トップ ニュース 米国の国際政治学者「米国はイラン戦争に勝てない」 中東での消耗に「中国は有利」と分析
米国の国際政治学者「米国はイラン戦争に勝てない」 中東での消耗に「中国は有利」と分析 米国大統領のドナルド・トランプ氏がイランに対する軍事行動を承認し、中東の火薬庫に火をつけた。米国の著名な学者であるジョン・ミアシャイマー氏は、米国が最終的に勝利することは困難であり、トランプ氏が円満な結末を迎えることはないとの見方を示した。(写真/AP通信提供)
国際関係論の巨頭として知られるシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授はこのほど、米国・イスラエルによる対イラン戦争について見解を述べた。同氏は、米国がいかなる意味でもこの戦争に勝利することは不可能であり、イラン側は「生き残ること」ができれば勝利と見なせると指摘。米国がウクライナだけでなく中東にも足止めされ、武器弾薬を大量に消耗させている現状に対し、「中国は密かに ほくそ笑んでいるに違いない。トランプ大統領がイランで円満な結末を迎えることはないだろう」と分析した。
ミアシャイマー氏は、ニュージャージー州高等裁判所の元判事アンドリュー・ナポリターノ氏がホストを務めるYouTube番組『Judging Freedom』に出演し、緊迫するイラン情勢について語った。
ミアシャイマー氏は、この戦争を考察する上で「我々の目標は何か」「目標達成のために何をすべきか」を自問する必要があると述べた。つまり、米国とイスラエルにとっての「勝利」の定義と、イランにとっての「勝利」の定義、それぞれの最終目標とその達成可能性を問い直すべきだという。
同氏の判断によれば、この枠組みで見ると米国側の目標達成は根本的に不可能であり、意味のある形での勝利は望めない。一方で、イラン側は生存し続けることができれば勝利であり、同氏はそれが可能であると見ている。「これらすべてが、我々が極めて困難な泥沼に陥っていることを示している」とミアシャイマー氏は警告した。
シカゴ大学政治学部教授のミアシャイマー氏(John Mearsheimer)は国際関係学の重鎮である。(写真/顔麟宇撮影)
イスラエルが米国を戦争へ引きずり込む ミアシャイマー氏は、現在の事態について「イスラエルがハンドルを握っている」と表現。イスラエルは2024年に二度にわたって当時のバイデン政権を対イラン戦に誘い込もうとしたと指摘した。一度目は2024年4月、シリアのダマスカスにあるイラン大使館を攻撃。二度目は同年10月、テヘラン市内でパレスチナの指導者を殺害した事件である。
同氏によれば、これら二つの攻撃はいずれもイスラエルとイランのミサイル応酬を招いた。イスラエル側の狙いはバイデン政権を戦争に巻き込むことにあったが、当時のバイデン政権はイスラエルへの防衛協力に留まり、イラン本土への攻撃に関与しないという賢明な判断を下したという。
しかし、ミアシャイマー氏は現トランプ政権の対応を対照的に挙げた。「トランプ政権はイスラエルの防衛に留まらず、イラン本土への攻撃に二度にわたり直接関与している。2025年6月の『12日間戦争』を覚えているだろうか。同年6月22日、米国はイランを爆撃した。そして現在、我々はイランに対する爆撃作戦に全面的に巻き込まれている。2024年のバイデン政権は、イスラエルの誘いを退け参戦を回避したが、今は状況が異なる」
(関連記事:
イラン情勢下でも米中首脳会談へ調整続くか 中国の王毅外相「高層交流は議題に」
|
関連記事をもっと読む
)
2026年3月1日、イランのミサイルによるイスラエルのテルアビブ攻撃後、被害を受けたマンションの瓦礫の中で捜索・救助活動を行うイスラエル後方軍司令部(Home Front Command)の隊員ら。(写真/AP通信提供)
