TSMC対米投資12倍で「シリコンの盾」変質か、専門家が新たな対米交渉戦略を提言

2026-04-25 10:05
台湾積体電路製造(TSMC)による米アリゾナ州への投資額は5年間で12倍に拡大した。台湾の専門家は、これが「シリコンの盾」という概念が変質したことを示していると指摘する。写真は2022年7月に行われたTSMCアリゾナ州第1工場の棟上げ式の様子。(写真/TSMCのLinkedIn提供)
台湾積体電路製造(TSMC)による米アリゾナ州への投資額は5年間で12倍に拡大した。台湾の専門家は、これが「シリコンの盾」という概念が変質したことを示していると指摘する。写真は2022年7月に行われたTSMCアリゾナ州第1工場の棟上げ式の様子。(写真/TSMCのLinkedIn提供)

台湾は長らく、自らの半導体競争力がもたらす「シリコンの盾(シリコン・シールド)」を誇りとしてきた。しかし現在、その意味合いは20~30年前の認識と同じと言えるだろうか。

産業アナリストらは、世界的な政治経済情勢の激変に伴い、米国政府の政治的圧力が産業界に公然と介入する中、台湾は「シリコンの盾」の概念が既に変質した事実を直視すべきだと指摘している。同時に、「シリコン連携(シリコン・リンク)」という新たな概念を通じて、AI時代における台湾の新たな価値を米国や世界に向けて示すべきだと提唱している。

前TSMC会長・劉徳音氏「米国での工場建設は顧客の政治的動きが要因」

2020年5月、台湾積体電路製造(TSMC)が120億米ドル(約1.8兆円)を投じて米国に工場を建設すると発表し、世界の半導体産業に衝撃を与えた。その翌年の10月、当時のTSMC会長・劉徳音氏は米誌『タイム』の単独インタビューに応じ、米国での工場建設は「顧客の政治的な動き」によるものだと明言。「半導体の現地化はサプライチェーンの強靭性(レジリエンス)を高めるものではない」とし、むしろ「強靭性を低下させる」可能性さえあるとの見解を示した。

半導体製造の現地化を追求するよりも、米国は将来を見据えた先端技術の開発に資金を投じるべきだと劉氏は提言し、「米国は自らの強みであるシステム設計や人工知能(AI)、量子コンピューティングといった先端分野に注力すべきである」と語っていた。

2020年から現在に至るまで、TSMCの対米投資額は度重なる変更を経てきた。2020年5月に発表された120億米ドルを皮切りに、2022年末には400億米ドル、2024年4月には650億米ドルへと増額。さらに2025年3月には、TSMC会長・魏哲家氏がホワイトハウスで1000億米ドルの追加投資を発表し、累計投資額は1650億米ドルに達した。

対米投資額の上方修正に伴い、アリゾナ州での工場建設計画も、2020年5月に発表されたウェハー工場1棟体制から、2025年3月にはウェハー工場6棟、先端パッケージング工場2棟、そして研究開発センター1棟へと大幅に拡大された。

つまり、TSMCの対米投資額は5年間で12倍に膨れ上がり、アリゾナ州で構築予定の先端プロセス生産能力も増大し続けている。専門家の目には、こうした動きこそが、台湾が長年誇りとしてきた半導体による「シリコンの盾」の変質を意味するものと映っている。 (関連記事: TSMC、A13プロセス発表 AI需要で次世代半導体開発が加速 関連記事をもっと読む

2026年4月13日、李国鼎基金会が主催する半導体イノベーションフォーラムで講演する台湾経済研究院産経データベースのディレクター・劉佩真氏。(撮影:劉煥彦)
2026年4月13日、李国鼎基金会が主催する半導体イノベーションフォーラムで講演する台湾経済研究院産経データベースのディレクター・劉佩真氏。(写真/劉煥彦撮影)

劉佩真氏「TSMC米国工場の粗利益率は約10%にとどまる一方、台湾では60%超」

台湾経済研究院産経データベースのディレクター・劉佩真氏は先日の公開講演で、バイデン政権時代、TSMCはアリゾナ州にウェハー工場1棟のみを建設する計画だったと指摘。しかし、トランプ大統領のホワイトハウス復帰後、アリゾナ州での投資は半導体の上流から下流までを網羅する複合型パークへと変貌を遂げた。

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