【李忠謙のコラム】対中包囲網を崩すトランプ 台湾は「ポスト米国秩序」をどう生き抜くか

トランプ米大統領。(AP通信)
トランプ米大統領。(AP通信)

国際情勢が混迷を極めるなか、世界の注目は5月に予定されているトランプ米大統領と習近平中国国家主席による首脳会談に集まっている。だが留意すべきは、これが今年複数回見込まれる米中首脳会談の第1ラウンドに過ぎないという点だ。両首脳の会談と関係再構築は確かに注目の的だが、地政学と産業競争において最大の敵対国同士である両国が、この会談で「乱れを正す」ような建設的成果を生み出すと期待するのは、非現実的な空想に等しいと筆者は考える。

むしろ目を向けるべきは、トランプ氏が北京へ歩み寄る姿勢を見せる一方で、中国を牽制する枠組みである「日米豪印戦略対話(クアッド)」への関与を放棄しつつある点だ。この矛盾した戦略的リズムは、旧秩序の終焉を予見させる。米国が自ら築き上げた「対中包囲網」を率先して解体し、「パックス・アメリカーナ(米国の平和)」の維持すら放棄するならば、台湾はより無秩序で暴力的な未来と向き合わざるを得なくなる。

クアッドの機能不全、米大統領が欠席を選ぶとき

​南カリフォルニア大学の政治学・国際関係論教授であるデレク・グロスマン氏は、米外交専門誌『フォーリン・ポリシー』への寄稿で、「クアッド」が本来、日米豪印による多国間協調メカニズムであり、中国の拡張抑止と地域課題への対処を核心的な目的としていたと指摘する。

トランプ氏は第1期政権で、10年近く停滞していたこの枠組みを静かに復活させたが、ホワイトハウスへの返り咲きを果たして以降、事態は完全に逆の方向へ進んでいる。同氏がクアッドへの参加を拒み続けたことで、このメカニズムは首脳不在の機能不全に陥った。本来インドが主催するはずだった昨年の首脳会談は開催見送りとなり、ニューデリーはマルコ・ルビオ米国務長官の5月の訪印に合わせて4カ国外相会合を主催し、かろうじて事態の収拾を図ったのが実情だ。もしトランプ氏が今年後半にオーストラリアで開催予定の首脳会談をボイコットし、習主席との会談を優先するようなことがあれば、クアッドは地政学的に周縁化し、完全に消滅する運命にあるだろう

もちろん、クアッドという枠組みが失われても、米国は同盟国との二国間関係を維持し、従来の戦略目標を追求することは可能だ。しかしグロスマン教授は、インドのナレンドラ・モディ首相が関税問題をめぐってトランプ氏と鋭く対立し、2025年5月の印パ軍事衝突を終結させた米国の功績を認めることを拒んだ点を指摘する。

これを不満に思ったトランプ氏は、パキスタンのシャバズ・シャリフ首相との関係修復に動いた。シャリフ首相はトランプ氏に迎合するだけでなく、同氏をノーベル平和賞候補に推薦するとまで公言している。トランプ氏とモディ氏の個人的な確執は、今や米印関係における最大の障害となっている。
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日豪との関係も風雨にさらされる

​クアッドのなかで最も米国と良好な関係にあると見なされがちな日本も、グロスマン教授に言わせれば、その関係は風前の灯火である。日本も米国の関税の矛先を避けることはできず、貿易協議に入った後もトランプ氏から度重なる圧力を受け、米国との交渉の徒労感を深く味わうこととなった。15%の税率でようやく合意に達したものの、米連邦最高裁がトランプ氏の関税措置に違憲判決を下すと、同氏はすぐさま一律10%の関税措置を課すと発表した。

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