米国はイラン問題に足止めされ、弾薬は底をつく ミアシャイマー氏は、今回の対イラン軍事行動には「国内法上の正当性も、国際法上の正当性も存在しない」と断じる。「これについては、ほぼすべての専門家が同意するだろう。しかし、トランプ大統領は国際法も米国の国内法も意に介さない。彼は単独主義者であり、思うがままに行動する。彼にとって法律とは、不都合であれば無視しても構わないものなのだ」と批判した。
トランプ大統領はこの戦争が「4週間から5週間」で終結する可能性に触れているが、ミアシャイマー氏はさらに長期化すると予想している。「この戦争は米国に莫大な資金を費じさせることになる。さらに、我々の兵器在庫への影響はどうなるのか。どれほどの規模の在庫が浪費されるのか。それがウクライナ戦争、さらには東アジアで起こり得る中国との紛争に、どのような結果をもたらすかを考えなければならない」と警鐘を鳴らした。
中国はイラン支援に余念がなく、米国の消耗を歓迎 ミアシャイマー氏は、米国の現状を中国が歓迎していると指摘する。「中国は暗にほくそ笑んでいるはずだ。米国がウクライナだけでなく中東でも足止めされ、大量の弾薬を消耗しているからだ。今の米国には強固な製造業の基盤がなく、これほど激しい消耗を容易に補填することはできない」
さらに同氏は、米国がイランに親米政権を樹立することは「白昼夢(あり得ない幻想)」に過ぎないと断言した。「トランプ政権やイスラエルはそう考えているかもしれないが、決して実現しない。したがって、中国は過度に心配する必要はない。テヘランでどの勢力が政権を握ろうとも、米国に対しては敵対的な姿勢をとるだろう。後継政権が米国に従順になると考えるのは愚かな妄想だ。それどころか、中国が今後もあらゆる手段を講じてイラン政権を支援し、将来的な米国の圧力に抗しうる能力を維持させることは疑いようがない」
(関連記事:
イラン情勢下でも米中首脳会談へ調整続くか 中国の王毅外相「高層交流は議題に」
|
関連記事をもっと読む
)
米国が中東の戦場に踏み込む状況を目の当たりにし、ミアシャイマー氏は中国が内心ほくそ笑んでいるはずだと指摘する。写真は昨年、韓国・釜山で会談した米国のドナルド・トランプ氏と中国の習近平国家主席。(写真/AP通信提供)
イスラエルの動機と目標 ミアシャイマー氏は、イスラエルが「政権交代」を明確な目標に掲げていると指摘する。「弾道ミサイルの根絶や、核濃縮能力の完全な排除、さらにはハマスやヒズボラ、フーシ派への支援能力を断つことが語られている。しかし、これらは政権交代を実現しない限り、何一つ達成することはできない」
同氏によれば、イスラエルが今この時期の攻撃を急ぐのは、今が「チャンスの窓」であることを理解しているからだという。「時間が経てば経つほど、イランのミサイルやドローンの在庫は拡大し、攻撃に踏み切ればイスラエル側も甚大な被害を受けることになる。だからこそ、米国の後ろ盾がある今のうちに動くべきだと考えているのだ」
しかし、ミアシャイマー氏はこう付け加える。「結局のところ、イランの新政権が自らミサイルや核濃縮を放棄し、フーシ派やハマスへの支援を止めると考える理由はどこにもない。つまり、イスラエルがいかなる意味でもこの戦争に勝利する術はなく、イラン側は耐え抜きさえすればよいのである」
イランの核武装リスクが大幅に増大 ミアシャイマー氏はさらに、仮定の話として警鐘を鳴らす。「仮に米国が今後1、2週間のうちに大規模な攻撃を仕掛け、イランのミサイルやドローンをすべて破壊したとしよう。実際にはあり得ないことだが、仮に米国がそれで勝利を宣言したとして、その先に何が待っているのか。
答えは、イラン政権は依然として揺るがず、再びミサイルシステムを再建し、核濃縮を再開し、ドローン戦力を立て直すということだ。これでは戦争に勝ったとは言えない。イランという国も政権も消え去ることはなく、たとえ倒れたとしても、次に誕生するのは決して親米政権ではないからだ」
ミアシャイマー氏は、イランの最高指導者ハメネイ師が死亡した場合、イランは核兵器開発を加速させる可能性があると分析している。(写真/AP通信提供)
