【杜宗熹コラム】鄭習会談が示すもの 中台「平和統一」への布石か、中国の対台湾メッセージを読む

中国共産党の習近平総書記は2026年4月10日、北京の人民大会堂で台湾・国民党の鄭麗文主席と会談した。(写真/新華社提供)
中国共産党の習近平総書記は2026年4月10日、北京の人民大会堂で台湾・国民党の鄭麗文主席と会談した。(写真/新華社提供)

台湾の最大野党である国民党の鄭麗文(てい・れいぶん)主席(党首)と中国共産党の習近平総書記による「党対党」の会談、いわゆる「鄭習会談」が金曜日実現した。中台関係の取材に10年以上携わってきた「ベテラン記者」であり、前回、南京で行われた国民党・洪秀柱主席(当時)の訪中も現地で取材した筆者の目から見ると、今回の「鄭習会談」は、かつての元国民党主席・連戦氏、朱立倫氏、洪秀柱氏、あるいは馬英九前総統の訪中時とは明らかに異なるメッセージが発信されており、外部から慎重に読み解く価値があると言える。

10年前の「洪習会談」を振り返る

​2016年10月31日、洪秀柱氏が南京の中山陵(孫文の陵墓)を訪問した際、現場ではいくつかのハプニングが起き、筆者を含む台湾メディアの注目を集めた。中でも興味深かったのは、現地の中国市民が「青天白日満地紅旗(中華民国国旗)」を掲げていたことだ。いわゆる「国粉(国民党の支持者)」の存在は、洪氏の行程に少なからぬ彩りを添えた。

同時に、当時現場にいた筆者や多くの台湾市民にとって、洪氏の訪問を通じて初めて目にしたのが、習近平氏が新たに首相候補として抜擢した人物、当時の江蘇省党委員会書記を務めていた李強氏であった。浙江省出身の李氏にとって、それは初めての省外での勤務であったが、台湾系企業が集中する経済大省・江蘇省のトップという重責を担わされていた。当時の共産党幹部らは、李氏が将来「間違いなく大成する」ことを示唆していた。

案の定、それから間もなく、李氏はまるで「ヘリコプター」に乗ったかのような異例のスピードで上海市党委員会書記へと昇進し、中国最高指導部である中央政治局の一員となった。こうした大胆な抜擢とキャリア形成は、習近平氏が自身の施政上の必要に基づき、既存の慣例を打ち破る「大胆に壊し、大胆に築く」の指導者であることを証明している。その姿勢は、今回の「鄭習会談」にも色濃く反映されている。

緊迫する国際情勢と「鄭習会談」の前倒し

まず、国際情勢において重大な不測の事態が発生した。米国のトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が連合してイランを爆撃したのに対し、イランは世界のエネルギーと物資輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖・制御するという強硬手段に出たのである。

これにより、国内外の政治的打撃に直面したトランプ政権は、習近平氏との「米中首脳会談」を延期せざるを得なくなった。この事態を受け、習近平氏自らが「鄭習会談」を繰り上げて実施することを決断した。これが、今年の数々の「意外な展開」の背景にある。 (関連記事: 【10年ぶりの国共トップ会談】習近平氏は「統一」に直接言及せず、鄭麗文氏は「運命共同体」提唱 関連記事をもっと読む

国民党主席・鄭麗文氏(中央)が代表団を率いて南京の中山陵を訪問。(AP通信)
国民党主席・鄭麗文氏(中央)が代表団を率いて南京の中山陵を訪問。(写真/AP通信提供)

なぜ「鄭習会談」で直接「統一」に触れなかったのか?

​今回の「鄭習会談」において、多くのメディアが注目したのは、それが10年ぶりの開催であるという点だけではない。より重要なのは、中台双方の言辞が過去のものとは大きく異なっていたことだ。例えば、習近平氏自身は「中台統一」という言葉を直接口にせず、代わりに「アイデンティティ(認同)」と「中台の制度の違い」に重点を置いた。習氏が述べた「社会制度の違いは、分裂(独立)の口実にはならない」という言い回しは、極めて「巧妙」なものであった。

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