イスラエル・米の対イラン攻撃で世界最大の供給途絶、田中伸男氏が「エレクトロステート」への転換を提言

田中伸男氏は、中東危機による過去最大の供給途絶に対し、日本は次世代原子力や電化を軸としたエレクトロステートへ転換し、アジア諸国との連携を強めるべきだと提言した。(写真/日本記者クラブ提供)
田中伸男氏は、中東危機による過去最大の供給途絶に対し、日本は次世代原子力や電化を軸としたエレクトロステートへ転換し、アジア諸国との連携を強めるべきだと提言した。(写真/日本記者クラブ提供)

2026年4月6日、元国際エネルギー機関(IEA)事務局長の田中伸男氏は日本記者クラブで会見し、イスラエルと米国によるイラン攻撃が、世界のエネルギー市場に過去最大の混乱をもたらしていると警告した。

田中氏は、今回の事態による供給途絶の規模が、第一次・第二次石油ショックを上回る日量1,200万〜1,500万バレルに達しており、エネルギー地政学上、極めて深刻な局面にあるとの認識を示した。IEAはこれに対し、過去最大となる4億バレルの備蓄放出を決定したが、これはあくまで「時間稼ぎ」の措置であり、実物の管理を通じた市場との対話には限界があると指摘した。

アジアの石油危機と日本の課題

中東産石油の約8割がアジア向けであることから、今回の危機は「アジアの石油危機」を引き起こしている。日本は250日分の備蓄を有しているものの、調達価格の高騰は避けられない。田中氏は、政府の補助金政策について、市場メカニズムを歪めないよう、対象をバスやトラックなどのインフラや生活困窮者に限定すべきだと主張した。

また、石油火力からガス、原子力へと電源構成を移してきた過去の経験を踏まえ、現在は石油に依存する輸送部門の電化を加速させる「構造変化」が必要であると述べた。

「ペトロステート」対「エレクトロステート」

田中氏は、世界が石油・ガスを輸出する「ペトロステート(石油国家)」と、電化とクリーン技術を推進する「エレクトロステート(電力国家)」の二つの連合に分かれつつあるとの仮説を提示した。

ペトロステート(米国の動向)

トランプ政権下の米国は、石油国家への復帰を強めている。

エレクトロステート(中国・欧州の動向)

中国は国家安全保障の観点から風力、太陽光、原子力、EVの普及に注力し、リーダーを目指している。ロシア依存脱却を急ぐ欧州も同様の道を歩んでおり、日本と韓国もこの「エレクトロステート連合」との連携を強めるべきだとした。

次世代原子力と安全保障の新たなパラダイム

今後の日本のエネルギー戦略として、田中氏は次世代原子力の重要性を強調した。

  • SMR(小型モジュール炉)の導入: 事故リスクが低く、高レベル放射性廃棄物の無害化期間を30万年から300年に短縮できる「統合型高速炉」などの導入を提言。
  • 福島のデブリ処理:これらの技術は福島第一原発のデブリ処理にも活用可能であり、従来の大型炉とは異なるパラダイムでの国民の理解が必要だという。
  • 集団的エネルギー安全保障:安全保障の観点から、日米韓による原子力潜水艦の共同研究・運用、アジア全域を結ぶ「クリーン電力ネットワーク」の構築を訴えた。

最後に田中氏は、核戦争のリスクや地球環境危機に直面する現代において、短期的なイラン・ショックへの対応だけでなく、中長期的なクリーン技術の標準化やルール作りを主導していくことが日本の進むべき道であると結んだ。CPTPPを「世界エレクトロステート連合」へと拡大し、インドや欧州を巻き込んだ外交を展開することで、不安定な中東から自立したエネルギー体系を確立すべきだと提言した。

編集:丁勤紜 

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