【張鈞凱のコラム】台湾に「親米」と「媚米」しかないのか 対米武器調達論争の深層
頼清徳総統(写真)は5月の将官昇進・階級授与式を主宰した際、国防特別予算が削減されないことを望むとあいさつした。(中央社)
「国を挙げてお偉方たちが偉そうに駆け引きを繰り返し、1.25兆だ、8000億だ、3800億プラスアルファだと激しく言い争っている。もう疲れ果てた。誰か気力と頭脳の余裕がある者がいたら言ってくれ。この問題は、値段交渉のような数字遊びで済むものなのか?あのお偉方たちが泥沼の中でかき混ぜているのは、生半可な泥などではない。それは人民の血肉そのものなのだ」――巨額の対米武器調達予算を巡る昨今の議論に対し、インターネット上で見かけたこの書き込みほど、事の本質を突き、深い嘆きを表した論評はないだろう。
民意はどの武器調達案を支持しているのか
近頃、台湾の最大野党・国民党の内部では「8000億台湾ドル案」と「3800億台湾ドル+α案」を巡って対立が生じており、これを同党の内紛拡大とみる向きが多い。この視点は決して間違いではないが、武器調達をめぐる議論の焦点を意図的に一政党の問題へとすり替える狙いが透けて見える。その裏で、まるで傍観者のようにほくそ笑み、高みの見物を決め込んでいるのが与党・民進党だ。彼らが掲げる1.25兆台湾ドルという途方もない予算案が、未だに一歩も譲歩されていない事実を世間は忘れかけている。
この米国からの武器調達という名の「レース」において、先頭を独走するのは「1.25兆台湾ドル案」であり、その後方を「8000億台湾ドル案」と「3800億台湾ドル+α案」が激しく追いかけている。しかし、順位がどうであれ、走者たちの目的はただ一つ、「米国の期待に応える」というゴールに向かって駆け込むことだ。奇妙なことに、参加する選手たちは誰一人として「なぜこのレースに参加しなければならないのか」と疑うことなく、別のコースがないのかと探ることもない。
実際のところ、観客席にいる市民は、トラックを走る選手たちに対してすでに強い不解と困惑を抱いている。政治の場と市民社会はまるで別世界のようになっており、前者は後者の本音から完全に乖離しているからだ。財団法人民主文教基金会が今(2026)年4月20日に公表した世論調査によれば、台湾海峡で戦争が勃発した場合、米政府が台湾を守るために軍隊を派遣すると「信じない」との回答が57%に上った。また、台湾が巨費を投じて米国から武器を購入することの防衛効果について、48.9%が「自信がない」と答えている。
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さらに遡れば、国民党の牛煦庭立法委員が2月13日に公表した委託調査(TVBS民意調査センター実施)の結果も示唆に富んでいる。1.25兆台湾ドルの国防特別予算について45%が「支持しない」と回答し、51%が「国防予算の増加が他の予算を圧迫する」と懸念を示した。さらに、56%が「調達兵器の納品遅延」を憂慮し、50%が「両岸(中台)有事における米軍の来援を信じない」と答えている。実施機関も時期も異なるこれら二つの調査がほぼ同様の結果を示していることは、重大な意味を持つ。台湾の民間社会は、国民党(青)、民進党(緑)、民衆党(白)の与野党三党が熱中するほどには巨額の米国製兵器購入に賛同しておらず、むしろ強い懸念と不安を抱いているのだ。
「親米」「媚米」の裏にある「疑米」という民意の本流
言い換えれば、多くの市民の目には、最終的に通過する予算が1.25兆台湾ドルであろうと、8000億台湾ドルや3800億台湾ドルであろうと、数字の大小に本質的な違いはないと映っている。「親米」も「媚米」も大して変わらない、いずれにせよ「米国にひざまずく」のである。重要なのは、今日の民意の主流が「疑米」(米国への懐疑)にあるということだ。目前の厳しい国際現実に目を向ければ、ウクライナの戦場で米国製兵器が絶対的な優位性を示せていないこと、印パ空中戦において中国の体系的作戦能力が西側の先進装備を凌駕したこと、さらには中東において米国がイランとの果てしない消耗戦の泥沼に引きずり込まれていることなどが、巨額の対米武器調達に対する説得力を著しく削いでいる。
