【張瀞文コラム】脳とAIの直接接続 BCIが米中のテクノロジー競争の新たな戦場に

2026-05-01 15:13
ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)は驚異的なスピードでSFを現実のものにしつつある。写真はニューラリンクが開発したデバイス(資料写真、YouTube動画より)
ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)は驚異的なスピードでSFを現実のものにしつつある。写真はニューラリンクが開発したデバイス(資料写真、YouTube動画より)

人間の脳にマイクロチップを埋め込む――。これはハリウッドのSF映画における一場面ではなく、目前に迫った現実の技術である。

「ブレイン・マシン・インターフェース(BCI)」は、驚異的なスピードでSFを現実のものへと変えつつある。人間の思考を直接行動へと変換し、思考から実行までの遅延をなくすこの技術は、障害者の機能回復を補助する医療ツールにとどまらず、人類とデジタル世界を結びつける究極のインターフェースとなる可能性を秘めている。

今年4月までの動向を振り返ると、この技術革命はすでに米中間の新たなハイテク競争の主戦場となっている。現在、世界のBCI開発を牽引するのは米国、中国、そしてドイツの3カ国だ。米国が技術革新の深さと圧倒的な資金力で先行し、中国が政策推進のスピードと商業化の速さで猛追する一方、ドイツは欧州において学術研究と臨床応用の確固たる基盤を築いている。

侵襲式か、準侵襲式か:米国の技術的アプローチ

BCIの領域には、根本的に異なる技術哲学を背景とする2つの主要なアプローチが存在する。

一つは、イーロン・マスク氏が創設した米ニューラリンクに代表される「侵襲式」である。同社は脳への直接的なアプローチを重視し、髪の毛よりも細い柔軟な電極糸を用い、1024以上のチャンネルから神経信号を極めて高い精度で読み取る技術を開発している。

現在までに21名の患者が同社のデバイスを移植されており、2026年からは量産化と手術の全自動化への移行が見込まれている。この方式の最大の利点は超高解像度でのデータ取得が可能である点であり、発話を伴わないコミュニケーションや精密なロボットアームの制御といった将来の高度な応用に適している。とはいえ、頭蓋骨を開ける必要があるため身体的負担が大きく、広く普及させるための心理的ハードルは極めて高い。現状ではまだ臨床試験の段階にとどまっている。

サウジアラビア投資フォーラムに出席するイーロン・マスク氏(AP)
イーロン・マスク氏(写真)が創設した米ニューラリンクは、脳への直接的なアプローチを重視し、髪の毛よりも細い柔軟な電極糸を用い、1024以上のチャンネルから神経信号を極めて高い精度で読み取る技術を開発している。(写真:AP)

この技術の潜在力を最も明確に示しているのが、初の移植患者となったノーランド・アーボー氏の事例だ。2016年の水難事故で四肢麻痺となった彼は、デバイスの移植後、思考だけでコンピューターを操作し、8時間連続でゲームをプレイしたり、タイピングで文章を書いたりできるようになった。さらに大学に復学して神経科学を学び、講演活動を始めるまでに至っている。「このデバイスが私の人生を取り戻してくれた」と語るアーボー氏は、現在毎日10時間以上デバイスを使用しており、歩行機能の回復を目指して2つ目のデバイス移植を計画しているという。 (関連記事: インテル株が急騰 マスク氏の「Terafab」構想が半導体勢力図を塗り替えるか 関連記事をもっと読む

もう一つのアプローチが、米国の神経科学スタートアップであるシンクロンに代表される「準侵襲式」である。ニューヨークを拠点とする同社は、より身体的負担の少ない手法を採用した。「ステントロード」と呼ばれるステント型の電極を頸静脈から血管内に挿入し、大脳の運動皮質付近に配置する。開頭手術は一切不要であり、手術時間も20〜30分程度で済む。現在までに約20名の患者がこのデバイスを移植されているが、術後12カ月以内に深刻な有害事象は報告されていない。電極の数は侵襲式に比べて少ないものの、思考による車椅子の操作やオンラインショッピング、さらには金融取引を行うには十分な性能を備えている。

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