さらに同氏は、イランの新政権が核兵器開発へさらに傾斜する可能性を指摘する。「殺害されたイランの最高指導者ハメイニ師は、実は核武装には消極的だった。彼はイランの核武装を阻む主要な壁となっていたのだ。しかし今、ハメイニ師が不在となり、この戦争の推移を鑑みれば、イランが核開発へと突き進む動機と潜在能力は以前よりもはるかに大きくなる。この問題は、将来的に今よりも深刻化することは疑いようがない」
フーシ派にすら勝てぬ米国に、イラン打倒は可能か ミアシャイマー氏は、トランプ大統領の過去の決断を引き合いに出し、疑問を呈する。「トランプ氏は2025年1月にホワイトハウス入りした後、同年3月にはフーシ派の完全消滅を宣言し、戦火を交えた。しかし、わずか2か月後の5月には断念している。フーシ派すら打倒できなかった彼に、果たしてイランを屈服させることなどできるのだろうか」
同氏は、米国がイスラエルと密接に結びついている以上、トランプ氏が簡単にイラン戦線から手を引けるかは不透明だと指摘する。「そこで問題となるのは、トランプ氏が次に何をするかだ。地上部隊を投入するのか。それは事態をさらに悪化させるだけであり、彼は真に袋小路に追い込まれている」
さらにミアシャイマー氏は、イラン側の出方も看過できないと警鐘を鳴らす。「仮に米国がイランの解体や政権への甚大な打撃に成功したとしよう。だがイランの立場からすれば、自らの崩壊が不可避であると悟ったとき、すべてを道連れにする道を選ぶ可能性がある」
2025年5月16日、イエメンで行われた反米・反イスラエル集会で、フーシ派を支持する人々がシュプレヒコールを上げた。(写真/AP通信提供)
トランプ氏に待ち受ける「円満な結末」なき泥沼 「イランが次に取る行動は、残された弾道ミサイルやドローンを総動員し、湾岸地域の石油インフラを壊滅させることかもしれない。これは世界経済に壊滅的な打撃を与えるだろう。また、世界の原油輸送の約5分の1を担うホルムズ海峡を長期封鎖すれば、世界規模のエネルギー危機と経済混乱を引き起こすことになる」とミアシャイマー氏は予測する。
同氏によれば、イラン側もイスラエル側も、現在は互いに「生存の脅威」に直面しているとの認識に立っているという。「このような状況下で、いかにして緊張を緩和させていくのか。ある時点で双方がその動機を持つかもしれないが、もし緊張緩和に転じれば、それは米国の敗北を意味する」
ミアシャイマー氏は最後にこう結んだ。「トランプ大統領はイランを打ち負かせるという賭けに出ている。これはイランの核施設3か所を爆撃した昨年6月22日の作戦とは、次元の異なる話だ。トランプ氏は地上部隊を派遣することなく『政権交代』を成し遂げようとしているが、仮にそれを実現したとして、米国に一体どのような利益をもたらすというのか。トランプ大統領にとっての『円満な結末(ハッピーエンド)』がどこにあるのか、私には到底見当たらない」
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp
編集:柄澤南
更多新聞請搜尋🔍風傳媒日文版
最新ニュース
米NFLの巨大ビジネスの実像 NYT記者がFCCJで内幕語る ニューヨーク・タイムズのスポーツビジネス記者、ケン・ベルソンが日本外国特派員協会(FCCJ)で開かれた「Book Break」に登壇し、自著『Every Day Is Sunday』について語った。ベルソンは、ジェリー・ジョーンズやロバート・クラフトらNFLチームのオーナーと、コミッショナーのロジャー・グッデルが、いかにしてNFLを文化的にも経済的にも米国最......
中国軍機が台湾周辺で異例の減少 戦略学者が読む「4つの可能性」 過去10日間のうち9日間、台湾周辺で中国軍機の活動が確認されないという極めて異例の事態が続いており、外部から注目を集めている。これに対し、淡江大学国際事務・戦略研究所の黄介正(こう・かいせい)副教授は『風傳媒(ストーム・メディア)』の取材に対し、米国のトランプ大統領が4月頃に訪中し、中国の習近平国家主席と会談する予定であることを指摘。中国側が「台湾問題を武力......
