【張鈞凱コラム】習近平氏は本当に「統一」に言及しなかったのか?

中国共産党の習近平総書記は2026年4月10日、北京の人民大会堂で台湾の最大野党・国民党の鄭麗文主席と会談した。(新華社)
中国共産党の習近平総書記は2026年4月10日、北京の人民大会堂で台湾の最大野党・国民党の鄭麗文主席と会談した。(新華社)

台湾の最大野党・国民党の鄭麗文(てい・れいぶん)主席は、5泊6日にわたる「2026平和の旅」を終えた。台湾帰還後、自身のフェイスブックを更新し、中国のスマートフォン大手シャオミ(Xiaomi)のミネラルウォーターのボトルに記された「勇気こそ、この時代に対する我々の最善の答えである」」という言葉を引用して、今回の訪問の総括とした。まさにその通りである。誰もが「政治的正しさ」を重んじ、安全圏ばかりに目を向けるこの時代において、あえて逆風に立ち向かい、なすべきことをなし、受動から能動へと転換した姿勢は、確かに高く評価されるべきだ。

習近平氏が台湾の賓客に見せた「配慮」とは?

​4月10日、北京の人民大会堂東大庁で行われた鄭氏と中国国家主席・習近平氏との会談、いわゆる「鄭・習会談」の余波は、今もなお続いている。筆者は当時、中継をすべて視聴していたが、非公開になる前の発言の中で、習近平氏が「統一」という言葉を用いたのは、中国を「統一された多民族国家」と描写した際の一度きりだった。これは中台関係の将来的な政治目標として直接指したものではなかった。そのため、多くのメディアはすぐさま「習近平、統一に言及せず!」というセンセーショナルな見出しを掲げた。

しかし、中国国営メディアの新華社が同日午後1時37分に配信した公式記録には、習氏の発言内容が記されていた。そこでは「統一された多民族国家」という表現に加え、「国家統一」は孫文の生涯をかけた追求であったと強調し、国共両党が「祖国統一を共に創り出すこと」への期待も述べられていた。現場での発言と新華社の記録を照らし合わせたとき、習氏は「統一」を言い漏らしたのだろうか、それとも意図的だったのだろうか。この細部にこそ、北京最高層の台湾問題に対する真意が体現されている。

筆者は後者、つまり習氏の「意図的な演出」であったと推測する。その狙いは二つある。第一に、中国側は現在の台湾政治における国民党の苦境と、党内に存在する中台歩み寄りへの反発の声を十分に理解している。習氏は会談の冒頭、世間話のように「今日は記者が多いね」と漏らした。彼は、国民党が野党であっても、この会談が世界情勢を動かす一歩になることを熟知していた。10年ぶりに再会した「旧友」格の貴賓である鄭主席に対し、いかにして体面を保ち、配慮を示すか。猛獣がひしめく台湾政治界に彼女が自信を持って戻れるようにすること。それこそが、習氏が巡らせた思慮の一つであったと考えられる。 (関連記事: 【杜宗熹コラム】鄭習会談が示すもの 中台「平和統一」への布石か、中国の対台湾メッセージを読む 関連記事をもっと読む

「統一」はもはや語るまでもない前提か?

​次に、中国の政治の世界には「文字が少ないほど、事態は重大である」という経験則がある。では、一言も触れない場合はどうだろうか。それはおそらく、その件がすでに「決定事項」であり、疑う余地がないことを示している。北京の対台湾大政方針は、「平和統一」以外にも「中台関係の主導権と能動権をしっかりと掌握する」ことを掲げている。これは共産党の「新時代における台湾問題解決の全体方略」の一部であり、第15次五カ年計画の全文にも明記されている。換言すれば、中国大陸の視点では、北京には「時と勢」の優勢があり、「中華民族の偉大なる復興」を宣示する以上、平和統一を主導的かつ能動的に推進することは必然の流れなのである。

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