対米巨額投資のTSMC、許毓仁氏が指摘する台湾IT陣営のロビー活動不足

2026-04-25 10:20
2025年3月、米大統領・トランプ氏はTSMC会長・魏哲家氏の同席のもと、ホワイトハウスで同社が米国で1000億ドル規模の追加投資を行うと発表した。(写真/ホワイトハウス公式サイト提供)
2025年3月、米大統領・トランプ氏はTSMC会長・魏哲家氏の同席のもと、ホワイトハウスで同社が米国で1000億ドル規模の追加投資を行うと発表した。(写真/ホワイトハウス公式サイト提供)

長らくシリコンバレーのブランド顧客からの受託生産(ファウンドリ)に専念し、米国の政治から距離を置いてきた台湾のハイテク業界だが、今やその思考の転換を迫られ、米国での「政治のゲーム」を学ぶ必要に迫られている。

バイデン政権から第2次トランプ政権に至るまで、米国の政策主導による台湾企業の対米投資のペースは加速の一途をたどっている。さらに、台湾ハイテク業界への影響は半導体のみならず、ICT(情報通信)産業全体へと波及している。かつて台湾企業の海外展開は顧客の要請によるものが主であったが、現在では米国の政治的要因による影響が日増しに強まっている。

台湾積体電路製造(TSMC)の対米投資の累積額を見れば一目瞭然だ。2020年に発表された120億ドル(約1.8兆円)から、2025年には1650億ドルへと追加投資が行われ、わずか5年間で12倍以上に膨れ上がっている。

2026年4月17日、台米共同制作の国際フォーラムでスピーチを行う許毓仁氏。(人工知能法律国際研究財団提供)
2026年4月17日、台米共同制作の国際フォーラムでスピーチを行う許毓仁氏。(写真/人工知能法律国際研究財団提供)

中国国民党の第9期比例代表立法委員(国会議員に相当)を務め、科学技術政策、地政学、台湾防衛、半導体研究を長年ウォッチしてきた、現在米ワシントンのシンクタンクであるハドソン研究所(Hudson Institute)のシニアフェロー・許毓仁氏は次のように指摘する。同氏は、米国の政治的意志決定が世界のハイテク業界にとって無視できない力となっているとし、台湾が米国に「ノー」と言えない以上、台湾の経済界は早急に発想を転換し、「政治への関与を拒む」姿勢を改めるべきだと警鐘を鳴らす。

許氏は、TSMCや聯発科技(メディアテック)、電子五哥(台湾の主要電子機器受託生産5社)などの台湾大手企業、ならびに全国工業総会(工総)、全国商業総会(商総)、台湾区電機電子工業同業公会(電電公会)などの主要経済団体に対し、日本、韓国、欧州の大手企業や主要経済団体の手法に倣うよう呼びかけている。具体的には、世界の政治の中心であるワシントンに専任者を駐在させ、米政府の各省庁、連邦議員、シンクタンク界隈と良好な関係を築くべきだと主張している。

台湾は米国の政治プロセスに参画し、政策形成の過程を理解することで、米側の意志決定プロセスにおいて台湾経済界の声が確実に届くようにしなければならない。そうして初めて、台湾が「ワシントン政界の食卓に並ぶ料理」に転落するのを防ぐことができるのだ。

TSMCの対米投資額、わずか5年で12倍に拡大

大きな注目を集めた「台米相互貿易協定(ART)」は、台湾行政院副院長・鄭麗君氏を筆頭とする台湾側の交渉チームが米側と10カ月間の交渉を重ねた末、今年2月中旬にようやく署名に至った。台湾側は、相互の関税率を15%に引き下げて二重課税を回避することや、半導体分野での通商拡大法232条の最恵国待遇の獲得、対米投資2500億ドルおよび2500億ドルの信用保証を取り付けるなど、他国を凌駕する成果を上げている。 (関連記事: TSMC対米投資12倍で「シリコンの盾」変質か、専門家が新たな対米交渉戦略を提言 関連記事をもっと読む

双方が合意した2500億ドルの対米投資枠には、TSMCがすでに公約している対米累積投資額1650億ドルが含まれている。すなわち、TSMC単独で2500億ドルのうちの約3分の2を占めている計算になる。

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