中東情勢の緊迫化により世界のエネルギー・サプライチェーンが逼迫する中、石油や天然ガスの高い需要に直面する欧州諸国は、再び苦渋の選択を迫られている。中東からの供給に支障が生じる中、欧州は果たしてロシア産エネルギーへの依存から脱却できるのだろうか。
英紙『フィナンシャル・タイムズ』はエネルギーデータ企業ケプラー(Kpler)の最新報告書を引用し、欧州連合(EU)が2027年からのロシア産液化天然ガス(LNG)の「全面禁輸」を計画しているものの、イランでの戦火に直面した2026年第1四半期の輸入データは、理想とは程遠い現実を突きつけていると報じた。ロシア・シベリアの「ヤマル(Yamal)」プロジェクトからEUが輸入したLNG量は、こうした逆風の中で約17%増加したのである。
ロシアからの買い付けが増加した背景には、イランでの紛争と中東の地政学的リスクがある。戦火が周辺国に波及したことで、カタールなど主要な輸出国のインフラが損傷したほか、テヘラン(イラン当局)によるホルムズ海峡の封鎖・管理により、ペルシャ湾地域のLNG船団は現在も天然ガスを順調に運び出すことができず、欧州の買い手の港へ届ける目処も立っていない。
データによると、今年1月から3月までの間に欧州が受け取ったロシア・ヤマル産の天然ガスは計500万トンに達した。環境団体ウルゲバルト(Urgewald)の試算によれば、EU加盟国はこれに対し、28億8,000万ユーロ(約5,380億円)もの巨額を支払ったことになる。特に3月は、市場の希少性が高まったことで天然ガス価格が年初の1MWh(メガワット時)あたり35ユーロから52.87ユーロへと急騰し、取引総額をさらに押し上げる結果となった。

米国への依存度は過去最高、それでも埋まらぬ供給不足
欧州委員会(EC)のデータによれば、現在、欧州で消費される天然ガスの3分の2以上を米国産が占めており、対米エネルギー依存度は過去最高を記録している。しかし、混迷を極める中東からの供給停止が続く中、米国の供給力をもってしても、その欠落分を完全に補うには至っていないのが現状だ。
現在、EU全体の天然ガス貯蔵量は例年の平均を下回る水準にあり、夏季の需要期に向けた在庫積み増しへの圧力が一段と強まっている。
「2027年禁輸計画」の是非と現実的な課題
EUのダン・ヨルゲンセン欧州委員(エネルギー担当)は、2022年に起きた「エネルギーによる脅迫(エネルギーの武器化)」の再来を防ぐためにも、ロシア産LNGに対する禁輸措置の立場は揺るぎないものであると改めて強調した。

しかし、現実は欧州当局が描く理想通りには進んでいないようだ。試算によれば、仮にEUが計画通り2027年1月からロシア産ガスの輸入を完全に遮断すれば、前述のシベリア・ヤマル・プロジェクトは欧州という巨大市場を失い、苦境に立たされることになる。
だが、最大の懸念材料はロシア側にあるのではない。むしろ欧州自身が、中東情勢に起因する長期的なエネルギー不安に対し、十分な備えができているかどうかにかかっている。代替供給源の確保や「ガス不足」を回避するための抜本的な解決策を見出せない限り、ロシア産エネルギーへの依存から完全に脱却するハードルは、今後さらに高まっていくことになるだろう。
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編集:佐野華美












































