米国およびイスラエルによるイランへの軍事行動を受け、1オンスあたり5,000ドルを超えていた金価格が、3月24日時点で4,300ドル前後まで急落した。なぜ金は「安全資産」としての輝きを失ったのか。
中国の国営メディア『中央電視台(CCTV)』が、匯泉基金(Huiquan Fund)のチーフエコノミスト、陳洪斌(チェン・ホンビン)氏にインタビューを行った。陳氏は、今回の戦地がペルシャ湾であり、石油供給の動脈を直撃したことが要因だと分析する。原油価格の上昇がインフレを誘発し、各国の中央銀行が金融引き締め政策を強化したことで金価格の下落を招いた。同時に、中東諸国による金売却がさらなる下押し圧力となったという。一方で陳氏は、「長期的には金が上昇しないことは考えにくい」とも強調している。
陳氏によれば、過去数年間の金価格上昇の根本的な原因は、世界的な通貨の過剰供給にある。実際の金取引において、戦争や衝突が価格に与える影響は極めて限定的であり、重要度の低い因子に過ぎない。また、その影響期間も非常に短いため、真の金取引において戦争要因を考慮することは少ないという。
金高騰の根本原因「世界的な通貨の過剰供給」
陳氏は、金価格がここ数年で1オンス1,600ドルから5,400ドル(一時は5,500ドル超)まで急騰した主要な原動力は、世界的な通貨の過剰発行であると指摘する。
2000年当時、世界の主要な流通通貨は約4兆ドルであったが、2026年初頭には52兆ドルまで急増している。世界各国が節度なく通貨を増刷し続けていることが、法定通貨の価値を相対的に下落させ、実物資産である金の価値を高めている本質的な原因であると述べた。

原油高が金価格を直撃するメカニズム
陳氏は、「戦争が起きれば金が上がる」という固定観念に疑問を呈する。戦地がどこか、誰と誰の戦いかによって影響は異なる。今回の衝突が特殊なのは、その舞台が「ペルシャ湾」である点だ。ペルシャ湾は世界全体の原油輸送の20%から40%、評価によっては実質的に90%を占める「世界経済の動脈」である。
なぜペルシャ湾がそれほど重要なのか。それは、市場で取引される高品位な「軽質・中質原油」の供給がここに集中しているからだ。ロシア産の軽質油は制裁下で市場から排除されており、ラテンアメリカ産の多くは欧米諸国と長期契約が結ばれている。また、欧州はウクライナ戦争以降、エネルギー不足に陥っており、外部へ販売する余裕はない。

つまり、世界中の買い手がいつでもスポットで調達できる場所はペルシャ湾しか残っておらず、そこが封鎖されれば原油価格は必然的に暴騰する。原油高は深刻なインフレを誘発し、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする各国の中央銀行は金融引き締めを余儀なくされる。
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金価格は通貨環境が緩和されるほど上昇するが、金融引き締めによって市場の流動性が収縮すれば下落に転じる。ペルシャ湾という特殊な地理的要因が、インフレを通じた「金の下落」という現象を招いているのだ。



















































