国民党内の次期総統選を巡る派閥対立、中常会での韓国瑜氏批判の背景

立法院長・韓国瑜氏(写真)が国防兵器調達予算の調整に乗り出したことに対し、国民党副主席の季麟連氏が「8000億台湾元案を支持することは党を売る行為だ」と公然と非難し、韓氏の党籍剥奪を要求した。これにより、党内の親米派と主流派の対立が表面化している。(写真/陳品佑撮影)
立法院長・韓国瑜氏(写真)が国防兵器調達予算の調整に乗り出したことに対し、国民党副主席の季麟連氏が「8000億台湾元案を支持することは党を売る行為だ」と公然と非難し、韓氏の党籍剥奪を要求した。これにより、党内の親米派と主流派の対立が表面化している。(写真/陳品佑撮影)

台湾の立法院(国会に相当)では現在、「防衛強靭性および非対称戦力強化計画調達特別条例」案(以下、国防調達特別条例)の審議が行われている。5月中旬に予定される「米中首脳会談」までに可決させたい米側の期待に沿えるかは不透明な状況だ。そうした中、最大野党・国民党内において、国防予算の規模を巡り、党中央が主導する「3800億台湾ドル+N」案を維持するのか、あるいは8000億台湾ドルまで増額するのかで内部対立が勃発している。4月29日昼、国民党立法院党団(議員団)は党団大会を開き予算規模を議論したが、党案維持派と増額派の主張が平行線をたどり、合意に至らなかった。しかし、その後に開かれた国民党中央常務委員会(中常会)にて、国民党副主席・季麟連氏が、立法院長・韓国瑜氏を公然と批判した。「8000億台湾ドル案を支持することは党を売り名声を得る行為(売党求栄)だ」と述べ、韓氏の除名を求めると発言したのである。この発言は直ちに党内に波紋を広げ、親米派と党主流派の長きにわたる軋轢が正式に表面化する事態となった。

関係者によると、季氏の中常会での発言は突発的なものではなく、事前に計画されたものであった。その目的は、軍出身者らで構成される党内組織「黄復興党部」が「3800億台湾ドル+N」の党案を強力に支持している姿勢をメディアの前でアピールすると同時に、国民党立法委員・徐巧芯氏ら8000億台湾ドル案を主張する中堅・若手議員に圧力をかけることにあったという。黄復興や保守系党員の支持を失いたくなければ、党中央の方針に逆らうべきではないとの警告である。国民党の内部事情に詳しい関係者は、季氏が中常会の1時間前、国民党主席・鄭麗文氏に対し「国防調達特別条例について発言したい。党案を断固支持する黄復興党員の立場を伝えたい」と報告し、鄭氏の了承を得た上で発言に及んだと指摘している。

国民党は29日に中常会を開催。発言する季麟連副主席(中央)。左は傅崐萁・立法院党団総召、右は蕭旭岑副主席。(蔡親傑撮影)
国民党事情に詳しい関係者によると、季氏(中央)は中常会の1時間前に鄭氏へ報告を行い、「国防調達特別条例について発言したい。黄復興党員の党案支持の立場を伝えたい」と了承を得ていたという。(写真/蔡親傑撮影)

鄭麗文氏は季麟連氏の発言を事前把握、韓国瑜氏への批判は想定外

ただし、鄭氏および党幹部は、季氏が党案を支持し、行政院(内閣)が提示した1.25兆台湾ドル案を不適切だと批判する予定であることは把握していたものの、矛先が韓氏に向かい、メディアの前で「党を売る行為」「除名処分」といった厳しい言葉を口にするとは予想していなかった。季氏が韓氏を痛烈に批判した際、鄭氏が驚いた表情で即座に制止に入り、国民党党団総召(幹事長)・傅崐萁氏も二度立ち上がって季氏の発言を止めようとしたことからも、鄭氏や党中央が韓氏への攻撃を指示したわけではないことが伺える。つまり、季氏に公開発言の機会を与えたのは事実だが、韓氏への批判は季氏個人の暴走であり、元中国広播公司(中広)董事長・趙少康氏が指摘したような「背後に黒幕がいる」との見方は当たらない。 (関連記事: 防衛特別予算案で国民党が分裂 副主席、韓国瑜氏の除籍求め波紋 関連記事をもっと読む

韓氏は現在、国民党内で最高位の公職に就いているだけでなく、保守派内での人望も極めて厚い。黄復興や保守系支持者の中には熱狂的な韓氏の支持層(韓粉)が多く存在する。その上、韓氏は8000億台湾ドル案を支持していると噂されているだけで、現時点ではどの案を支持するか明確な態度を示していない。それにもかかわらず、季氏が韓氏を標的にしたことで、多くの保守派支持者を激怒させただけでなく、鄭氏を極めて困難な立場に追い込んだ。党中央が直ちに火消しを図ったものの、騒動の拡大を食い止めるには至っていない。

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