米有力シンクタンクが読み解く対台湾戦略 台湾で広がる「対米不信」に警鐘 台湾最大野党・国民党の鄭麗文(てい・れいぶん) 主席はこのほど、16日間にわたる訪米日程を終えた。しかし、トランプ政権高官との面会が取りやめになったとの報道もあり、訪問の成果を疑問視する見方が台湾内外で広がった。鄭氏は帰国後の記者会見で、こうした報道について「全く事実ではない」と否定している。
一方、トランプ政権は現時点で、140億ドル規模の対台湾武器売却を承認しておらず、頼清徳総統の訪米も実現していない。さらにトランプ大統領は今週、年内に再び中国を訪問する可能性にも言及した。米国の対台湾姿勢がどこへ向かうのか、関心が高まっている。
こうした中、米シンクタンクのブルッキングス研究所とランド研究所が共同で進めた、米国の対台湾政策に関する研究報告が公表された。7人の対台湾・両岸関係の専門家が参加した同研究は、米政府の両岸政策を検証し、今後の方向性を提言するものだ。報告は、米国の主流派の中にも対台湾政策をめぐる見解の違いがあることを示すとともに、米国内で一部に存在する「戦略的撤退」論や「台湾見捨て論」が、政策論争の中でどのように位置づけられているのかも浮かび上がらせている。
台湾最大野党・国民党の鄭麗文主席は先日、米国を訪問した。現地時間8日には、シンクタンク「アジア・ソサエティ」の座談会に出席し、元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)のダニエル・ラッセル氏(右)と対談した。(写真/中央社)
米国は対台湾戦略を見直すべきか ブルッキングス研究所とランド研究所は、複数の専門家によるワークショップや論考を通じて、台湾海峡の緊張を管理するための政策の選択肢を検討してきた。参加者には、クリントン、ブッシュ、オバマ、第一次トランプ、バイデンの各政権で政策実務に関わった経験を持つ専門家も含まれており、米国の現行政策の課題と今後の方向性について、継続的な議論が行われた。
このプロジェクトを主導したのは、ブルッキングス研究所ジョン・L・ソーントン中国センター長のライアン・ハス氏と、ランド研究所中国研究センター長のジュード・ブランシェット氏だ。参加者には、米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」の軍事分析部長ジェニファー・カバナ氏、ジャーマン・マーシャル財団のボニー・グレイザー氏、外交問題評議会のデビッド・サックス氏、スタンフォード大学フーヴァー研究所のカリス・テンプルマン氏、同研究所客員研究員のマシュー・ターピン氏らが名を連ねた。
報告によれば、米国の対台湾政策の目的は、紛争を防ぐという米国の長期的利益を守り、両岸の指導者が平和的に相違を解決できる道を開くことにある。その実現にどれほど時間がかかったとしても、最終的に台湾と中国大陸の人々に受け入れられる形でなければならないという考え方だ。
米シンクタンクのブルッキングス研究所とランド研究所は3月23日、「両岸の十字路:米国の対台湾政策の道筋」と題したフォーラムを開催した。(画像/YouTubeより)
台湾で広がる「対米不信」と米国の信頼性 報告は、米国の政策論議で十分に重視されてこなかった要素として、米国の信頼性と台湾の自衛意思の関係を挙げている。世論調査では、台湾の人々の自衛意思は、米国への信頼と密接に結びついているという。
つまり、台湾の人々が国防費増額や兵役期間の延長、中国による武力行使への抵抗を支持するかどうかは、米国が台湾有事に介入すると信じているかに左右される。これは、台湾で「疑美論」と呼ばれる対米不信の広がりが、台湾の防衛努力にも影響を及ぼし得ることを意味する。
ハス氏とブランシェット氏は、米国への信頼が台湾で低下すれば、台湾自身の国防投資への意欲が弱まり、防衛上の抑止力も低下しかねないと警鐘を鳴らす。その結果、台湾社会の米国不信がさらに深まるという悪循環に陥る可能性がある。
両氏は、米国が今後この動きを慎重に管理する必要があると指摘する。これは、軍事配備や政策声明と同じく、短期的に重要な政策課題だという。
一方で報告は、米国の軍事力は外交や経済を含む政策手段に信頼性を与えるうえで不可欠だが、それ自体が政策運営の代わりになるわけではないとも指摘する。過去70年以上の米中関係を見ても、米国が軍事力を増強したからといって、中国が台湾統一への意志を放棄するとは考えにくい。このため、短期的に両岸の対立を解決することは難しいとの見方を示している。
ドナルド・トランプ米大統領。(写真/AP通信)
米国は台湾から「戦略的撤退」を行うべきか ハス氏とブランシェット氏は、他の参加者の意見を整理する中で、中国が台湾周辺および台湾内部への影響力を強めるにつれ、台湾海峡をめぐる戦略バランスが変化していると指摘した。
一部の参加者は、中国を抑止する米国の能力が低下していると強く見ており、米国にとってより現実的な選択肢は、前進を続けることではなく、戦線を縮小することだと考えている。
ただし、米国が台湾の防衛をやめ、中国とのより広範な妥協を模索すべきだとする見方は少数派にとどまる。両氏によれば、より重要な対立は、むしろ米国の主流派内部にある。米国の対台湾政策をめぐっては、「戦略的明確性」を支持する立場と、「戦略的曖昧さ」を維持すべきだとする立場が分かれているからだ。
両陣営の違いは、米国のコミットメントやシグナルを北京がどのように受け止めるかについての見立てにある。中国が米国のシグナルにどう反応するのか、より明確な証拠が示されない限り、この論争に決定的な答えは出ないと両氏は分析している。
報告は、米国が確かな軍事力に裏打ちされた外交、経済、安全保障上の政策手段を活用できれば、より有利な立場を維持できると指摘する。米国や同盟国、パートナーの役割は引き続き重要であり、米国はインド太平洋地域における軍事的プレゼンス、経済的関与、外交的活動を維持する必要があるとしている。
また、米国は台北に対して、緊張を不必要に高める行動を避けるよう助言しつつ、戦略的な支援を続ける必要がある。同時に、太平洋地域に最先端の軍事能力を配備し、紛争のコストを高めることも求められるという。
2026年5月14日、北京の天壇で写真撮影に応じるドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席。(写真/AP通信)
両岸関係の次の段階をどう描くか ハス氏は2013年から2017年まで、オバマ政権下で米国務省の外交官を務め、ホワイトハウス国家安全保障会議で中国、台湾、モンゴルを担当した。ブランシェット氏は以前、ワシントンの有力シンクタンクである戦略国際問題研究所でフリーマン中国研究チェアを務め、北京のコンファレンス・ボード中国経済・ビジネスセンターでもプロジェクトディレクターを務めた。
両氏は報告の中で、参加者の誰も、米国の現在の対台湾政策を「自動操縦」のまま維持すべきだとは主張しなかったと説明している。専門家の間で意見が分かれたのは、米国が台湾にどれだけの資源を投入すべきかという点だった。
報告はまた、北京には台湾との溝を埋めるために必要な創造力が欠けているように見えると指摘する。ただし、抑止と外交を組み合わせることで台湾海峡の平和と安定を維持できれば、将来の北京と台北の指導者が、新たな発想を積み重ね、相違を縮小し、より長期的な共存の枠組みを構築する余地も生まれるとしている。
長期的には、米国が中国大陸と台湾の新たな世代の指導者に対し、より積極的に外交を展開する必要がある。両岸関係の次の章は、ワシントン、台北、そして志を同じくするパートナーが、強まる北京の要求に迎合する誘惑を退けられるかどうかにかかっている。
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