トランプ氏、ホルムズ海峡の「全面封鎖」を宣言 イランへの通行料支払船はすべて臨検・拿捕の対象に
2026年4月7日、ホワイトハウスで記者会見を行う米大統領のトランプ氏。(写真/AP通信提供)
米国とイランの和平協議が決裂したことを受け、米大統領のドナルド・トランプ氏は12日、「ホルムズ海峡の封鎖を直ちに開始する」と強硬姿勢を示した。さらに、公海上で「過去にイランへ通行料を支払った全船舶を拿捕(だほ)する」と表明し、波紋を広げている。一方、イラン国営メディアは、軍事侵攻に備えて同国南部の沿岸地域に特殊部隊を配備したと報じた。
トランプ氏は、パキスタンのイスラマバードで行われたイラン代表団との交渉が決裂した後、米海軍が「ホルムズ海峡を出入りしようとするすべての船舶」を封鎖すると表明した。さらに、国際水域においてイラン側に通行料を支払った船舶を捜索・拿捕(だほ)するよう米海軍に指示。「違法な通行料を支払う者は、公海上の安全な航行を保障されない」と断言した。また、この封鎖作戦には「他国」も参加すると述べたが、具体的な詳細は明かさなかった。
トランプ氏はSNSへの投稿で、イランがホルムズ海峡に機雷を敷設し、恐喝を企てていると非難。「彼らが求めているのは金、そして何より核兵器だ」とした上で、「我々や平和的な商船に発砲するイラン人がいれば、粉々に吹き飛ばす」と激しい言葉で警告した。米海軍はすでに同海峡での機雷掃海作業を開始しているという。トランプ氏は以前、側近に対し「海峡が完全開放されずとも軍事行動を終結させる用意がある」と漏らしていたが、今回その方針を大きく翻した形だ。
米イラン交渉決裂後、初の公式見解
『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙によると、トランプ氏は和平交渉の失敗について「多くの場合、合意形成は軍事行動の継続よりも望ましい。しかし、これほどまでに予測不能で移り気な相手に核エネルギーを委ねることと比較すれば、合意など無意味だ」と投稿。交渉チームや、仲介役を務めたパキスタンのムニール陸軍参謀総長、シャリフ首相の尽力に感謝しつつも、「イランは最も重要な問題(核開発)で妥協を拒んだ。数年前から私が言い続けてきた通り、イランが核兵器を保有することは断じてない」と強調した。
イラン側は沿岸部に特殊部隊を配備
イラン国営メディアは、和平交渉の決裂を受け、同国南部沿岸に特殊部隊を配備したと報じた。これは米軍による地上侵攻の可能性に備えた措置と見られ、迷彩服姿の兵士が海岸線付近に展開する写真とともに「敵軍の浸透に対処する」との声明を発表した。一方、米国防総省(ペンタゴン)はすでに中東へ数千人規模の海兵隊および空挺部隊を派遣しており、停火協議の最中も増派を続けていた。現時点でトランプ氏から地上軍投入の命令は下されていないが、一連の配備により、米側は武力行使を含む幅広い選択肢を確保している。
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米イ両国による「共同封鎖」の様相 ホルムズ海峡、事実上の通行不能に
『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』紙は、先週火曜日の停火合意発効以降、ホルムズ海峡を通過した船舶は極少数にとどまっていると指摘した。米政府高官は、イラン側が通過する船舶に対して「通行料」を徴収しようとしたと非難しており、トランプ大統領はこれを受け、イラン側に支払いを行った船舶を特定・追跡すると明言している。
しかし、米軍による封鎖を待つまでもなく、イラン側もこの重要航路における統制を緩める兆しを一切見せていない。そのため、トランプ氏が封鎖を命じたというよりは、「たとえテヘラン側に通行料を支払ったとしても、その船舶は米軍によって遮断される」という状況に陥っている。結果として、ワシントンとテヘランが図らずも「共謀」する形で、ホルムズ海峡を完全に封鎖しているのが実態だ。
根深い不信感、再交渉への含みも
分析家が同紙に語ったところによれば、米国とイランの対立は極めて複雑かつ根深く、わずか一回の交渉で合意に達することは当初から不可能に近かったという。
今回、米側の交渉代表を務めたJ・D・バンス副大統領は交渉の決裂を発表したが、バンス氏もイラン側の代表であるカリバフ国会議長も、将来的な再交渉の可能性を完全には排除していない。カリバフ氏はSNS上で、「米国は今回の会談において、イラン代表団の信頼を勝ち取ることができなかった。今後は、米国が我々の信頼を勝ち取れるかどうかにかかっている」と述べ、米国側の出方を伺う姿勢を見せている。
