台湾立法院(国会)の次期会期に向け、与党・民進党の立法院党団(議員団)幹部改選が動き出した。当初、その座を退くと見られていた現職の党団総召(議員団総務、日本の国対委員長に相当)、柯建銘(カ・ケンメイ)氏がまさかの「続投」を表明。これに対し党内外から驚きの声が上がり、民進党内で「茶瓶の中の嵐(内紛)」が巻き起こっている。
柯氏は長年、民進党の国会運営を取り仕切ってきた「万年総召」だが、2025年に主導した野党議員に対する「大リコール(罷免)運動」が失敗に終わり、党の勢いに深刻なダメージを与えた。当時、党団幹部の総辞職や柯氏への退任圧力が高まり、頼清徳(ライ・セイトク)総統や潘孟安・総統府秘書長が自ら説得に動いたとも報じられた。
柯氏はその際、地位を固守したが、党内では「今会期が最後」との見方が大勢だった。今回、柯氏が潔く身を引かず、あくまで続投を望む姿勢を見せたことで、頼総統のリーダーシップと威信が問われる事態となっている。

柯建銘氏の続投に異論噴出、王世堅議員が「口火」
柯氏の立候補表明を受け、民進党の「ご意見番」である王世堅・立法委員(議員)は1月24日、「柯氏は引き際を知り、若い世代にバトンを渡すべきだ」と公然と批判した。かつて幹事長を務めた呉思瑤議員も「党団の同僚が立ち上がることを期待する」と述べ、現職幹事長の鍾佳濱議員も「どのような組み合わせでも最適解になる」と、暗に交代を容認する姿勢を示した。
かつて柯氏を最も支持していた党内派閥「蘇貞昌系」も沈黙を守っており、党内の雰囲気は微妙だ。
党内には不穏な空気が漂う。2025年のリコール失敗後、林淑芬議員は「今の党団には討論も民主主義もない」と痛烈に批判していた。さらに最近、柯氏が汚職で保釈中の陳水扁・元総統の番組に出演したり、野党・民衆党の柯文哲元主席と面会したりしたことが、党内で波紋を呼んでいる。重要法案である軍事購入条例や総予算案がいまだ委員会付託さえされない現状もあり、「野党とまともに対話できるリーダーが必要だ」という声が高まっている。

「リリーフ」は蔡其昌氏か、鍵を握る頼清徳総統
こうした中、有力な後継候補として名前が挙がっているのが、蔡其昌(サイ・キショウ)立法委員だ。
蔡氏は前副院長を務め、野党とも対話可能なキャラクターとして知られる。今回の改選で総召の座に挑戦する可能性が浮上しており、党上層部の意向が働いているとも噂される。蔡氏本人は「まだ考え中だ」と態度を保留しているが、党政関係者によれば、彼は人望が厚く、中華職棒(CPBL、台湾プロ野球)会長として、2024年の「プレミア12」優勝を支えた実績から人気も絶大だ。
しかし、ある党幹部は「蔡氏は性格上、柯氏との全面対決(投票)は避けたがるだろう」と分析する。鍵を握るのは、頼清徳総統が蔡氏のために「障害物(柯氏)」を取り除けるかどうかだ。もし障害が残ったまま蔡氏が立候補すれば、それは「党上層部が柯氏との直接対決を望んでいる」という明確なシグナルとなる。
現在の勢力図では、頼総統が蔡氏を推せば、最大派閥「新潮流」の16票、不分区(比例代表)の7票などを固め、過半数を確保できる公算が高い。頼総統が蔡氏を「登板」させる決断をすれば、勝敗は明らかだ。

新総召で膠着打開なるか 総統府・行政院の「対決姿勢」が壁に
立法院事情に詳しい関係者は、「軍事購入や総予算など重要法案が滞る中、上層部が交代にこだわるなら、それは野党との対話の糸口を探るためだ」と指摘する。蔡氏は新潮流に属しながらも派閥を超えた人脈を持ち、「チームワーク」を重視するスタイルで知られる。
しかし、別の党内関係者は冷ややかだ。「蔡氏が対話上手だとしても、現在の総統府や行政院が野党に対し、党団以上に攻撃的な姿勢を取っている。顔を変えたところで、与野党の対話が成立するかは未知数だ」。
ある党内関係者はこう漏らす。「柯氏はすでに第一線から退いたような振る舞いを見せているが、もし彼が続投すれば、党内議員は納得するのか。そして頼総統の威信はどうなるのか。民進党は今、自らとの戦いを強いられている」
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編集:佐野華美


















































