トップ ニュース トランプ氏を襲った暗殺未遂の連鎖 銃撃、毒物、狙撃企画、10年の全記録
トランプ氏を襲った暗殺未遂の連鎖 銃撃、毒物、狙撃企画、10年の全記録 2024年7月13日、暗殺未遂に遭い、シークレットサービス(SS)の警護を受けながら現場を迅速に離脱する米前大統領のドナルド・トランプ氏。(写真/AP通信提供)
2016年の演説会場での銃奪取未遂から、2024年のペンシルベニア州バトラーでの銃撃事件、そして本日発生したホワイトハウス記者夕食会での衝撃的な銃声まで。ドナルド・トランプ米大統領 の政治キャリアはわずか10年ほどだが、その間、数多くの暗殺未遂事件が記録されている。
トランプ氏はこれまで、相次ぐ議論や法廷闘争を切り抜けてきただけでなく、幾度となく銃口と暗殺の陰謀から生還してきた。死神と隣り合わせの状況が繰り返されるその姿は、米国における政治的極端化と暴力という深刻な危機を浮き彫りにしている。
候補者時代から始まった暴力の影、舞台突撃から銃奪取の試みまで トランプ氏の政治的進撃は、当初から暴力の影が付きまとっていた。最初の重大な治安事件が発生したのは、2016年3月12日のことだ。当時、共和党の指名獲得を確実にする前だったトランプ氏がオハイオ州デイトン(Dayton)で集会を開いていた際、22歳の男、トーマス・ディマッシモ(Thomas DiMassimo)が突如暴走。警察のバリケードを突破してステージに駆け上がろうとした。シークレットサービス(SS)は即座に男をタックルして制圧。ディマッシモは秩序乱した罪などで起訴され、同年7月26日、1年間の保護観察処分を言い渡された。
同年6月18日、ネバダ州ラスベガスのトレジャー・アイルランド・ホテル&カジノでの演説中には、20歳の英国人、マイケル・スティーブン・サンドフォード(Michael Steven Sandford)が行動に出た。群衆の中にいた男は、警備にあたっていた警察官の拳銃を奪おうとしたが、警察官の素早い反応によりその場で取り押さえられた。サンドフォードはSSの取り調べに対し、拳銃を奪った目的は「トランプ氏の殺害」であったと率直に供述した。連邦裁判所の判決記録によれば、男には12ヶ月と1日の禁固刑および200ドルの罰金が科され、2017年5月に釈放された後、英国へ強制送還された。
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さらに大選投票日のわずか3日前となる2016年11月5日、ネバダ州リノ(Reno)での集会で、トランプ氏が演説中に群衆の中から「銃だ!」という叫び声が上がった。この一言で会場はパニックに陥り、SSは身を挺してトランプ氏を保護し、急いでステージ下へと退避させた。叫び声を上げた男は周囲の聴衆によって取り押さえられたが、SSが所持品を検査した結果、武器は一切発見されなかった。男の名前はオースティン・クライツ(Austyn Crites)。トランプ氏に反対する共和党員であり、当時は「トランプに反対する共和党員」と書かれたプラカードを掲げていた。混乱の最中に誰かがプラカードを奪おうとして騒ぎになり、その中で「銃だ」という声が上がったことが原因だった。現場の安全が確認されると、トランプ氏は数分後にステージへ戻り、演説を完遂した。
ホワイトハウス入り後の暗殺百態、重機による突撃からリシン毒物書簡まで 2017年、トランプ氏は米大統領に正式就任したが、警備レベルが引き上げられた後も、彼を標的にした暗殺の企てが止むことはなかった。
2017年9月6日、トランプ氏が支持を訴えるためにノースダコタ州マンダン(Mandan)の集会を訪れた際、グレゴリー・リー・ラインガング(Gregory Lee Leingang)という男が、地元の製油所からフォークリフトを盗み出した。男は重機を運転し、大統領の車列に直接衝突させようと目論んだが、フォークリフトが製油所内で立ち往生し、計画は未遂に終わった。ラインガングは車両を捨てて逃走したが、間もなく警察に身柄を確保された。
取り調べに対し、ラインガングは驚くべき供述を行った。検察の記録によれば、当初は単なる車両窃盗と思われていたが、男は「大統領の殺害」が真の目的であったと認めた。盗んだフォークリフトで、大統領専用の重装甲車(ビースト)を横転させる計画だったという。ラインガングは襲撃未遂や窃盗などの罪で起訴され、弁護側は「深刻な精神的危機」に直面していたと主張。最終的に米裁判所は、彼に禁固20年の実刑判決を言い渡した。
