台湾が長年自負してきた半導体実力による「シリコンシールド(シリコンの盾)」。しかし、その概念は20〜30年前に認識されていたものと、今も同じと言えるだろうか。
産業研究の専門家は、世界の政経情勢が激変し、米国政府の政治力が産業界に公然と介入するなか、台湾はシリコンシールドが「変質」した事実を直視すべきだと指摘する。その上で、AI時代における台湾の新たな価値を米国や世界に示すため、「シリコン・コネクション(シリコン連携)」という新たな概念への転換を提唱している。
マーク・リュウ前会長の直言、米工場建設は「顧客側の政治的動き」
2020年5月、TSMCが米国に120億ドルを投資して工場を建設すると発表した際、世界の半導体産業に激震が走った。翌2021年10月、当時のマーク・リュウ(劉徳音)会長は米タイム誌のインタビューで、米国進出の理由は「顧客側からの政治的な動き」によるものだと明言。さらに、「半導体のローカライズ(現地生産化)はサプライチェーンのレジリエンスを向上させず、むしろ低下させる可能性がある」と踏み込んだ。
リュウ氏は半導体製造の現地化を追うのではなく、米国はその強みであるシステム設計、人工知能(AI)、量子コンピューティングといった「次世代の先端技術開発に資金を投入すべきだ」と提言していた。
5年で12倍に膨れ上がった投資額、シリコンシールドの変質
2020年以降、TSMCの対米投資額は幾度も上方修正されてきた。2020年5月の120億ドルから、2022年末には400億ドル、2024年4月には650億ドルへと拡大。そして2025年3月、魏哲家(シーシー・ウェイ)会長がホワイトハウスでさらなる増資を発表したことで、累計投資額は1650億米ドル(約25兆円)に達した。
投資額の急増に伴い、アリゾナ州の工場建設計画も当初の1拠点から、2025年3月時点では6つのウェハファブ、2つの先進パッケージング工場、そして1つの研究開発(R&D)センターを含む巨大コンプレックスへと拡大している。
換言すれば、TSMCの対米投資額はわずか5年間で12倍に膨れ上がり、アリゾナに設置される先端プロセスの生産能力は増大の一途をたどっている。専門家の目には、これは台湾が誇りとしてきた「シリコンシールド」の概念が、決定的な変質を遂げたことを意味していると映っている。

劉佩真氏「TSMC米国工場の粗利益率は約10%にとどまる一方、台湾では60%超」
台湾経済研究院(TIER)の産経データベース総監、劉佩真(リウ・ペイゼン)氏は先日の講演で、台積電(TSMC)のアリゾナ投資がバイデン政権下の「1拠点」から、トランプ政権への交代を経て「上流から下流までを網羅する複合型キャンパス」へと拡大したと指摘した。 (関連記事: TSMC、魏CEO「ファウンドリーに近道なし」 インテルを強敵視、増産には年単位 | 関連記事をもっと読む )
拠点が1から6へと急増したことで、直面するのは甚大な財務面での圧力だ。劉氏によれば、台湾工場の売上高総利益率(マージン)が60%を超えるのに対し、米国工場では10%前後にとどまる可能性がある。劉氏は、将来的な台湾と米国の生産比率がどうなろうとも、「人材の分散や技術の流出(スピルオーバー)効果に留意しなければならない」と警鐘を鳴らす。

















































