トランプ米大統領が任期終了の2029年1月までに、台湾の半導体生産能力の4〜5割を米国に移転させると発言したことを受け、アジア太平洋商工総会の邱達生事務局長は「不可能だと今すぐ保証できる」と言い切った。川普の発言は実質より宣伝の意味合いが強いとの見方を示した。
一方、長年にわたり台湾の対外経済交渉を主導してきた元行政院政務委員の鄧振中氏は、世界の半導体産業で最も注目を集め、その動向が業界の指針となるTSMCに対し、ワシントンでのロビー活動を強化し、政策的な優遇措置を確保すべきだと提言した。

バイデン政権は「アメとムチ」、トランプ政権は「ムチ」のみ
国立政治大学台湾安全研究センターは18日、「トランプ・習近平会談:米中台の新章」と題する座談会を開催した。トランプ氏が16日放送の米FOXニュースのインタビューで、任期終了前に台湾の半導体生産能力の4〜5割を米国に移転させたいと述べたことに対し、出席した経済専門家からは実現性を疑問視する声が相次いだ。
アジア太平洋商工総会の邱達生事務局長は座談会で、バイデン前政権がCHIPS法に基づく補助金という「アメ」を用いてTSMCのアリゾナ州への投資を誘致したのに対し、トランプ政権は「アメ」を撤回し、直接「ムチ」で圧力をかけていると指摘した。
TSMC創業者の張忠謀氏はかねてから、米国での生産コストは台湾よりはるかに高く、経済効果に見合わないと述べていた。しかしその後、主要な消費市場への近接など様々な要因から、TSMCの海外展開戦略は大きく転換している。

アジア企業の米国投資には文化的な壁
邱氏は、アジア企業が米国に進出した際に直面する文化的な衝突について言及した。日本の自動車メーカーによる米工場買収後、日米間の価値観の衝突が鮮明になった様子を描いた1986年のハリウッド映画「ガン・ホー」や、中国のガラス大手・福耀集団の米進出を追った2019年のドキュメンタリー映画「アメリカン・ファクトリー」を例に挙げ、アジア企業が米国で投資を行うことには困難が山積していると強調した。
「トランプ氏がFOXニュースで述べた半導体生産能力4〜5割の移転は不可能だと、今すぐ保証できる」と邱氏は言い切った。半導体業界の有識者との議論を踏まえた上での発言であり、トランプ氏の発言は世論調査での支持獲得には効果的でも、実質的な実現可能性は極めて低いと強調した。

TSMCに対しワシントンでのロビー活動強化を提言
一方、長年にわたり台湾の対外経済貿易交渉を主導してきた元行政院政務委員の鄧振中氏は、米国がTSMCに対して継続的な投資を求めている現状を踏まえ、ワシントンでの政治的ロビー活動を強化すべきだと提言した。
鄧氏は、マイクロソフトやインテル、アマゾンなど米国の巨大IT企業でさえ、ワシントンに大規模なロビイスト部隊を擁し、政府機関や議会と密接に関わることで自社の政策的利益を確保していると説明した。「米国内の大手企業でさえそうしているのだから、外国企業であるTSMCはなおさらそうすべきだ」との見方を示した。
鄧氏はさらに、「今後より多くの台湾企業が米国に投資するようになる中で、政治的ロビー活動をコストとして当初から見込むべきだ。自ら働きかけなければ政策的な優遇措置は得られないのが米国の文化だ」と指摘した。
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編集:佐野華美 (関連記事: 【論評】習近平氏の「台湾攻撃」発言が突きつけた現実 米中首脳会談後、台湾はどこへ向かうのか | 関連記事をもっと読む )
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