台湾有事に日本はどう備えるか 防衛戦略の転換と社会的レジリエンスを専門家が議論
日米台関係研究所のシンポジウムで専門家らが、台湾有事に向けた原子力潜水艦の導入や能動的サイバー防衛、そして社会的レジリエンスの抜本的強化を訴えた。(写真/黃信維撮影)
一般社団法人日米台関係研究所は2026年5月16日、東京都内で開催したセミナーの第2部としてシンポジウムを実施した。梅原克彦理事がモデレーターを務め、矢野一樹氏、佐々木孝博氏、阿久津博康氏らがパネリストとして新たに登壇し、第一部の基調講演を踏まえ、日本の防衛政策の転換、サイバー・認知戦への対応、そして有事における危機管理について多角的な議論が交わされた。
打撃力の整備とサイバー・認知戦への備えの重要性
元海上自衛隊潜水艦隊司令官の矢野一樹氏は、従来の専守防衛という概念はもはや通用せず、日本が自ら打撃力を整備すべき時期に来ていると強調した。また、中国や北朝鮮など周辺国の動向を踏まえ、水中機動力や静粛性、ソナー等への電力供給能力において通常動力型を圧倒する原子力潜水艦の導入が日本にとって急務であると主張した。
一方、広島大学客員教授の佐々木孝博氏は、サイバー攻撃や認知戦への対応に言及し、偽情報の発信源をAI等を用いて早期に特定し、能動的に無力化する態勢の必要性を指摘した。さらに、真実に基づく科学的データの提示と、国家として国際社会に向けた圧倒的な情報発信を行う体制の構築を訴えた。
阿久津博康氏が指摘した台湾有事と社会的レジリエンス
中東からオンラインで参加したラブダン・アカデミー教授の阿久津博康氏は、最近のイランによるミサイルやドローン攻撃の事例を挙げ、台湾有事の際にも同様の飽和攻撃が日本や台湾に向けられる可能性を指摘した。
迎撃能力の限界を補うため、反撃能力の保有に加え、データセンター等の重要インフラの抗堪性強化、住民避難、破片処理、偽情報拡散の防止を含む総合的な社会的レジリエンスの構築が必要不可欠であると論じた。また有事に備え、日台間で通信や避難方法に関する実務者レベルの事前の調整メカニズムを平時から構築しておくべきだと提言した。
核抑止や尖閣、中国進出企業のリスクについても議論
質疑応答では、参加者から日本の核保有や尖閣諸島への自衛隊常駐、中国進出企業のリスクなどに関する具体的な質問が寄せられた。核の脅威に対し、小川清史氏が日米間での核計画グループの創設を提案したのに対し、矢野氏は米軍の核戦力展開を受け入れた上での段階的な戦略検討の必要性を指摘した。
また尖閣諸島への部隊常駐について矢野氏は、戦力の分散につながるとして慎重な姿勢を示した。さらに小川氏は中国における有事の際の邦人救出は極めて困難であるとし、外資系企業に対する中国政府の規制強化を見据え、日本企業は平時からの危機管理と撤退に向けた準備が重要であると警鐘を鳴らした。
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