ロシア戦勝記念日パレードで異変 重兵器展示を中止、背景にウクライナ戦争の消耗か

2020年6月、赤の広場での軍事パレードに登場した大陸間弾道ミサイル「RS-24ヤルス」。(AP)
2020年6月、赤の広場での軍事パレードに登場した大陸間弾道ミサイル「RS-24ヤルス」。(AP)

ロシア大統領府(クレムリン)にとって自国の軍事力を世界に誇示する重要な舞台となってきたのが、毎年5月9日にモスクワの「赤の広場」で行われる軍事パレードだ。第2次世界大戦における対ナチス・ドイツ戦勝利を記念し、例年、各軍種の部隊や現役の兵器を組み合わせ、壮大な規模で実施されてきた。

しかし、第81回を迎える今年のパレードは、現実的な状況の制約を免れられないようだ。ロシア国防省はこのほど、今年のパレードでは兵器などの装備展示を行わず、各軍事学校や各軍種の代表によって編成された徒歩部隊による行進のみを実施するとの声明を発表した。

ロイターの報道によると、ロシア国防省は4月28日、「現在の作戦状況」(ロシア・ウクライナ戦争を指す)を鑑み、今年5月9日に赤の広場で予定されている戦勝記念日の軍事パレードでは、主力戦車「T14(アルマータ)」や「T90M」、各種の大陸間弾道ミサイル(ICBM)といった地上の軍事装備を一切展示しないと正式に発表した。

ロシア当局は、重兵器はウクライナ東部の前線への供給を優先させる必要があることに加え、赤の広場に多くの兵器を「一斉に集結」させた場合、ウクライナの首都キーウからの無人機(ドローン)攻撃の標的となるリスクが高いことを武器展示を実施しない理由に挙げた。一方で、多くの海外メディアは実態はそれほど楽観的ではないと指摘している。モスクワは4年以上にわたる高強度の消耗戦を経て、パレードで「軍の威信」を保つために必要な重兵器を後方に回す余裕がすでに失われている可能性が高いとの見方が広がっている。

ロシアはモスクワの赤の広場で再び盛大な戦勝記念日パレードを開催。(AP通信)
モスクワの赤の広場で過去に行われた盛大な戦勝記念日パレード。(AP通信)
中国国家主席・習近平氏(中央)はロシアの戦勝記念日パレードに招待され、ロシア大統領・プーチン氏が出迎えた。(AP通信)
ロシアの戦勝記念日パレードに招待を受けて出席した習近平・中国国家主席(中央)。向かって右はロシアのプーチン大統領。(AP通信)

今回の発表は、1年前の第80回記念式典とは極めて対照的な内容だ。ロシアは2025年の軍事パレードで、中国の習近平・国家主席を含む20人以上の友好国首脳をモスクワに招待し、最前線から帰還した数千人の兵士や、最新鋭のドローン部隊、新型兵器を共に見守った。

それから一転して2026年、外交的孤立と巨額の軍事費支出という重い負担により、国力を誇示するプロパガンダの場であったこの歴史的なパレードは、最も基本的な部隊の観閲のみへと規模を縮小せざるを得なくなった。

前線兵士の映像と航空ショーで代替

地上の兵器展示の中止を補うため、2026年の赤の広場でのパレードは「デジタルプロパガンダ」と航空部隊の飛行に変更される。ロシア軍によると、式典ではウクライナの前線で任務を遂行する現役兵士の記録映像が放映される予定だという。また、航空部隊の展示として、地上攻撃機スホイ25(Su-25)が赤の広場上空を飛行し、ロシア連邦の三色旗を模したスモークを噴射して式典のフィナーレを飾る。

2025年5月9日、モスクワで開催された戦勝記念日パレードに出席し、第2次世界大戦における旧ソ連の対ナチス・ドイツ戦勝80周年を祝うプーチン氏と習氏。(AP通信)
2025年の戦勝記念日パレードに出席したプーチン氏と習氏。(AP通信)

プーチン氏は26年に及ぶ長期政権において、常に「大祖国戦争」(第二次大戦におけるソ連の対独ナチ戦争)での勝利を、民族叙事詩の中核に位置づけてきた。さらに、ウクライナ政府を「新ナチス」と繰り返しレッテル貼りすることで、自らが2022年に開始した侵略を正当化している。

ロシアにおける過去の戦勝記念日パレードを振り返ると、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっていた2021年でさえ、モスクワは反対意見を押し切り、最大規模の軍事パレードを強行した。当時は三軍の将兵1万2000人と191種類に及ぶ各種装備を世界に誇示した。それからわずか5年の歳月を経て、現在の赤の広場に残されたのは、立ち並ぶ将兵の姿と、バーチャルな映像のみとなる見通しだ。

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