トップ ニュース 2025年ノーベル賞受賞の坂口・北川両氏が会見 基礎科学の衰退に強い危機感、政府に長期支援を提言
2025年ノーベル賞受賞の坂口・北川両氏が会見 基礎科学の衰退に強い危機感、政府に長期支援を提言 2025年ノーベル賞受賞者の坂口志文氏と北川進氏が会見し、医療・環境分野の画期的な研究成果を報告するとともに、日本の基礎科学における資金不足と若手研究者の環境悪化に警鐘を鳴らした。(写真/FCCJ提供)
2025年のノーベル賞を受賞した坂口志文氏(生理学・医学賞、大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授)と北川進氏(化学賞、京都大学副学長・特別教授)は3日、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行った。両氏は自身の研究成果が医療や環境分野にもたらす社会的貢献を解説するとともに、日本の基礎科学研究の現状に対し強い危機感を表明。研究環境の抜本的な改善と、政府による長期的な資金支援の必要性を訴えた。
2025年ノーベル賞受賞者の坂口志文氏と北川進氏が会見し、医療・環境分野の画期的な研究成果を報告するとともに、日本の基礎科学における資金不足と若手研究者の環境悪化に警鐘を鳴らした。(写真/FCCJ提供)
免疫制御と多孔性材料、社会を変える革新技術 免疫学を専門とする坂口氏は、自己免疫疾患を防ぐ役割を持つ「制御性T細胞(Tレッグ)」の発見とそのメカニズムについて詳述した。Tレッグを減少させることでがんに対する免疫応答を強化できる一方、人為的に増やすことで自己免疫疾患やアレルギー、臓器移植時の拒絶反応を抑制できると指摘。現在、がん免疫療法や自己免疫疾患の治療に向けた200以上の臨床試験が進行中であり、免疫制御による新たな医療の可能性を提示した。
一方、多孔性材料の研究で知られる北川氏は、化石燃料に依存する社会から、気体を資源として活用する社会への転換の重要性を説いた。同氏が開発した「金属有機構造体(MOF)」は、ナノスケールの空間を用いて二酸化炭素やメタンなどの特定の気体を分離、捕捉、貯蔵できる革新的な材料である。大気中の低濃度の二酸化炭素を回収するなど、環境・エネルギー課題の解決に直結する技術であり、すでに多数のスタートアップ企業を通じて社会実装が進められていると報告した。
基礎研究の「20年スパン」を阻む短期的な資金システム 会見の後半、両氏は日本の科学技術の衰退に対する厳しい見解を示した。基礎科学の研究には10年から20年という長期的な視野が必要であるにもかかわらず、日本の現在の資金システムは5年程度の短期的な成果を求める傾向にあると指摘。豊富な資金を背景に長期的な基礎研究への投資を拡大している中国や、日本と同規模の国内総生産(GDP)でありながら医療技術への支援が日本を大きく上回るドイツを引き合いに出し、日本政府による基礎科学への長期投資の欠如に警鐘を鳴らした。
次世代研究者の育成と生成AIの限界 さらに、次世代を担う若手研究者の育成環境についても課題を挙げた。現在の日本の若手研究者は業務に追われ、十分な研究時間を確保できていない。また、シンガポールなどの海外と比較して給与水準や待遇面で見劣りしており、優秀な人材がアカデミアを敬遠する要因になっていると分析した。
質疑応答で生成AIの活用について問われると、両氏はデータ収集や物質合成の加速において極めて有用なツールであると評価しつつも、「ゼロから新しい概念を生み出し、論理を構築するプロセスは人間の思考に依存する」との認識で一致した。最後に両氏は、日本の将来的な生き残りを懸けて、政府による確固たる支援体制の構築と、若手が活躍できる研究環境の整備が急務であると結んだ。
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