歴史的視点から俯瞰すれば、米華相互防衛条約という「護身の神術」の有無にかかわらず、戦後の台湾政府は軍事面において一方的に米国の支援に依存し、中国大陸と明確な対立構造を築いてきた。台湾は対米武器調達予算を絶えず増額し、より先進的な兵器の購入を目指して、戦略面でも「外人和尚」(外国のお雇い専門家)の様々な助言や布陣を受け入れてきた。しかし、その結果としてもたらされたのは、中国人民解放軍の絶え間ない実力強化であった。解放軍が比較の対象としているのは、とうの昔に台湾の国軍ではなく米軍となっている。今日、米軍が西太平洋においてどれほどの優位性を保っているのかは、米国自身でさえ直視するのをためらう現実であろう。
そうであるならば、「米国からどれだけ武器を買っても意味がないのではないか」と台湾市民が疑問を抱くのは当然の理である。市井のささやきの中で、米国が台湾に売る武器がしばしば「ガラクタ」と揶揄されるのは、ある種の民衆の知恵の表れといえる。さらに軍の内部に目を向ければ、米国の軍産複合体の実態を身をもって知り、米国製兵器の様々な制限を経験してきた退役将官らが、しがらみのない立場から、極めて高い割合で対米武器調達に反対している。終日言葉を弄するあの「黄色い肌、黒い目」をした武器商人のロビイスト(つまり同胞でありながら米国軍需産業に仕える台湾人)の口上よりも、これらの退役軍人の専門的な見解のほうが、はるかに市民の信頼を集めているのである。
武器調達には「別の選択肢」はないのか
米国の軍需産業と台湾独立派の悪徳政治家に煽られ、台湾の武装化は今や自己防衛の域を越え、対岸を挑発し、米国のために犠牲となる「煮えたぎる堀」(Boiling Moat、米戦略家が提唱した台湾を中国の侵攻阻止の最前線とする概念)としての役割を演じさせられようとしている。巨額の血税を投じて米国から兵器を買う行為は、目的そのものが、米国の台湾海峡戦争における代理人としての役割を引き受けることへと変質してしまっている。それは、軍事費を通じて米国に資金と忠誠を捧げるだけにとどまらない。台湾を「地獄絵図」のような戦場へと変え、米国のために砲弾の餌食、人間の盾となることを意味するのだ。
武器を買うとなれば、敵は一体誰なのかという根源的な問いが生じる。反射的に「中国共産党だ」と考える人が多いかもしれない。しかし、「国民革命軍」を継承する「国軍」(中華民国国軍)の建軍の歴史的使命の一つは、まさに「中国の統一」であった。中華民国の生みの親である孫文(孫中山)の遺言「和平、奮闘、救中国」(平和、奮闘、中国の救済)が示す通り、その念頭にあったのは帝国主義への抵抗であり、それによってこそ平和的に統一された中国が実現する、というものだった。かつての国共内戦は、民族内部の骨肉相食む争いであった。今日、国共両党の指導者が握手を交わせる時代において、「中国人同士が争う」という悲劇をこれ以上長引かせる必要があるのだろうか。これらの霧が一つ一つ晴らされていけば、米国が台湾に武器を買い続けるよう迫る意図の裏に、両岸の中国人同士を争わせ、台湾の「近親憎悪」(最も近しい者ほど憎しみが深まる心理)の力を利用して同胞を手にかけさせ、自らの覇権的地位を維持しようとする思惑が透けて見えてくる。この視点に立ったとき、我々の真の敵とは誰であり、軍の銃口は本来どこに向けられるべきなのか、深く考えざるを得ない。
「米国の課長より少し格上にすぎない」と揶揄される米国在台協会(AIT)のレイモンド・グリーン処長や、「暴政はすぐそこにある」と叫び、「中国に対抗する」ために予算を通せと繰り返す米国の退役将官、そして次から次へと台湾を訪れる米国の議員団。彼らの背広の胸ポケットには、共通して「米国軍需産業のロビイスト」という名刺が入っており、その金に対するがめつさは見るに堪えない。冷静に考えれば、台湾がどのバージョンの武器調達予算を通過させようとも、それはトランプ米大統領の交渉のテーブルにおける手駒となるに過ぎない。そして同時に、真に「暴政」の名にふさわしい米国に、世界各地で戦火を煽り、無辜の人々を殺傷するためのさらなる資源を提供することになる。台湾の与野党に「武器調達反対」、さらには「武器調達ゼロ」を掲げる政党が一つも存在しないという現実は、台湾政界が米国の独占物(禁臠)であることを自ら証明している。それでいて自己満足に陥っている姿は、虚偽に満ち、あまりにも悲哀である。
*筆者はシニアジャーナリスト、「原郷人文化工作室」代表。
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