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【楊佩蓉の視点】日本の就労ビザ新制度:高まる人材のハードル、「語学+専門性」が優位に 日本企業でインターンシップを行う台湾の大学生。(筆者提供)
日本政府はこのほど、就労ビザの新制度を実施した。外国人が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請する際、業務内容が日本語でのコミュニケーションや翻訳、通訳、折衝、あるいは国際業務の窓口などを主とする場合、原則として相応の語学力の証明を求めるというものだ。日本語を業務言語とする場合、一般的にはCEFRのB2相当(日本語能力試験JLPTのN2以上、またはBJTビジネス日本語能力テスト400点以上)が目安となる。この政策は、日本が外国人材を拒絶しているわけではなく、語学力と専門職のスキルを深く結びつけた「即戦力人材」の獲得へと舵を切ったことを示している。
1. コミュニケーション重視の職務に語学力審査を導入 新制度によれば、翻訳、通訳、海外顧客対応、接客、ホテルのフロント業務、商談、営業支援、国際業務の窓口、グローバルプロジェクトの調整など、対人コミュニケーションを主務とする場合、原則として業務上必要な語学力の証明が求められる。これは、すべての申請者に一律に日本語能力証明を課すものではない。上述のような日本語でのコミュニケーションや折衝を主務とする者に対し、実際の業務内容に見合った語学力を要求するものである。
台湾の求職者にとって、これは明確な人材の棲み分けを意味する。もはや基礎的な日常会話レベルでは不十分であり、専門分野の知識を持ち、かつ高度なビジネス日本語でコミュニケーションを図れる人材がより強い競争力を持つことになる。言い換えれば、日本は単にハードルを上げたり、外国人材を排除したりしているわけではない。「職務名称、業務内容、語学力、専門能力」の整合性を求めているのだ。名目上は国際業務や海外窓口とされながら、実際には日本語での実務コミュニケーションが取れない層は、新制度によって淘汰されるだろう。一方で、真に語学力と専門知識を備えた台湾の若者にとっては、労働市場でその実力が正当に評価される好機となる。
また、この変革は台湾の教育機関に対しても、外国語を国際的な流動性の一部と見なし、産業界と直結した高度な専門技術人材の育成に積極的に取り組むべきだという課題を突きつけている。
2. 外国人材需要は過去最高、再定義される「専門人材」 実際のデータを見ても、日本は外国人材の受け入れを継続的に拡大している。厚生労働省が公表した直近の「外国人雇用状況の届出状況まとめ」によれば、10月末時点での外国人労働者総数は257万1037人に達し、前年比で26万8450人増加した。これは2007年の届出義務化以降で過去最多の記録である。このうち、「専門的・技術的分野の在留資格」を持つ外国人は86万5588人で、前年比14万6776人増(プラス20.4%)となった。この数字は、日本におけるホワイトカラーの専門型外国人材に対する需要が冷え込むどころか、むしろ増加の一途をたどっている事実を浮き彫りにしている。
需要が旺盛だからこそ、日本側も制度の基準を明確にする必要があったといえる。これまで「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には、実務上曖昧なグレーゾーンが存在していた。名目上は国際業務や翻訳サポートとされていても、実際の業務には十分な専門性が伴っていなかったり、語学力が不足していたりして、制度が本来想定する「ホワイトカラーの専門職」という位置づけとの間に乖離が生じることがあった。新制度の重要な意義は、職務内容、語学力、そして専門資格の3つを密接に連動させる点にある。
3. 「日本語を学んだ」から「日本語で仕事をする」へ:台湾の若者に迫られる分流 この制度変更は、職場における語学力の位置づけも変容させる。これまで台湾では、多くの人が日本語を趣味や付加的なスキル、あるいは履歴書を飾る要素と見なしてきた。日常会話ができ、初中級レベルの資格さえ取れれば、日本での就職も近いと考える傾向があった。しかし、語学力が一部の専門ビザの審査基準に組み込まれたことで、日本語は単なる「文化的資本」から実践的な「職務能力」へとシフトする。問われるのは「日本語ができるか」ではなく、「制度や企業から、専門的かつ実用的なスキルとして認められるか」である。
これは台湾の若者にとって必ずしも悲報ではなく、むしろ追い風となり得る。大学在学中に着実に語学力を磨き、N2やN1レベルまで引き上げ、ビジネスでの表現力やコミュニケーション能力を身につければ、「ただ日本語を学んだだけの人」との差を明確にすることができる。現在の労働市場で最も競争力があるのは、単なる「日本語ができる人」ではなく、「日本語ができ、かつ専門知識を持つ人」だ。語学力に加えて、IT、半導体、国際ビジネス、デジタルマーケティング、越境EC、あるいは観光・宿泊業のマネジメントなどの知識を持つ人材こそが、日本企業のニーズに的確に応えることができる。日本企業が求めているのは、日本語を「聞き取れる」だけの人材ではなく、日本語を使って専門業務を処理し、企業の論理を理解して実務の現場に参画できる人材なのである。
一方で、この追い風は人材の明白な分流をもたらす。今後、日本語を学ぶ台湾の学生は二極化していくと予想される。一方は、在学中から語学力を高めつつ、副専攻、インターンシップ、交換留学、産学連携プロジェクト等を通じて、日本で働くための要件を計画的に積み上げていく層だ。もう一方は、授業での文法学習や試験対策、日常会話の域に留まり、いざ日本企業やビザの審査要件に直面した段階で、自分の日本語が「学んだことがある」レベルに過ぎず、「実務で使える」レベルには達していないことに気づく層である。
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これは台湾の大学教育への警鐘でもある。日本語教育が単なる語学学習に終始し、産業界や職場、異分野の専門性と積極的に結びつかなければ、学生が何年学習に投資しても、最終的に就職市場で挫折を味わうことになりかねない。これからの競争は「誰がより日本を好きか」でも、「誰がより多くの日本語の授業を履修したか」でもなく、「誰が語学力を実践的な職務能力に転換できるか」にかかっている。
台湾の大学生による日本企業でのインターンシップ。(筆者提供)
結び:日本就職の鍵は、ビザではなく「代替不可の能力」 総括すると、今回の就労ビザ新制度からは、日本政府の明確なメッセージが読み取れる。日本は依然として外国人材を必要とし、歓迎している。だが、単なる労働力の不足を補う人材ではなく、十分な語学力と専門知識を備え、日本の職場と社会に円滑に溶け込める即戦力こそを求めているのだ。
日本での就労を志す台湾の若者は、もはや「日本語を学んだ」「日本文化が好きだ」という段階に留まってはならない。早期に目標を設定し、語学力を少なくともN2以上のレベルに引き上げると同時に、第二の専門性を養う必要がある。真の競争力を持つのは「日本語が上手な人」ではなく、「日本語を駆使して専門業務を完遂できる人」である。
したがって、台湾の若者は日本語学習を単なる趣味の延長から、キャリアへの投資へと昇華させるべきだ。大学での4年間は、資格取得の準備期間にとどまらず、インターンシップ、交換留学、企業訪問、実践的なプロジェクト、ビジネス日本語訓練、あるいは他分野の履修を通じて、企業から評価される確かな能力を蓄積する期間でなければならない。
日本の就労ビザ新制度は、これからの国際的な人材移動が単なる語学力の競争ではなく、語学力と専門性を掛け合わせた総合力の競争になることを我々に教えている。真に準備を整えた台湾の若者にとって、これは決して障壁の引き上げではなく、日本企業と国際市場において自身の価値を見出される絶好の機会となるはずである。
※筆者は義守大学応用日本語学科主任兼日本研究センター長、日本の筑波大学にて博士号取得
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