救出後に再び詐欺拠点へ? 台湾外交部を悩ませる「未返済」と「常連化」の実態

海外の詐欺拠点では、台湾人が東南アジアなどに誘い出され、詐欺に加担させられるケースが相次いでいる。ただ、外交部や在外公館を悩ませているのは、違法性を認識しながら渡航したとみられる事例への対応でもある。写真はカンボジアの詐欺拠点とタイ兵。(写真/AP通信提供)
海外の詐欺拠点では、台湾人が東南アジアなどに誘い出され、詐欺に加担させられるケースが相次いでいる。ただ、外交部や在外公館を悩ませているのは、違法性を認識しながら渡航したとみられる事例への対応でもある。写真はカンボジアの詐欺拠点とタイ兵。(写真/AP通信提供)

2026年の卒業シーズンを迎え、台湾の各大学で行われる就職博覧会はすでに一段落した。しかし夏休みを前に、SNS上では「海外高収入」をうたう求人広告が再び目立ち始めている。

警戒を強めているのは、詐欺対策に追われてきた検察、警察、調査機関だけではない。台湾内政部移民署の国境事務大隊も空港でプラカードを掲げ、海外求人を装った詐欺への注意を呼びかけている。さらに、台湾外交部や在外公館も対応に追われている。

外交部は2026年の冬休みと春節連休の前後に、2度にわたり警告文を発表した。海外の高収入求人情報を慎重に見極めるよう求め、家族や友人に対しても、渡航を思いとどまらせるよう呼びかけた。外交部は「自分だけは大丈夫と考えないよう強く呼びかける」としたうえで、「国民一人ひとりの自律と自重があってこそ、苦労して得たビザ免除待遇と国家イメージを守ることができる」と訴えた。

その背景には、在外公館が詐欺拠点に取り残された台湾人の救出に追われる一方で、救出後に航空券代などの立て替え金が返済されない事例が相次いでいる実態がある。

2026年4月7日、カンボジアの詐欺拠点内に掲げられたスローガン。(写真:AP通信)
海外詐欺をめぐり、外交部は「自分だけは大丈夫と考えないように」「自律と自重を」と、強い表現で国民に注意を呼びかけている。写真はカンボジアの詐欺拠点内に掲げられたスローガン。(写真/AP通信提供)

タイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスで1300人超が救出待ち

​2025年1月下旬、春節を前に、頼清徳総統は春節期間の交通輸送状況を視察した際、カンボジア、ミャンマー、タイなどへ向かう台湾人が詐欺被害に遭わないよう、桃園国際空港での注意喚起を強化するよう求めた。

春節と元宵節の後には、内政部長の劉世芳氏が省庁横断の会議を開き、これまでの横の連携を通じて関係機関の協力をさらに強化すると発表した。同年5月7日には、内政部警政署刑事警察局が外交部や在外公館と連携し、タイに職員を派遣。ミャンマーの詐欺拠点を離脱した台湾人55人を帰国させた。

ただ、55人を救出してから1年以上がたった現在も、次の大規模な救出作戦は見えていない。一方、ミャンマー国軍は2025年10月末、国内の詐欺拠点の一掃を宣言した。その後、軍事政権は兵士が「KK園区」と呼ばれる詐欺拠点に突入し、建物を爆破する映像を公開した。海外メディアによれば、数千人が拠点を離脱したとされる。

台湾側の救出作業が進まないのは、総統の関心が薄れたためなのか。事情はそれほど単純ではない。外交部の統計によると、2026年5月時点で、タイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスにおいて、在外公館が通報を受けた救出待ちの台湾人はなお1300人を超える。その多くはタイ・ミャンマー国境地帯に集中している。

事情を知る政府関係者は、政府が各方面のルートを通じて交渉を続けており、現在も複数の案件を処理していると説明する。ただし、関連作業は進行中で、まだ最終的な結論は出ていないという。

2025年5月7日、ミャンマーの詐欺拠点から救出された台湾人55人が同日早朝にタイから航空機で帰国し、刑事警察局によって事情聴取が行われた。(写真提供:刑事警察局)
2025年5月7日、外交部と警察当局は、ミャンマーの詐欺拠点に取り残されていた台湾人55人を協力して帰国させた。帰国後、刑事警察局が引き取り、調査を行った。(写真/刑事警察局提供)

「本当に被害者なのか」警察トップが指摘した実態

​東南アジアの詐欺拠点に取り残された台湾人の救出は今も続いているが、台湾国内では次第に異なる見方も出ている。
(関連記事: 「詐欺国家」の汚名返上へ!カンボジアが犯罪取締りを強化、4万8000人を送還・21万人が「自主出国」 関連記事をもっと読む

政府関係者によると、現地に渡った台湾人の中には、出発前から違法な仕事に関わることを知っていたとみられるケースもある。一部では、家族や友人も事情をある程度把握していたという。

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