物理的な衝突だけでなく、目に見えない「生物兵器」の脅威も後を絶たなかった。FBIと司法省の発表によれば、2018年10月1日、トランプ氏宛てにリシンの原料となるトウゴマ(castor beans)が同封された封筒が届いた。当初は致命的な毒素である「リシン」そのものと誤認されたが、幸いにもホワイトハウスに到達する前に郵便検閲施設で阻止された。同時期、国防総省にも「ジャックとミサイルの豆の粉(Jack and the Missile Bean Stock Powder)」という奇妙な文言が書かれた同様の封筒が複数届いていた。
2日後の10月3日、FBIはユタ州で元海軍兵のウィリアム・クライド・アレン3世(William Clyde Allen III)を逮捕。大統領および政府職員への脅迫状送付など計6つの罪で起訴された。アレンはすべての起訴内容を否認し、精神鑑定と治療を受けた。この一連の騒動は2022年1月25日、裁判所がすべての起訴を取り下げたことで終結した。
2020年、大統領選が近づくにつれ、政治的緊張は再び沸点に達した。シークレットサービスの記録によれば、同年8月10日、ホワイトハウスのブリーフィングルームでトランプ氏が記者会見を行っていた際、突然エージェントが割り込み、彼を緊急退避させた。その後、ホワイトハウスのフェンス外で武装した男が法執行官に撃たれたことが判明。安全上の懸念から会見が中断されたのだ。
同年9月には、より実害に近い毒物書簡事件が発生した。司法省の起訴状によると、カナダ国籍のパスカル・セシル・ヴェロニク・フェリエ(Pascale Cécile Véronique Ferrier)が、ニューヨーク州バッファローからカナダへ越境しようとした際に逮捕された。調査の結果、フェリエは実際にリシンを含有した手紙をトランプ氏に送っていたことが判明。手紙の中で彼女はトランプ氏を「醜い暴君のピエロ(ugly tyrant clown)」と罵倒し、大統領選からの撤退を強要していた。2023年8月17日、連邦裁判所はフェリエに対し、生物兵器関連の罪などで禁固約22年の実刑判決を言い渡した。
頭部への直撃寸前、2024年 ペンシルベニア州での暗殺未遂 2024年、トランプ氏が2期目のホワイトハウス返り咲きを目指す中、米国の歴史において最も凄惨な選挙暗殺未遂事件が発生した。7月13日、ペンシルベニア州バトラー(Butler)で開催された大規模な屋外集会にて、トランプ氏を標的にした重大な銃撃事件が起きたのだ。20歳の銃撃犯トーマス・クルックス(Thomas Crooks)は、会場近くの屋根の上に潜伏し、演説中のトランプ氏に向けてAR-15スタイルのライフルで8発の銃弾を放った。
現場の映像とシークレットサービス(SS)の事後報告によれば、銃弾の1発がトランプ氏の右耳上部をかすめた。トランプ氏は即座に耳を押さえて屈み込み、SSのエージェントたちが一斉に彼に飛びつき、肉壁となって盾を作った。この襲撃でトランプ氏は命を取り留めたものの、会場では取り返しのつかない悲劇が起きた。クルックスの乱射により、聴衆の一人であった義勇消防士のコーリー・コンペラトーレ(Corey Comperatore)氏が犠牲となり、他に2人が重傷を負った。直後、SSの対狙撃部隊(カウンター・スナイパー・チーム)が応戦し、クルックスはその場で射殺された。
世界を震撼させた「バトラー暗殺未遂事件」は、米政界に激震を走らせた。警備体制の不備に対する激しい非難が巻き起こり、当時のシークレットサービス局長キンバリー・チータイル(Kimberly Cheatle)氏は辞任に追い込まれた。連邦議会とFBIは直ちに複数の調査を開始し、この事件を政治的暗殺未遂および国内テロ行為と断定した。
繰り返される脅威、ゴルフ場での狙撃計画と終身刑の判決 バトラーの事件からわずか2ヶ月後、暗殺の暗雲は再びトランプ氏を襲った。FBIとフロリダ州警察の記録によると、2024年9月15日、フロリダ州ウェストパームビーチのトランプ・インターナショナル・ゴルフ・クラブでトランプ氏がプレー中、SSのエージェントがコース脇の茂みにライフルを構えた男を発見した。エージェントが即座に発砲すると、男は武器を捨てて車で逃走したが、ほどなくして警察に身柄を確保された。