13日午前、ホルムズ海峡封鎖を本格始動
トランプ大統領は『フォックス・ニュース』の独占インタビューにおいて、米軍や商船に対して発砲するイラン部隊があれば、それらを「地獄へ吹き飛ばす(BLOWN TO HELL)」と激しい言葉で警告した。米中央軍(CENTCOM)も公式声明を発表し、米東部時間4月13日午前10時より、イランの港湾および海岸線を発着するすべての海上交通に対して封鎖を実施することを確認した。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は、中央軍がトランプ氏の掲げる「全面封鎖」という表現を実務的に微調整したようだと指摘している。同軍は「イラン以外の港湾に向かう船舶の航行の自由は妨げない」と強調。封鎖対象は国籍を問わず、あくまでイランの港に出入りする船舶に厳格に限定される見通しだ。
長期封鎖の実効性と「影の艦隊」への威嚇
一方で『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙は、この狭隘(きょうあい)かつ戦略的価値が極めて高い水域において、長期的な封鎖を維持することは「SNSの投稿ほど容易ではない」と報じた。
また、民主主義防衛基金(FDD)の上級研究員、マーク・モンゴメリー退役海軍少将は同紙に対し、軍事的なコントロールは可能だとの見解を示した。同氏によれば、米軍はすべての船舶を止める必要はなく、一定数の船舶を拿捕(だほ)することで「羊の群れを追い散らす(Scaring the herd)」ような威嚇効果を与えればよいという。これにより、イラン産の石油を運ぶ「影の艦隊」を撤退させ、イランへの経済的圧力を大幅に高めることができると主張する。ただし、モンゴメリー氏は「米国が単独でこれを完遂できるとは思えない」とも付け加えた。
トランプ氏はなぜ「封鎖」に踏み切ったのか
トランプ氏による今回の「最大限の圧力(マキシマム・プレッシャー)」は常軌を逸しており、国際社会全体を巻き込む形となっている。ブルームバーグ通信は、この措置が世界的な石油および燃料不足をさらに悪化させる可能性があると報じている。
では、なぜ同氏はこのような決断に至ったのか。トランプ氏本人の説明によれば、この封鎖措置こそが最終的にホルムズ海峡の自由な航行を回復させる手段だという。同氏は『フォックス・ニュース』の独占インタビューで、「これは『オール・イン、オール・アウト』と呼ばれるものだ」と解説。「将来、いつかすべての国が入り、すべての国が出ることになる。だが、パーセンテージで分けたり、同盟国か友人かで区別したりすることはない。全員が入るか、全員が退出するかのみだ」と持論を展開した。
「ハルグ島奪取」より低リスクな選択
トランプ氏は、この手法がイランの経済的生命線を完全に断つことができると主張する。米国の元外交官で中東特使を務めたデニス・ロス氏は『ブルームバーグ』に対し、海峡封鎖はイランの重要な石油輸出拠点であるハルグ島の奪取よりもリスクが低いとの見解を示した。
「イランにとってハルグ島は死守すべき場所だ。我々がそこを奪うことは可能だが、米軍部隊が極めて脆弱な状況に置かれることになる。それよりも(ホルムズ海峡の)封鎖の方がはるかに賢明な策だ」。また、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員クレイトン・シーグル氏は、拿捕された石油貨物は商品取引会社を通じて国際市場で売却でき、テヘラン側が利益を得られないような仕組みを確保できると述べた。
迷走する米国のエネルギー政策
米国政府は先月、石油供給への懸念を和らげるため、イラン産原油の一部販売を認める制裁免除措置を発表したばかりだった。しかし、トランプ氏は今回、それとは正反対の決断を下した。『ブルームバーグ』は、制裁免除が期限を迎える4月19日より前に封鎖が実施されたとしても、供給減少は避けられないと指摘する。
オブシディアン・リスク・アドバイザーズのブレット・エリクソンCEOは、「世界各国が深刻なエネルギー危機に直面する中、ワシントンの対応は完全に現実と乖離(かいり)している」と批判。「トランプ政権は自らを袋小路に追い込んでしまった。残された道は、アジアの同盟国に損害を与えるか、さもなくばイランが世界のエネルギー市場を略奪するのを傍観するかのどちらかしかない」と述べた。
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