2025年ノーベル賞受賞の北川進氏と坂口志文氏が会見 研究の実用化と日本の研究環境改善を訴え 2025年にノーベル化学賞を受賞した北川進・京都大学特別教授と、ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文・大阪大学特別栄誉教授が2026年3月3日、日本記者クラブで記者会見を開いた。北川氏は多孔性金属錯体(MOF)を活用した環境・エネルギー分野での応用について、坂口氏は制御性T細胞(Tレグ)を基盤とする新たながん免疫療法やアレルギー疾患治療の可能性について語......
断交後初、台湾行政院長がWBC観戦で訪日 日本は「個人旅行」、中国は強く反発 台湾の卓栄泰(たく・えいたい)行政院長(首相に相当)が東京ドームを訪れ、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場している台湾代表を応援した。現職の行政院長が試合観戦のために訪日するのは、1972年の台日断交以来初めて。象徴的な外交上の進展と見なされる一方で、中国当局は即座に強い抗議を表明した。これに対し、日本の木原稔内閣官房長官は、卓氏の訪日を「個......
永井豪氏、創作の原点とアニメへの思い語る ファンミーティングをYouTubeで期間限定配信 アニメ展示拠点「アニメ東京ステーション」(東京都豊島区)は、漫画家の永井豪氏を招いた公開収録イベント「永井豪先生を囲むファンミーティング」の模様を、2026年3月13日から4月12日までの期間限定で公式YouTubeチャンネルにて配信する。本イベントは、フランスの「アングレーム国際漫画祭」が本年中止となったことを受け、3月13日から池袋で開催される「東京アニ......
トランプ氏「戦争は非常に早く終わる」 原油一時119ドル、原油高と選挙圧力に市場注目 米国とイランによる軍事衝突の激化を受け、原油価格が高騰し株式市場が急落する中、ドナルド・トランプ米大統領は3月9日、突如として「米軍はイランの空軍および海軍に甚大な打撃を与えた。この衝突は、当初想定していた『4週間』よりも早く終結するだろう」と宣言した。しかし、ロイター通信は、トランプ氏がいまだ「勝利」の定義を明確にしておらず、戦争の終結が具体的に何を意味す......
【台湾海峡の深層】頼清徳総統の「3つの変化」 中台関係に微妙な変化、中国も注視 台湾の頼清徳(らい・せいとく)総統は2月24日、海峡交流基金会(海基会)が主催した旧正月恒例の台湾系企業家交流イベントに出席した。頼総統はあいさつの中で中台関係に触れ、中国側を指す呼称としてあえて「中国大陸」や「大陸」という言葉を用いた。頼総統はこれまで、強い「二国論」の色合いを帯びた「中国」という呼称を多用してきたが、今回の「大陸」や「中国大陸」という表現......
イラン情勢下でも米中首脳会談へ調整続くか 中国の王毅外相「高層交流は議題に」 アメリカとイスラエルの共同作戦によるイランへの軍事打撃は、3月末に予定されているドナルド・トランプ米大統領の訪中および習近平国家主席との首脳会談に影響を与えるのか。中国の王毅外相は3月8日、今年を米中関係の「重要な年」と位置づけ、「高層級の交流日程はすでに両国のテーブルの上に置かれている」と言明した。その上で、双方がなすべきことは周到な準備を整え、適切な環境......
中国・王毅外相「台湾は80年以上前に光復」 全人代記者会見で統一方針を改めて強調 中国の全国人民代表大会(全人代)で8日、外相記者会見が開催された。北京当局が台湾海峡における衝突のリスクをどう見ているか、また統一のタイムラインやロードマップを設けているかという質問に対し、中国の王毅(おう・き)外相は「国際社会には『一つの中国』を堅持する圧倒的なコンセンサスが形成されている」と強調。その上で、「80年以上前に光復(主権回復)した台湾を、いか......
【舞台裏】台湾外交を支える「食卓外交」 ワインが切り開く意外な突破口とは 現代の外交体系の確立において、フランスは極めて重要な役割を果たしてきた。英語の「diplomacy(外交)」はフランス語の「diplomatie」に由来し、さらにその語源は「折り畳まれたもの」を意味するギリシャ語の「diploum」に遡る。これは外交特使が携える委任状を指し、後に「diploma(証書)」を経て現在の意味へと発展した。興味深いことに、中世から......
