高市首相の台湾有事発言、中国の作戦前提揺るがす 元陸将が分析

元陸上自衛隊陸将の小川清史氏は、高市首相の「台湾有事」発言は、中国の従来の台湾侵攻作戦の前提を覆し、シナリオの全面的な書き換えを迫ると分析した。(中央社)
元陸上自衛隊陸将の小川清史氏は、高市首相の「台湾有事」発言は、中国の従来の台湾侵攻作戦の前提を覆し、シナリオの全面的な書き換えを迫ると分析した。(中央社)

高市早苗首相の「台湾有事」発言が、引き続き安全保障面で波紋を広げている。台湾の中央通信社によると、元陸上自衛隊陸将の小川清史氏はこのほど、高市氏が昨年の国会答弁で、台湾に対する海上封鎖を日本の「存立危機事態」の判断基準になり得ると位置づけたことについて、日本が台湾海峡危機の初期段階から関与する可能性を示したものだと分析した。その上で、この発言は中国側が従来想定していた対台湾軍事行動の前提を大きく揺るがし、北京に対し台湾侵攻シナリオの全面的な見直しを迫ることになったと指摘している。

中国の台湾侵攻は「短期決戦」目指す

​中央社によると、小川氏は「日本李登輝友の会」の講演で、中国の対台湾軍事行動は通常、三つの段階に分けられると説明した。第一段階は、認知戦や軍事演習を通じた封鎖の実施。第二段階は、ミサイル攻撃やサイバー攻撃によって台湾の機能をまひさせる段階。そして最終段階が、制空権と制海権を確保した後の全面的な上陸作戦だという。小川氏は、中国戦略の核心は「短期決戦」にあり、米国や日本が介入する前に台湾の掌握を完了させることを狙っていると分析した。

高市発言は日本介入の前倒し示唆

​しかし、高市氏は昨年11月、衆議院での答弁で、台湾が武力攻撃を受け、さらに戦艦による海上封鎖が行われた場合、日本が武力を行使できる要件である「存立危機事態」に該当する可能性があると明言した。小川氏は、この発言が日本側の判断基準を、中国が想定していた第一段階にまで前倒しするものであり、中国にとって極めて大きな衝撃になったとの見方を示した。作戦の前提条件が変化したことで、中国側はその後の兵力配備や侵攻のテンポを再評価し、調整せざるを得なくなる。中国がこの発言に強く反発し、撤回を求めたのはそのためだとしている。

軍事力の比較について小川氏は、一般に侵攻側は防御側の3倍の兵力を必要とするとの原則を挙げた。その上で、台湾の陸軍兵力を約10万人とみた場合、中国側は少なくとも30万人規模の兵力を上陸させる必要があるが、これは輸送と兵站の両面で極めて難易度が高いと分析した。

また、台湾が採用している「持久戦」と「縦深防御」の戦略についても言及した。これは、時間を引き延ばして外部からの支援を待つことを目的としたものであり、中国側の「短期決戦」構想とは真正面からぶつかるものだと指摘した。

さらに小川氏は、仮に中国が台湾の掌握に成功したとしても、その後には日本、フィリピン、さらには米軍からの反撃圧力に直面することになると述べた。その結果、戦線は沖縄や東南アジアにまで拡大する恐れがあると警鐘を鳴らした。

その上で、日本が台湾有事に効果的に対処し、自国防衛を確実なものとするためには、憲法をめぐる議論にとどまらず、自衛隊法を改正して自衛隊を正式に「軍隊」と位置づける必要があると主張した。あわせて、防衛省を「国防省」へ改組すべきだとの考えも示している。

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