2026年4月9日、日本外国特派員協会(FCCJ)において、中東情勢の緊迫化とトランプ大統領の政策が世界経済に及ぼす影響を議論するパネルディスカッション「トランプの戦争、エネルギー危機、そして来たるべき市場の崩壊」が開催された。
討論会には、経済学者のポール・シェアード氏、アトランティック・カウンシルのハン・トラン氏、マネックスグループのジェスパー・コール氏が登壇。地政学的緊張が金融市場や産業構造に与える多角的なリスクについて、鋭い分析が交わされた。
ポール・シェアード氏、「トランプの戦争」と投資家心理への影響
ポール・シェアード氏は、ドナルド・トランプ氏が掲げる「アメリカ・ファースト」の本質を、米国が「世界の警察官」としての役割から退却し、限られた資源を自国の利益に集中させる動きであると指摘した。
- 予測不能な政治スタイル:シェアード氏はこの動向を「トランプの戦争」と定義。トランプ氏が平和の使者を自認しながらも、その予測不能なスタイルが歴史的な大統領のレガシーを破壊し、グローバル経済に深刻な懸念をもたらしていると分析した。
- 不確実性というリスク: 一方で現代経済は、1970年代のオイルショック時と比較してエネルギー集約度が低くなっていると言及。エネルギー危機そのものよりも、「政治的な不確実性」が投資家心理に与える悪影響を注視すべきだと付け加えた。
ハン・トラン氏、経済的影響の「非対称性」とAIブームへの逆風
ハン・トラン氏は、中東紛争が継続することによる経済的影響の「非対称性」について強い警告を発した。
- アジア・欧州への打撃: トラン氏の分析によれば、エネルギー価格の上昇は米国よりもアジアや欧州に甚大な打撃を与える。
- AI投資への懸念: 特に、安価で安定した電力供給に依存して急成長している現在のAI(人工知能)投資ブームを減速させるリスクがあるという。地政学的リスクが、最先端の技術革新の足かせとなる可能性を指摘した。
データセンターの運営コスト増大が、これまで市場を牽引してきたITセクターの収益性を圧迫し、結果としてGDP成長率の鈍化を招く可能性があると指摘。また、肥料価格の高騰を通じた「食品インフレ」が、低所得国の経済をさらに困窮させることへの強い懸念を示した。
さらに、国際通貨基金(IMF)のデータを引用し、多くの国で公的債務の対GDP比が極めて高い水準にあることに言及。これが新たな金融危機が発生した際の対応能力を著しく制限していると強調した。
ジェスパー・コール氏、米国の覇権と日本市場の「地力」
一方で、ジェスパー・コール氏は、米国がデジタル、決済、防衛の三領域において、依然として「不可欠なヘゲモン(覇権国家)」であり続けるとの見解を示し、シェアード氏の「退却説」とは異なる視点を提供した。
- 中国経済の転換点: 中国については、人口動態の変化と累積債務問題により「高成長期は終焉した」と述べ、従来の成長モデルの限界を指摘した。
- 日本市場への提言: 日本に関しては、エネルギー価格の高騰が「ラピダス(Rapidus)」に代表される国内製造業の再興において、戦略的なボトルネックになる可能性があると警告。
- 構造改革への楽観論: しかし、日本企業の構造改革については楽観的な見方を示した。コーポレートガバナンスの浸透、株主アクティビズムの活発化、そしてM&Aの増加により、日本は国際的な資金流出入において「政治的・社会的安定性を備えた魅力的な投資先」としての地位を確立しつつあると論じた。
不透明な世界経済の景気サイクル
討論の締めくくりとして、パネリストらは今後の市場の脆弱性に言及。債券利回りが上昇する中で、株式市場のリスクプレミアムが相対的に低下しており、投資家はより慎重な資産配分を迫られる局面が来ると予想した。
最終的に、中東での軍事的衝突の行方や、トランプ政権による関税政策が、今後数年間の世界経済の景気サイクルを決定付ける「重要な変数」になるという認識で一致し、ディスカッションを終えた。
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編集:丁勤紜

















