イスラエル・米軍がイランへ大規模攻撃、最高指導者ハメネイ師を殺害:中東全域で紛争長期化の懸念 日本エネルギー経済研究所・中東研究センター長の坂梨祥氏は6日、日本記者クラブで「イスラエル・米の対イラン攻撃:背景と影響」と題した講演を行った。2月28日に開始された米軍、イスラエル軍の両軍による対イラン軍事作戦と、それに伴う最高指導者ハメネイ師の殺害という未曾有の事態について、坂梨氏はその背景と今後のシナリオを多角的に分析した。作戦の背景:イラン体制の「内......
【2026 WBC】韓国が準々決勝進出 豪州を7-2で破りマイアミへ、台湾は1次ラウンド敗退 2026年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は9日夜、東京ドームで1次ラウンドの運命を決する韓国対オーストラリアの重要な一戦が行われた。この試合の結果は台湾代表の進出の成否に直結していたが、韓国が7-2でオーストラリアを破った。韓国は「5点差以上での勝利、かつ失点を2点以内に抑える」という厳しい進出条件を劇的にクリアし、マイアミで行われる準々決勝(......
ロイヤルホスト デリ、「新生活応援セット」を期間限定発売 人気洋食5種を詰め合わせ ロイヤルグループで食品事業を担うロイヤル株式会社は、家庭用フローズンミールブランド「Royal Host Deli(ロイヤルホスト デリ)」から、入学や就職、引っ越しなど新生活を迎える季節に合わせたギフト商品「新生活応援セット」を、2026年3月6日午前10時から期間限定で販売する。本セットは、環境の変化で忙しい毎日を送る人に向け、ロイヤルホストの味を通じ......
あの「廊下」も再現、麻布台ヒルズで「ルックバック展」開催 押山清高監督の「作画の執念」を体感 『風傳媒(The Storm Media)』の現地取材に基づき、東京都港区の麻布台ヒルズギャラリーで開催中の特別展「劇場アニメルックバック展―押山清高線の感情」を紹介する。本展は、劇場アニメ『ルックバック』の創作の裏側に迫る内容となっており、監督・脚本・キャラクターデザインを一手に担った押山清高氏が主催として参画している。単なる劇場アニメの紹介にとどまらず、......
【書評】野島剛『野球與棒球』(下)――深層にある絆、交錯する記憶と日台野球の未来 政治の言葉では語り尽くせない歷史の複雑さを、白球を追う人々の情熱が鮮やかに描き出す。野島剛氏の最新作『野球與棒球』は、日本統治時代に根を下ろした「野球(YAKYU)」が、戦後の荒波を経ていかにして台湾社会の記憶「棒球(BASEBALL)」へと進化したのかを辿る物語である。嘉義農林(KANO)の甲子園伝説から王貞治、そして日本で活躍する台湾人選手たちの栄光と挫......
【書評】野島剛『野球與棒球』(中)――「第三の視点」で読み解く日台野球の百年 賴清德総統が「台湾が世界に立つ決意と気魄を示した」と力説したあの瞬間、その背景には百年にわたる物語があった。ジャーナリスト・野島剛氏が10年の歳月をかけ、日台100人近い関係者への取材を通じて編み上げた『野球與棒球』。本書は単なる運動史に留まらず、野球という視点から日台の百年を再構築し、2024年の世界大会優勝に至るまでの「台湾棒球共同体」の真実を浮き彫りに......
【書評】野島剛『野球與棒球』(上)――受け継がれるDNAと台湾野球自立への歩み 2024年11月、台北ドームに響き渡った歓声は、単なるスポーツの勝利ではなかった。それは台湾が長年の歴史的呪縛から解放され、新たなステージへと踏み出した「分水嶺」とも言える瞬間だった。野島剛氏の著書『野球與棒球』において、この劇的な勝利を、台湾が日本式の模倣から独自の「棒球(ベースボール)」へと進化し、ついに本家を超越した歴史的転換点として位置づけている。本......