巨額対米投資のTSMC、許毓仁氏が警鐘 台湾テック界はワシントンで声が弱い

2026-04-25 10:23
2025年3月、米大統領・トランプ氏はTSMC会長・魏哲家氏の同席のもと、ホワイトハウスで同社が米国で1000億ドル規模の追加投資を行うと発表した。(写真/ホワイトハウス公式サイト提供)
2025年3月、米大統領・トランプ氏はTSMC会長・魏哲家氏の同席のもと、ホワイトハウスで同社が米国で1000億ドル規模の追加投資を行うと発表した。(写真/ホワイトハウス公式サイト提供)

台湾のテクノロジー産業は長年、シリコンバレーのブランド企業から注文を受ける「黒子」に徹し、米国の政治とは距離を置く思考を維持してきた。しかし、今やそのマインドセットを転換し、米国で「政治を動かす術」を学ぶべき時が来ている。

バイデン政権からトランプ政権2期目に至るまで、米国は政策によって台湾企業の対米投資を加速させてきた。その影響は半導体のみならず、ICT(情報通信技術)産業全体にまで拡大している。かつて台湾企業の海外拠点は「顧客の要請」によって決まっていたが、現在では米国政治が及ぼす影響がかつてないほど高まっているのだ。

台湾積体電路製造(TSMC)の対米投資額の推移を見れば、その勢いは一目瞭然だ。2020年に発表された120億ドルから、2025年には累計1650億米ドルへと増大。わずか5年間で投資規模は12倍に膨れ上がっている。

2026年4月17日、台米共同制作の国際フォーラムでスピーチを行う許毓仁氏。(人工知能法律国際研究財団提供)
2026年4月17日、台米共同制作の国際フォーラムでスピーチを行う許毓仁氏。(写真/人工知能法律国際研究財団提供)

「政治を拒絶する」マインドセットからの脱却

かつて中国国民党の立法委員(比例代表選出)を務め、現在はワシントンのシンクタンク、ハドソン研究所のシニアフェローとしてテクノロジー政策や地政学を研究する許毓仁氏は、米国の政治的決断が世界のテクノロジー産業にとって無視できない力になっていると指摘する。台湾が米国に対して「ノー」と言うことが不可能である以上、企業界は直ちに意識を改革し、政治を避ける姿勢を改めるべきだと説く。

許氏は、TSMCやメディアテック(聯発科)、大手EMS5社などの巨大企業に加え、主要な産業団体(全国工業総会、全国商業総会、電電公会など)に対し、日本や韓国、欧州のグローバル企業の手法に倣うよう呼びかけている。つまり、世界の政治の中心であるワシントンに専任者を配置し、米政府各部門、連邦議員、そしてシンクタンク界隈との強固なネットワークを構築することだ。

「食卓の料理」に甘んじないための政治参加

韓国のサムスングループがワシントンで150名規模のロビー活動軍団を擁しているのに対し、TSMCの専門担当者はわずか5名にとどまっているとされる。

台湾企業が米国の政治プロセスに積極的に関与し、政策形成の過程を深く理解しなければ、米国の意思決定に台湾の声が届くことはない。政治の舞台で主体性を持って動かなければ、台湾はワシントンの政治エリートたちの「食卓に並ぶ料理(メニュー)」、すなわち一方的な利益享受の対象に転落しかねないという危機感を、許氏は強調している。

TSMCの対米投資、5年で12倍に急増

注目を集めていた「米台対等貿易協定(ART)」が、約10カ月にわたる交渉を経て、今年2月中旬に正式署名された。鄭麗君(テイ・レイクン)行政院副院長率いる交渉チームが米側と合意に達したもので、その成果は他国を凌駕する内容となっている。 (関連記事: TSMC対米投資12倍で「シリコンの盾」変質か 専門家が台湾の新戦略提示 関連記事をもっと読む

協定の内容には、対等な関税率を15%(非累積)に引き下げることや、半導体に対する米通商拡大法232条(安全保障に基づく輸入制限)の最優遇待遇の獲得が含まれる。また、台湾側による2,500億ドルの対米投資と、同額の2,500億ドルの信用保証も盛り込まれた。

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