頼清徳総統、帰途は南インド洋を大きく迂回 専門家「首脳外交の新たな突破口に」

頼清徳総統がエスワティニ訪問から帰国するため、4日夜に離陸した特別機の詳細な飛行ルートが明らかになった。南インド洋を迂回飛行することで、外交上の突破に成功した形だ。(フライトレーダー24のサイトより)
頼清徳総統がエスワティニ訪問から帰国するため、4日夜に離陸した特別機の詳細な飛行ルートが明らかになった。南インド洋を迂回飛行することで、外交上の突破に成功した形だ。(フライトレーダー24のサイトより)

台湾の頼清徳総統は5日、アフリカの国交樹立国であるエスワティニへの訪問を終え、台湾に帰還した。中国の圧力による航路制限を受け、搭乗した特別機は航空機の往来が少ない南インド洋を大きく迂回するルートを飛行した。総飛行距離は約1万3000キロに達し、機体の航続距離の限界に迫るものとなった。台湾のシンクタンクである国防安全研究院や国策研究院の専門家は、国交樹立国の特別機を利用し、到着後に訪問を公表する手法を通じて、中国側の圧迫に対応する台湾の戦略的強靭性と後方支援能力が示されたと指摘している。

航空機追跡サイト「フライトレーダー24」の記録によると、頼氏が搭乗したエスワティニのエアバスA340-300特別機は、4日午後6時40分ごろに離陸後、南東方向へ飛行した。これは事前に領空通過許可を取り消したとされるセーシェル、マダガスカル、モーリシャスの3カ国の飛行情報区(FIR)を避けるための「南方ルート突破」措置とみられる。

特別機はモーリシャスのFIRを回避するため、南緯45度線の南側を飛行した。フランス領南方・南極地域を通過した後に北上してメルボルンのFIRに入り、インドネシアの首都ジャカルタやフィリピンの領空を経て台湾に戻った。南インド洋の深部を無寄港で飛行し、その距離はA340の航続距離の限界に近い約1万3000キロに及んだ。

頼清徳総統が搭乗した特別機は南インド洋を迂回し、セーシェル、マダガスカル、モーリシャス3カ国の飛行情報区を回避した(Flightradar24ウェブサイトより)
頼清徳総統の帰国便は南インド洋を迂回飛行し、セーシェル、マダガスカル、モーリシャスの3カ国の飛行情報区を回避した。(フライトレーダー24のサイトより)

専門家が指摘する「外交上の新たな突破口」

​国防安全研究院の蘇紫雲研究員は、今回運用されたエスワティニのA340特別機がかつて台湾の中華航空(チャイナエアライン)の旅客機であった点に言及し、台湾の整備部門による後方支援が可能であったと指摘。安全確保のため、操縦資格を持つパイロットがバックアップ要員として同行していた可能性もあるとの見方を示した。

また、外交面で今回採用された「到着後の公表(ATA、Arrived-Then-Announce)」という手法について、過去に米国のバイデン前大統領、オバマ元大統領、トランプ米大統領などが敏感な地域や紛争地を訪問する際に用いた先例があると説明した。国交樹立国の航空機を借り受けた点についても、ロシアによる侵攻後のウクライナのゼレンスキー大統領が他国の特別機を複数回利用した例を挙げ、米軍が同氏をウクライナからワシントンへ送るために輸送機を派遣したこともあるとして、訪問手段の多様化が外交リスクの分散に有効であると述べた。

国防安全研究院の蘇紫雲氏
国防安全研究院・国防戦略・資源研究所の蘇紫雲所長は、今回の外交上の突破について、万全の後方支援、ATA(到着後の公表)手法、国交樹立国の特別機協力、そしてFIR(飛行情報区)の法的解釈に関する柔軟な運用を組み合わせたものだと指摘した。(資料写真、顔麟宇撮影)

蘇氏はさらに、他国が絶対的な主権を持つ領空への進入を許可しないのは理解できるとしつつも、領海基線から24海里外の空域である飛行情報区(FIR)については、国際的な慣例上、軍用機や公用機(米大統領専用機「エアフォースワン」など)が進入する際に必ずしも通報を必要としない柔軟性があると分析した。
(関連記事: 台湾の頼総統、エスワティニ国王と会談 共同声明署名、「台湾は主権国家」と改めて強調 関連記事をもっと読む

蘇氏は、賴清德氏の今回のエスワティニ国家訪問における対応について、万全の後方支援、ATA手法、国交樹立国の特別機協力、そしてFIRの法的解釈に関する柔軟な運用を組み合わせたものであり、中国の圧力に対抗し、台湾の首脳外交活動の円滑な遂行を確保するための重要な武器になると評価した。

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