鄭麗文氏の北京訪問は「先見の明」だったのか 米中首脳会談後の台湾に活路と専門家が指摘 トランプ米大統領は14日、北京の人民大会堂で中国の習近平国家主席と会談した。米大統領の訪中は約9年ぶり。共同記者会見や共同声明の発表は見送られたが、今後の米中関係を「建設的で戦略的な安定関係」へ導く方針が確認され、両国関係の事実上の雪解けを象徴する動きとなった。
台湾の軍事専門家は、野党・国民党の鄭麗文主席がトランプ氏に先立って北京を訪問したことについて、台湾に平和と対話の選択肢を残したと評価している。「抗中保台(中国に対抗し台湾を守る)」という既存の路線以外に、中台関係や米中台の三者関係において台湾にとって最も有利な路線へ調整できる可能性を示すものだとの見方を示した。
台湾の選択肢を広げた野党主席の訪中 軍事専門家の邱世卿氏は台湾メディア「風傳媒」の単独インタビューに応じ、今回の米中首脳会談の動向から、将来の新たな米中枠組みにおいて台湾の既存路線である「抗中保台」が通用するとは限らないと指摘。「現在の国際的な現実が明らかになった」と述べた。
邱氏は、鄭氏の訪中や武器調達を巡る国民党内の意見の相違などを考慮せず長期的な視点に立てば、今回の訪中は台湾に新たな方向性をもたらしたと説明。「必ずしもその方向に進むとは限らないが、少なくとも選択肢が一つ増えたことになる」と語った。
トランプ氏の訪中が今年の統一地方選挙(九種類の公職を同日実施する「九合一選挙」)や2028年の総統・立法委員選挙に与える影響については「現時点では予測できない」としつつも、トランプ氏の訪中がもたらした政治的な基調と、鄭氏と習氏の会談における基調は一致しているとの見方を示した。
また、先の鄭・習会談や今回の米中首脳会談と、立法院で可決された7800億台湾ドル規模の武器調達予算との関連について、邱氏は「武器調達を巡る論争は、台湾人の極度の自信のなさを反映している」と指摘。「ある意味で、戦争に対する恐怖が、理性や自らの将来に対する深い思考に打ち勝ってしまった結果だ」と分析した。
武器調達予算は成立したものの、台湾の有権者が戦争への恐怖を払拭して初めて、台湾の将来についてより深く議論できるようになると主張。それが、与党・民進党などが醸成してきた将来への不安を国民党や無党派層が打ち破る手助けになるとし、「鄭氏が持ち帰ったものは、恐怖を打破し、次世代の未来についてよりオープンに議論するための機会だ」と評価した。
2026年の会談で握手を交わす国民党の鄭麗文主席と中国の習近平国家主席。(中央社)
米中首脳会談が与党・民進党に与える影響 過去のオバマ政権やバイデン政権などでは、米大統領や政府要人が訪中する際、米国側から事前に台湾の国家安全保障チームに対して事前ブリーフィングが行われていたという。台湾側も心構えができ、その情報がメディアなどを通じて社会に伝わることで世論を安定させる効果があった。
しかし公開されている情報を見る限り、今回のトランプ氏の訪中について、米国側は頼清徳総統や民進党政権の安全保障担当幹部に事前ブリーフィングを行っていないとみられる。邱氏は「米中関係や国際情勢の誤判を招きかねない」と懸念を示し、事前説明がなかった以上、民進党政権は米国に対して事後の詳細な説明を求めるべきだと提言した。
さらに、民進党の強硬支持層や独立派にとっては、米国が非公開の場で将来の「台湾独立」路線に対してより高いハードルを設けたのではないかとの懸念があると推測。「独立反対」や「独立を支持しない」といった従来の表現が使われなかったとしても、「今後の台湾独立に関する言説の構築において不利に働く」との見方を示した。
北京の天壇を視察するトランプ米大統領(右)と習近平国家主席。(AP通信)
多極化へ向かう世界秩序 邱氏は同メディアに対し、台湾の視点から離れて国際的な視点でトランプ氏の訪中を見れば、世界秩序が米国の「一極体制」から「多極化」へと徐々に移行していることが浮き彫りになったと指摘。「好むと好まざるとにかかわらず、現在の世界構造がその方向へ変化していることを認めざるを得ない」と語った。
多極的な世界秩序への移行について、邱氏は「好ましいことかもしれない」と評価する。米国が世界最強の国家として君臨してきた期間も世界から戦争は減らず、動乱や地政学的課題など多くの重大問題が適切に解決されてこなかったためだという。
既存の大国が新興大国の台頭を阻み戦争に発展する「ツキディデスの罠」に米中が陥るか否かについて習氏が会談で言及したことに関連し、邱氏は楽観的な見方を示した。今回の米中首脳会談の段取りや雰囲気から「明らかにこの罠から抜け出している」とし、「だからこそ習氏も修辞的な問いかけの形で言及したのだろう」と分析した。
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