日本の人工知能(AI)戦略を担当大臣である小野田紀美氏は10日の記者会見で、自身のAI利用状況について問われ、「私自身は今のところ、自分の業務の中では必要性を感じていないので、必要な時には使おうと思う」と明言した。この発言は、国家のAI発展を推進する閣僚が実務でAIをほぼ利用していないと公に認めたことで、各界に波紋を広げている。
多岐にわたるテック政策の司令塔
小野田氏は現在、高市早苗首相が率いる内閣における「内閣府特命担当大臣」として、AI戦略、科学技術政策、宇宙政策、知的財産戦略、および経済安全保障など多岐にわたる分野を所管しており、日本の科学技術政策の中核とも言える存在である。同氏は2025年10月の高市内閣発足時に初入閣を果たし、42歳での抜擢は自民党新世代のリーダー候補として大きな注目を集めた。
「重要なツール」だが「自分には不要」
小野田氏はこの日の記者会見で、AIについて「日々身近な形で利活用が進み、非常に有用なツールであると認識しているし、AIをしっかり応援していくことが国力の成長にもつながると考えて頑張っている」と強調した。
一方で、「AIによる誤りへの配慮など、利用に当たって注意を要する点は多々ある。AIが子供たちの発達に与える影響について議論があるの事実だ」との認識を示した。
AIの重要性を認めつつも、個人レベルでは「必要性を感じない」とするこの温度差に対し、日本政府が掲げる「AIトランスフォーメーション」が果たしてトップダウンで実現可能なのか、懐疑的な声も上がっている。
小野田氏は以前、AI生成画像による肖像権侵害の問題について、「AIによって着たくない服を着せられるのも不愉快ですし、事実ではない画像や発言を作られる事に対して危機感を抱いています」と公言した経緯がある。フェイク画像などの悪用に対し強い警戒感を持っており、こうした視点が自身のAI利用に対する慎重なスタンスに影響している可能性も指摘されている。
「人材育成」を政策の焦点に
今回の記者会見で小野田氏は、子供たちがAIに触れる機会を拡大するよう呼びかけた。「子供たちがAIの便利な使い方や可能性に触れる機会を広げなければならないが、その特性を正しく理解して、適切かつ効果的に使いこなすAIリテラシーの向上」の重要性を強調し、教育現場におけるAIの普及を施策の重点に据える考えを示した。
政府は9日、AI戦略専門調査会を開催し、今夏の「人工知能基本計画(AI基本計画)」の改定に向けた議論を行った。小野田氏は同調査会に対し、「AI社会の実現のために重要となるAI実装人材をはじめとする人づくりをどのように推進するか」といった論点を含め、深掘りした検討を指示したという。
背景、日本のAI「遅れ」に対する危機感と政策の加速
今回の会見は、政府がAI政策を強力に推進する重要な局面で行われた。政府は昨年12月、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」の実現を目指し、「人工知能基本計画(AI基本計画)」を閣議決定した。5月に成立したAI法に基づき、同計画は毎年改定される予定で、政府は今夏にも投資目標を盛り込んだロードマップを策定する方針だ。
また、高市首相はAI関連施策に1兆円規模の予算を投じることを表明。2026年5月からは、10万人以上の政府職員が政府向け生成AI利用環境「源内(げんない)」の利用を開始する予定だ。長期的には30万人を超える国家公務員全体に生成AIを全面的に導入する目標を掲げている。
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編集:佐野華美 (関連記事: 衆院選における「高市現象」をデータで分析 JX通信社・米重代表が説く有権者の意識変容 | 関連記事をもっと読む )

















