司法省の起訴状によれば、容疑者の名前はライアン・ラウス(Ryan Routh)。当局の調査により、ラウスが元大統領の殺害を企てていたことが確認された。2025年4月7日に公開された起訴状では、ラウスが2024年2月の時点で暗殺を計画し、メキシコ在住の「ラミロ」と名乗る共犯者がいたという衝撃的な詳細も明らかになった。連邦裁判所での公判は2025年9月8日に始まり、23日に陪審員はすべての罪状について有罪評決を下した。そして2026年2月4日、裁判所はラウスに対し、終身刑という重い判決を言い渡した。
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2024年の選挙戦最終盤になっても、警備の緊張は続いた。カリフォルニア州リバーサイド郡警察の発表によると、10月12日にコーチェラ(Coachella)で開催されたトランプ氏の集会検問所付近で、不審な男が逮捕された。男は2丁の銃と弾薬を所持し、複数の異なる名前のパスポートを保有していたほか、偽造ナンバープレートをつけた未登録車両を運転していた。警察によって脅威は未然に排除されたものの、男は同日中に5000ドルの保釈金を支払い釈放されており、不可解な謎を残している。
国際社会から伸びる「暗殺者」の手、イランによる報復の脅威 アメリカ国内の「一匹狼(ローンウルフ)」による犯行だけでなく、国際勢力による暗殺の魔の手も密かにトランプ氏へと伸びている。アメリカ平和研究所(USIP)の報告書によれば、イランは1979年の革命以来40年間にわたり、アジア、欧州、北米、南米の4大陸で多くの敵対者を暗殺してきた。特に2020年、トランプ氏の命により米軍のドローンがイラン革命防衛隊(IRGC)のカセム・ソレイマニ司令官を殺害して以来、イランはトランプ氏への執拗な復讐計画を練り続けてきた。2024年10月、バイデン政権は公式ルートを通じてイランに対し、トランプ氏を標的とした報復的な暗殺の企ては「戦争行為」とみなすと厳重に警告している。
アメリカ司法省の資料は、この国際的な陰謀を裏付けている。2024年7月12日、イランと繋がりのあるパキスタン国籍のアシフ・マーチャント(Asif Merchant)被告がテキサス州ヒューストンで逮捕された。被告はIRGCに代わって実行犯を募り、トランプ氏の暗殺を企てた罪に問われている。劇的なことに、被告が勧誘した人物の一人はFBIの協力者であった。ニューヨーク連邦裁判所の記録によれば、2026年3月6日、マーチャント被告はトランプ氏暗殺を狙った殺し屋雇用の陰謀に関与したとして有罪判決を受けた。公判で被告は、テヘランにいる家族を守るために強制されたと弁明したが、イラン政府は関与を公式に否定している。
さらに司法省が2024年11月8日に発表したプレスリリースによると、当局はアフガニスタン国籍のファルハド・シャケリ(Farhad Shakeri)容疑者と、カーライル・リベラ(Carlisle Rivera)、ジョナサン・ロードホルト(Jonathan Loadholt)の両被告を起訴した。3人はソレイマニ司令官殺害の報復として、IRGCが指示した別の殺し屋雇用の陰謀に関与した疑いが持たれている。起訴状によると、シャケリ容疑者はFBIの潜入捜査官に対し、IRGCの幹部から「他の任務を棚上げにし、トランプ氏の暗殺計画に専念せよ」と督促されたことを明かしたという。リベラ、ロードホルト両被告は2024年11月に拘束され、2026年1月に有罪判決を受けたが、主犯格のシャケリ容疑者は現在も逃亡中で、イラン国内に潜伏しているとみられる。
そして今回の「ホワイトハウス記者夕食会(White House Correspondents' Dinner)」での銃撃事件は、シークレットサービス(SS)に最大の緊張を強いることとなった。現場にはトランプ氏をはじめ、メラニア夫人、J.D.バンス副大統領、さらには多くの閣僚が集結していたからだ。しかしトランプ氏は事件直後、自身が運営するSNS「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」で容疑者の写真や現場の監視カメラ映像を公開。再び銃口の前から無傷で生還したことを世に知らしめた。トランプ氏が直面し続ける治安上の挑戦は、アメリカ政治の二極化と過激主義が蔓延する現状を象徴する、最もリアルな写し鏡となっている。
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