トランプ政権、イランに「15項目の和平案」提示で出口模索か 精鋭空挺師団の派遣準備と並行する「和戦両様」の構え
2026年3月24日、ホワイトハウスで記者団の取材に応じる米大統領・トランプ氏。(写真/AP通信提供)
中東での戦火が拡大し、世界経済が激しく揺れ動く中、トランプ政権は「壮絶な怒り」を収束させ、衝突回避のための「出口戦略(オフランプ)」を積極的に模索しているようだ。『ニューヨーク・タイムズ』が内部事情に詳しい当局者の話として報じたところによると、米国はパキスタンを通じてイランに対し、15項目の声明を含む和平案を提示したという。トランプ大統領は「イラン側は話し合いを望んでいる」と宣言した。その一方で、国防総省は精鋭の第82空挺師団を中東へ派遣する準備を進めており、米地上軍が参戦する可能性も再び高まっている。
核放棄を迫る「15項目の和平案」
『ニューヨーク・タイムズ』によると、この15項目の和平案の核心は、これまでのトランプ政権による要求を踏襲した「核開発計画およびウラン濃縮の完全放棄」だという。現時点でイランがこの計画を受け入れるか、あるいは交渉に応じるかは不透明であり、米国と共にイランへの爆撃を行っているイスラエルが同意する保証もない。しかし、トランプ氏は強い自信を見せている。同氏は24日、ホワイトハウスの大統領執務室で「終戦に向けた交渉が進行中だ」と述べ、イラン側も「合意を望んでいる」との認識を示した。
トランプ氏の最新の説明によれば、スティーブ・ウィトコフ氏や義理の息子ジャレッド・クシュナー氏だけでなく、バンス副大統領やルビオ国務長官までもが交渉に加わっているという。トランプ氏はイランを「軍事的な敗北に瀕し、交渉以外に選択肢のない悲惨な国」として描き、記者から「なぜイランとの停戦を検討するのか」と問われると、「彼らは我々と話し合っており、その言い分には筋が通っているからだ」と答えた。
イランの否定と米国の備え
注目すべきは、イラン政府が依然として米国との交渉を一切否定している点だ。イスラエルメディアが「ワシントンとテヘランの間で交渉が行われており、1カ月の停戦が発表される可能性がある」と報じた際も、テヘラン側はこれを否定。イランのガリバフ国会議長も23日、関連の報道を「フェイクニュース」として退けている。
しかし、イラン当局者4名と外交官1名が『ニューヨーク・タイムズ』に語ったところによると、テヘランとワシントンは仲介者を通じてメッセージを交換し、衝突の沈静化を図っているという。トルコ、エジプト、パキスタンなどが積極的に奔走しており、双方の立場には依然として大きな隔たりがあるものの、今後48時間以内の米イラン当局者による会談実現を目指しているとされる。
「第82空挺師団」数千人を派遣準備
外交的な駆け引きが行われる一方で、米国の軍事展開に緩みの兆しはない。ロイター通信によると、国防総省は米陸軍精鋭の第82空挺師団(82nd Airborne Division)から数千人の兵士を中東へ派遣する見通しだという。同師団は命令後18時間以内に展開し、パラシュート降下による突撃作戦を実行できる能力で知られる。具体的な派遣先や時期は確定していないが、ロイターは「イラン領内への進入」の可能性も排除していない。ホワイトハウスの報道官は「トランプ大統領は常にすべての軍事的選択肢を握っている」と述べている。
関係筋によると、国防総省は3,000人から4,000人の兵士を派遣する予定だという。これに先立ち、ロイターは数千人の海兵隊員と水兵が強襲揚陸艦「ボクサー(USS Boxer)」および随伴艦で中東へ向かっていると報じている。これらの増援部隊が到着する前から、米国はすでに同地域に5万人の駐留部隊を擁しており、緊急時の即応態勢を整えている。
イランのミサイル攻撃が激化、中東各国へ広がる波紋
米国やイスラエル当局は「イランの弾道ミサイル計画に深刻な打撃を与えた」と主張しているが、イランは24日、依然として広域への打撃能力を保持していることを実力行使で証明した。イスラエル政府によると、テルアビブがミサイル攻撃を受け、少なくとも3棟の住宅ビルが損壊し、6人が負傷。さらにレバノンからのロケット弾やドローンによる激しい攻撃を受け、イスラエル北部で女性1人が死亡、2人が負傷した。
影響は周辺諸国にも及んでいる。イラクのクルド人自治区では、イランの弾道ミサイル6発によってクルド人部隊の兵士6人が死亡、30人が負傷。バーレーンではイランのミサイルが直撃し、アラブ首長国連邦(UAE)軍の下請けとして働くモロッコ人1人が死亡、UAE軍兵士5人が負傷した。
深刻化するエネルギー危機、原油100ドルの大台へ
世界経済への衝撃も収まる気配がない。世界の石油輸送の5分の1を占める要衝、ホルムズ海峡の封鎖が続いていることに加え、ペルシャ湾の石油・ガスインフラが相次いで攻撃を受けたことで、24日の国際原油価格は再び1バレル=100ドルの大台を突破した。ただし、ロイター通信によると、ワシントンが「15項目の和平案」を提示したとの報を受け、25日早朝の米原油先物相場は約4%下落。停火による供給寸断の緩和への期待が市場に広がっている。
エネルギー危機を受け、各国も異例の対応を迫られている。フィリピンは「エネルギー国家非常事態」を宣言。韓国では国民に対し、シャワー時間の短縮や、夜間のスマートフォンおよび電気自動車(EV)への充電を控えるよう呼びかけている。英シェル(Shell)のCEOは、イランとの衝突が燃料供給を麻痺させる可能性があると警告。米石油大手コノコフィリップス(ConocoPhillips)も、カタールの油ガス施設を保護するようトランプ政権に求めている。
トランプ氏の強気と、冷ややかな米国内世論
トランプ大統領は戦況に自信を見せているものの、テヘラン側が依然として妥協を拒んでいることから、米地上軍が参戦する可能性は排除できていない。しかし、最大の懸念は米国内の支持の低さだ。トランプ氏は選挙前、「米国を新たな中東紛争に巻き込まない」と公約していた。
24日に発表されたロイター通信と調査会社イプソスの世論調査によると、米国のイラン攻撃を支持する回答はわずか35%(先週37%)に留まり、反対は61%(先週59%)に達した。軍事的な選択肢を握りつつも、世論の反発と公約の間でトランプ政権は難しい舵取りを迫られている。
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