トップ ニュース 中満泉国連事務次長、NPT空洞化に強い危機感 運用検討会議を前に日本の外交的役割に期待
中満泉国連事務次長、NPT空洞化に強い危機感 運用検討会議を前に日本の外交的役割に期待 中満泉国連事務次長は、NPT運用検討会議を前に、合意失敗による条約の「空洞化」に強い危機感を表明し、唯一の戦争被爆国である日本の外交的役割に強い期待を寄せた。(写真/日本記者クラブ提供)
国連の中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)は2026年4月10日、日本記者クラブで記者会見を行い、今月27日からニューヨークの国連本部で始まる核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議を前に、現在の国際情勢と会議の見通しについて強い危機感を表明した。中満氏は、ロシアによるウクライナ侵攻やイラン情勢の緊迫化を背景に、「ポスト冷戦期が完全に終わり、軍拡競争が再燃している」との現状認識を示した。
特に、アメリカとロシアの間で 唯一残っていた核軍縮の枠組みである「新START(新戦略兵器削減条約)」が失効し、冷戦期からの取り決めが消失したことや、中国による不透明な核弾頭増強、さらにはフランスの政策転換による核増強など、核軍縮が「後退」している状況に警鐘を鳴らした。
実効性を失う「空洞化」への懸念 中満氏は、今回の運用検討会議が3回続けて成果文書を採択できずに終わった場合、条約そのものが崩壊せずとも、実効性が失われる「空洞化(hollowing out)」が進むリスクを強調した。
特に、非核兵器保有国、いわゆる「グローバルサウス」諸国の間で「NPTに参加し続けるメリットがあるのか」というシニシズム(冷笑主義)や不満が増大していることに触れ、国際秩序そのものの弱体化を危惧した。また、意図的な核使用だけでなく、誤算や誤解に基づいた核のリスクがかつてなく高まっているとし、核兵器による「脅し」のレトリックが常態化している現状を厳しく批判した。
核保有国の「説明責任」が焦点に 会議の具体的な課題として、中満氏は核兵器保有国の「説明責任」を挙げた。これまでのコミットメントを単なる紙の上の言葉に終わらせないため、保有国が履行状況を報告し、非保有国と対話するインタラクティブ(双方向)な仕組みの導入など、レビュープロセスの強化が必要だと説いた。
また、AI(人工知能)や宇宙、サイバーといった新技術が核の司令系統と結びつく「21世紀型の核リスク」への対応や、イラン・イスラエル情勢を受けた核施設への攻撃禁止の再確認、さらには解決の糸口が見えない北朝鮮問題など、課題は山積していると述べた。
日本への期待 「橋渡し」役と被爆者の発信 唯一の戦争被爆国である日本に対しては、非常に高い期待を寄せている。中満氏は前日に茂木外務大臣と会談したことを明かし、日本が持つ国際的な信頼をアセット(資産)として、米国をはじめとする保有国に積極的な関与を促す「橋渡し」の役割を強く求めた。
特に、開会式への閣僚級の出席や、唯一の被爆国としての外交力を駆使した働きかけが、会議の成否を分ける分岐点になるとの見解を示した。さらに、ニューヨークを訪れる被爆者の方々が、核兵器使用の惨禍を思い起こさせる発信を続けることの重要性についても言及した。
「空洞化」阻止に向けた現実的なアプローチ 今後の見通しについて、中満氏は「野心的な結果を出すことは非常に難しい」と現実的な視点を示しつつも、全締約国が抱く危機感を背景に、最低限「空洞化」を防ぐためのランディングスペース(着論点)を見つける努力を事務局としてサポートしていく姿勢を示した。会議は4週間の日程で行われ、第2週半ばには総合成果文書のドラフトを提示し、実質的な交渉に入る予定である。
中満氏は、一部の影響力のある国が議論を主導するのではなく、非保有国の意見も反映されるインクルーシブ(包摂的)なプロセスを通じて、条約の三本柱(核軍縮・不拡散・原子力の平和利用)のバランスを再確認することの意義を強調し、会見を締めくくった。
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