【論評】AIが資金を吸い尽くす怪物に──TSMCを除いたとき、台湾が直面する2つの根本的な問い

2026-04-30 18:11
TSMCは資金、人材、資源など、台湾のあらゆるレベルにおいて「磁石のような吸引効果」を生み出している。(写真:AP通信)
TSMCは資金、人材、資源など、台湾のあらゆるレベルにおいて「磁石のような吸引効果」を生み出している。(写真:AP通信)

4月27日、台湾株式市場の加権指数はTSMCに牽引され、一気に4万ポイントの大台を突破した。この前代未聞の株高は、全土が富の祝祭に沸いているかのように見える。しかし、その熱狂の陰には、国内のあらゆる資源が「AI」という巨大な産業に容赦なく吸い込まれているという不安な現実が潜んでいる。

AI関連株に投資した者は莫大な利益を手にし、TSMC社員に代表されるAI関連従事者の待遇も急上昇している。TSMCの新人エンジニアの年収は、いまや一般的な大卒初任給の4倍から5倍に達する。同社は台湾における理系エリートをほぼ吸収し尽くしており、「AI関連」の恩恵にあずかる層は未曾有の繁栄を享受している。だが一方で、「AIと全く無縁の人々」はどうなるのだろうか。

政治家は「AIが台湾にもたらす繁栄」を高らかに謳うだけでなく、より鋭い本質的な問題に誠実に向き合わなければならない。すなわち「AIを取り除いた後、台湾には一体何が残るのか」「AIの恩恵を受けられない人々はどのような生活を送っているのか」「AIに依存しない台湾経済の真の姿とはどのようなものか」という問いである。

これは決して大げさな煽りではない。現在の台湾社会において進行している「K字型」の経済格差を示す、最もリアルな実態である。李鴻源・前内政部長は最近、これを「台湾病」と呼び、経済学における「オランダ病」(特定産業の急成長が他産業を衰退させる現象)に似た構造的リスクであると率直に指摘した。TSMCが極端な成功を収めた結果、優れた人材、資源、資金、土地、電力が一極に集中し、その裏で静かに進行する伝統産業や中小企業の崩壊が覆い隠されているのだ。

資本市場:少数の熱狂と多数の沈黙

4月27日に加権指数が4万ポイントを突破したことで、株式市場の熱狂は頂点に達した。TSMCの株価は2330台湾元という最高値を記録し、加権指数に占める同社のウェイトは実に44.3%に達している。市場の上昇は、ほぼTSMC一社の力によって主導されている状態だ。

しかし、こうした輝かしい相場を牽引する力学の背後には、極端にバランスを欠いた投機的な雰囲気が漂っている。一部のAI関連企業の株価収益率(PER)は500倍を突破しており、株式市場は「投資」の本来の目的から乖離し、短期的な投機が行われる場へと変貌しつつある。上場・店頭公開から52週以上経過した1870銘柄のうち、過半数を超える1021銘柄がいまだに過去1年間の平均線(年線)を下回って低迷している。AI関連株を保有する投資家が巨額の利益を上げる一方で、伝統産業の株式を持つ投資家の多くは、過去1年間損失を抱えたままである。

ここで本質的な問いを立ててみたい。仮にTSMCとすべてのAI関連銘柄を株式市場から除外したとすれば、台湾市場のパフォーマンスはどう評価されるだろうか。 (関連記事: 出光丸がホルムズ海峡通過、名古屋へ 通行料なしで実現、イラン側は「真の友情」 関連記事をもっと読む

結論から言えば、惨憺たる状況が露わになるだろう。現在、TSMC一社だけで加権指数の約44.3%を牽引しており、これを除外すれば4万ポイントという指数は瞬時に半減する。さらに、鴻海(ホンハイ)精密工業、広達電脳(クアンタ・コンピュータ)、台達電子工業(デルタ電子)、聯発科技(メディアテック)といった広義のAIサプライチェーン企業まで除外した場合、これらの寄与度は市場全体の6割を超える。後に残されるのは、取引が閑散とし、PERが低迷し、資金が流出した伝統産業や中小企業のリアルな姿である。「世界で最も魅力的なAI概念市場」は、瞬く間に成長の乏しい平凡な中小型市場へと転落するのだ。過半数の企業が年線を下回っている事実が示すように、過去1年の「強気相場」は、実際にはごく一部の人間だけを照らしていたに過ぎない。

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