易統計は、驚異的な数字を叩き出した。この「輝かしい成績表」が物語るメッセージは一つである。すなわち、米国による中国封じ込め、および抑圧政策は全面的に失敗したということだ。中国海関総署(税関総署)の統計によると、2025年の中国の対外貿易総額は45兆4700億元(前年比3.8%増)。そのうち輸出は26兆9900億元(6.1%増)、輸......
ベッセント長官「介入否定」で円急落 専門家が警告する「高市リスク」と2026年のインフレ衝撃 ドル円相場の急激な変動を受け、市場では日本政府だけでなく米国政府も協調介入を行っているのではないかとの観測が浮上していた。しかし、米国のスコット・ベッセント財務長官はこれを明確に否定。「円相場を支えるための市場介入は絶対にしていない」と発言したことで、ドル円相場は再び円安方向へと振れた。台湾の金融業界関係者は「現時点では、米国が台湾やその他のアジア諸国に対し......
【掲仲コラム】張又侠氏「粛清」の深層と衝撃 習近平氏が恐れた「2つのレッドライン」とは 2026年1月24日午後、中国国防部が突如として発表したニュースは、各界に激震を走らせた。中国共産党中央軍事委員会の張又侠副主席(上将)および、同委員・軍委連合参謀部参謀長の劉振立(上将)に対し、「重大な規律違反・法律違反」の疑いで立件・審査調査を行うというのだ。張又侠氏と、それに先立ち失脚した苗華氏への厳罰は、単なる汚職問題ではなく、独裁者の「越えてはなら......
政府、尖閣漁船に「水面下」で自粛要請 高市首相「台湾有事」発言でトランプ氏介入も 沖縄県・石垣島の漁師、仲間均氏(76)は長年、尖閣諸島(台湾名:釣魚台)周辺海域での漁を続け、実効支配の守護者として活動してきた。中国海警局の船に取り囲まれながらも操業を続ける彼の行動は、これまで日本政府によって黙認されてきた。しかし、2025年末からその風向きが変わり始めた。政府当局が中国を刺激し、日中間の緊張をさらに激化させることを避けるため、当該海域へ......
「韓国国会はなぜ批准しないのか」トランプ氏、米韓協定を破棄、25%の報復関税を即時適用へ トランプ米大統領は2026年1月26日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」への投稿で、韓国からの輸入自動車、木材、医薬品などの品目に対する関税率を、現行の15%から「直ちに」25%へ引き上げると発表した。トランプ氏は投稿の中で、韓国国会が「米国との約束を履行していない」と激しく非難している。この突然の発表に、ソウル側は虚を突か......
高市首相、与党過半数割れなら「即刻辞任」を明言 衆院選へ背水の陣 1月27日公示、2月8日投開票の衆議院選挙を控え、日本記者クラブ主催の党首討論会が26日開催された。自民党総裁を務める高市早苗首相は、対中政策における「対話重視」の姿勢を改めて強調するとともに、衆院選で自民党と連立与党の獲得議席が過半数を割り込んだ場合、「即刻辞任する」と明言し、選挙結果に政治生命をかける覚悟を示した。7党首が激論、外交・経済で論戦討論会には......
台湾華語教育、世界100カ所体制へ 徐佳青・僑務委員長が仙台の学習センター開所式に出席 台湾政府の僑務委員会(OCAC)の徐佳青委員長は1月23日、仙台市を訪問し、「MEET TAIWAN 台湾華語・文化教室」に併設された「台湾華語文学習センター(TCML)」の開所式に出席した。会場には地元の政界関係者や在日華僑の代表、文化教育関係者ら多数が詰めかけ、台湾が国際的な華語教育を深化させる重要な節目を見守った。徐氏は挨拶の中で、4年前に締結された「......
米主導の「対中包囲網」に風穴 EU・カナダが中国と相次ぎ和解、揺らぐEVデカップリング トランプ政権(第1期)による米中貿易戦争の勃発以来、米中両大国(G2)の対立は世界貿易の構造を決定づけてきた。ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)、TikTokから、EV(電気自動車)、半導体、AIに至るまで、ワシントンはトランプ第1期からバイデン政権、そしてトランプ第2期へと続く中で、「中国製造2025」に対抗するための強固な包囲網を築き上げてきた......
【舞台裏】台湾軍「サイバー部隊」に戦力空白の危機?中国の指名手配が示す実力と、組織再編の真実 「第四の軍種」と呼ばれる台湾軍の「資通電軍(情報通信電子軍)指揮部」。先日、中国・広州市公安局が同部隊の将兵20名を、中国へのサイバー攻撃に関与した「主犯格」として指名手配した一件は記憶に新しい。表向き、台湾軍は「事実無根」と否定したが、軍内部からは「(中国を怒らせるほど)何か正しいことをした証だ」と、その実力を自負する声も漏れ聞こえる。しかし、このサイバー......
中国、日本渡航制限の次は「台湾旅行解禁」か 憶測呼ぶ契約更新、台湾当局は「定例事務」と一蹴 高市早苗首相による「台湾有事」発言を受け、中国外務省が昨年11月14日深夜に「日本への渡航自粛」を呼びかけたことは記憶に新しい。これを受け、中国の大手航空会社3社は即座に日本行きの航空券を無料で変更・払い戻し可能にする措置を取った。そんな中、中国文化観光省がこのほど「2026年版 台湾地区への旅行契約(モデル約款)」を公表し、外部からは「中台間の観光規制がつ......
【特別寄稿】映画『国宝』の狂気と高市早苗の覚悟 映画と政治が共振する「日台運命共同体」の行方 新年を迎え、2025年の日本を振り返ると、ある奇妙な「共振」の中にいることに気づく。映画界では、吉田修一の小説を原作とする映画『国宝』が、3時間に及ぶ長尺ながら興行収入ランキングの首位を独走し、その残酷なまでに美しい舞台美学で日本人の集団的感性を揺さぶった。一方、政界では「日本の鉄の女」と称される高市早苗氏が首相に就任し、長らく続いた外交的曖昧さを雷のような......