【舞台裏】頼清徳総統のエスワティニ訪問、中国圧力回避にチャイナエアラインが全面支援

エスワティニ訪問を実現した頼清徳・台湾総統(左)。ムスワティ3世国王(右)と共同声明に署名後、抱擁を交わした。(総統府提供)
エスワティニ訪問を実現した頼清徳・台湾総統(左)。ムスワティ3世国王(右)と共同声明に署名後、抱擁を交わした。(総統府提供)

中国の圧力により出発が危ぶまれていた頼清徳台湾総統のアフリカで唯一の国交樹立国、エスワティニ訪問について、台湾の国家安全保障当局の幹部はこのほど、水面下で複数国の協力や台湾のチャイナエアライン(中華航空)の支援が機能していたことを明らかにした。エスワティニ国王ムスワティ3世の強い支持の下、同国の専用機を活用して中国の妨害を回避したという。

さらに、ムスワティ3世国王は頼氏のエスワティニ到着後、これまでの国家慶祝行事のプログラムをすべて「再現」し、花火の打ち上げや栄誉礼の儀式を改めて執り行うほどの異例の歓迎ぶりを示した。

国家安全保障の幹部によると、中国が頼氏の搭乗機の飛行を妨害することは事前に想定されており、領空通過許可の取り消しという事態についても、可能性は低いと考えながらも準備はしていたという。それであればなぜ即座に代替案を発動して出発せず、訪問を「延期」としたのか。

当局者は、中国がいったいいくつの国に圧力をかけているのか、また今後さらなる動きがあるのかを見極めるため、リスク管理の観点から「延期」を決定したと説明する。ただし、台湾側の方針としては、最初から最後まで一貫して訪問を実行する意思を持ち続けていた。

エスワティニのドラドラ副首相(左)は4月30日、「国王特使」として台湾を訪問し、頼清徳総統(右)に適切な時期でのエスワティニ訪問を要請する国王のメッセージを伝えた。(総統府提供)
エスワティニのドラドラ副首相(左)は4月30日、「国王特使」として訪台し、頼清徳氏(右)に「適切な時期」の訪問を要請した。
(台湾総統府提供)

二段構えの戦略 林佳龍氏の特使派遣と国安チームの別ルート

​事前に林佳龍外交部長(外相)を特使として同国へ派遣したことについては、頼氏の極秘訪問計画の事前確認だったのか、それとも林佳龍氏の派遣によって「頼総統はもう行かない」と中国側を欺くためだったのかという疑問が生じた。

国家安全保障の幹部は、頼氏の極秘訪問計画と林佳龍氏の特使任務は、実は二本の別ルートで進行していたと明かす。林佳龍氏の派遣は、台湾が以前から約束していたエスワティニ国家慶祝行事への参加任務を執行するためのものだった。一方、エスワティニのドラドラ副首相を先に台湾に招き、その後に頼氏が同国の専用機で出発するという流れは、国家安全保障チームが各国と水面下で展開していたもう一本のルートだったという。

頼清徳氏がアフリカの国交樹立国エスワティニを電撃訪問し、ムスワティ3世国王が出迎えた。(総統府flickr)
頼清徳氏(中央)がアフリカの国交樹立国エスワティニを電撃訪問し、ムスワティ3世国王(左)が出迎えた。(中華民国総統府ウェブサイトより)

チャイナエアラインの全面協力 台湾が過去に売却した旧型機が「大功労者」に

​国家安全保障の幹部は、今回の極秘計画で大きな役割を果たしたのはチャイナエアラインだったと強調する。頼氏が搭乗したのは、4月30日にエスワティニのドラドラ副首相が訪台した際にも使用された同国政府所属のエアバスA340-300型専用機(機体番号3DC-SDF)だ。この機体は2018年に蔡英文前総統が同国を訪問した際、ムスワティ3世国王の50歳の誕生日を祝ってチャイナエアラインから同国に売却されたものであり、近年は国王の訪台時にも使用されていた。
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興味深いのは、この機体が活躍できた理由が、その「古さ」と「タフさ」にあったという点だ。当局者は、この機体は4基のエンジンを搭載しており、現在主流の双発機とは異なる旧式の機材であると指摘する。なぜ今回、あえて旧型機が活躍することになったのか。国家安全保障の幹部は「中国が今回卑劣な手段を弄したため」と説明したうえで、台湾国安チームは複数の飛行ルートを準備する必要があり、A案がだめならB案、C案、さらにはA+案、B+案、C+案など、あらゆる事態への備えを整えていたと述べた。

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