フランス戦略研究財団(FRS)のヴァレリー・ニケ氏(インド太平洋研究コンソーシアムディレクター)は2026年4月17日、日本記者クラブで「高市現象と日本の政治」をテーマに講演した。ニケ氏は、日本を取り巻く戦略環境の激変と、それに対応する高市政権の政策について、地政学的な視点から多角的な分析を示した。
中国の地政学を専門とするニケ氏は、日本が直面する課題は単なる内政問題ではないと指摘。中東情勢の不安定化、米中競争の激化、多国間秩序の弱体化といった広範な戦略的文脈の中で理解されるべきだと強調した。
地政学的リスク、ホルムズ海峡とエネルギー安全保障の脆弱性
ニケ氏は、現在の日本が置かれた状況を「不安定で分断が進み、要求度が高まっている環境」と描写した。特にイランが関与する中東の緊張は、日本の原油輸入の約9割が通過するホルムズ海峡の脆弱性を浮き彫りにしている。
この状況は、10年以上前に安倍政権が想定した「集団的自衛権の発動が必要となるエネルギー供給途絶のシナリオ」に現実味を与えている。こうした構造的な脆弱性が、日本の安全保障政策における「戦略的明確さ」と「強靭性(レジリエンス)」の強化を後押ししているとの見解を示した。
日米同盟の変容「自立的整合性」への歩み寄り
日米同盟については、依然として日本の安全保障の要であり、代わりのない必須の存在であるとしつつも、かつてのような「完璧な安定性」への信頼は変容しているとニケ氏は分析した。
戦略的な拡大による「注意力の分散」
米国が欧州、中東、アジアの三正面で同時にリーダーシップを発揮することを期待される中、米国側のリソース分散が構造的なジレンマとなっている。
自立的整合性
高市首相が掲げるアプローチを、ニケ氏は「米国から距離を置くのではなく、同盟を維持しながらも自律性を高める『自立的整合性』への歩み寄り」であると評価した。
対トランプ外交の成功
高市氏の訪米について、ドナルド・トランプ氏のような予測困難なリーダーに対しても、敬意を保ちつつ積極的な役割を果たす姿勢を示した点で成功であったと述べた。
欧州・多国間パートナーシップの深化
欧州との関係については、マクロン大統領の訪日を例に挙げ、エネルギー・海洋安全保障や経済的強靭性の確保において、日本と欧州の現状診断が一致していることを強調した。
ニケ氏は、米国が唯一の選択肢ではなく、欧州、インド、豪州といった複数のパートナーシップを重層的に持つことが、日本の戦略的自立性を高める上で極めて重要であると指摘した。
(関連記事:
小笠原村長、南鳥島での「核のごみ」文献調査受け入れを表明 国主導の申し入れ受けは全国初
|
関連記事をもっと読む
)
対中政策、デリスキングと「戦略的明確さ」への支持
対中関係について、ニケ氏は、中国を単なる経済的パートナーではなく、軍事的圧力や経済的レバレッジを駆使する「システミックな戦略的課題」として捉える認識が、日本国内で完全に定着したと分析した。同氏は、中国が多層的な圧力戦略を通じて日本の世論を分断しようと試みたものの、総選挙における自民党と高市首相の圧勝が、その試みの失敗を証明したと断じた。むしろ、外部からの圧力が、日本の国家強靭性を高めるための「戦略的明確さ」に対する国民の支持を強化する結果を招いた。経済面では、全面的なデカップリングは非現実的であるとしつつも、半導体などの重要分野における依存度を低減させ、サプライチェーンの多角化を図る「デリスキング」の重要性を改めて説いた。


















































