トランプ米大統領は22日、自身のSNSを通じ、イランに対して最後通牒を突きつけた。テヘラン当局が48時間以内にホルムズ海峡を完全に再開放しなければ、米軍はイランの発電所を「撃破し、壊滅させる」と警告。さらに、「最大規模のものから着手する」と付け加えた。
英紙『フィナンシャル・タイムズ』は、トランプ氏が前日に軍事行動の「段階的な終結」を検討していると発言したばかりだったことを指摘。目標達成は「非常に近い」としていた当初の姿勢から一転、24時間足らずで民生用インフラの破壊を示唆する強硬姿勢へと転じたことになる。トランプ氏はこれまで、同盟国に対して護衛艦の派遣などによる協力を求めてきた。各国はイランを非難する共同声明は発表したものの、具体的な行動には至っていない。トランプ氏は21日に「米国はホルムズ海峡を守らない」と述べていたが、22日の発言はこれをも覆す「朝令暮改」の対応となった。
世界エネルギー市場への深刻な懸念
世界の石油および液化天然ガス(LNG)供給の約5分の1が通過するホルムズ海峡。2月28日に米・イスラエルによる対イラン攻撃が開始されて以来、イランによる船舶への攻撃リスクを懸念し、多くの船が通航を断念。事実上の封鎖状態に陥っている。
ロイター通信によると、先週の欧州の天然ガス価格は35%急騰した。イランは、イスラエルによる自国の主要ガス田への攻撃に対する報復として、カタールのラス・ラファン工業都市を標的に定めた。同拠点は世界のLNG供給の約5分の1を担っており、今回の攻撃による損害が完全に復旧するまでには数年を要する見通しだ。
壊滅的な打撃を警告する米側と、後退しないイラン
ロイターは、トランプ氏が攻撃を強行した場合、イランの電力システムは壊滅的な打撃を免れないと分析。テヘラン近郊のダマバンド発電所(出力2,868MW)、南東部のケルマン発電所(同1,910MW)、フゼスターン州のラミン火力発電所(同1,890MW)といった主要施設が標的となる恐れがある。また、南部沿岸には同国唯一のブシェール原子力発電所(出力約1,000MW)も存在する。
トランプ氏は3月11日の会見ですでに、「イランの電力システムを1時間で解体できる能力が米国にはある。再建には25年かかるだろう」と豪語していた。当時は「理想的にはやりたくない」としていたが、事態は最悪のシナリオへと近づいている。
米軍が検討する「4つの軍事オプション」の実態
ホルムズ海峡の通航再開は、言うは易く行うは難し。実際の軍事作戦は、一歩間違えば破滅を招くリスクを常に孕んでいる。米『ニューヨーク・タイムズ』紙は、米軍が取り得る軍事オプションについて詳細な分析を行ったが、いずれの手法も極めてリスクが高く、海峡の通航確保を確実に保証するものではないという。
オプション1:陸上の脅威火力の排除
第一の選択肢は、陸上から船舶の航行を脅かすイラン側の火力を完全に排除することだ。
米統合参謀本部議長のダン・ケイン空軍大将が同紙の取材に語ったところによると、開戦以来、イランのミサイル発射能力はすでに90%低下しているという。米空軍のF-15E戦闘機は、厚い岩盤やコンクリートを貫通し、巡航ミサイルを貯蔵する地下掩体壕(シェルター)を破壊するため、5,000ポンド級の大型地中貫通弾「バンカーバスター」を複数投下している。
また、ケイン議長は、一部の地域同盟国(国名は非公表)がアパッチ攻撃ヘリコプターを使用し、イランの「自爆型無人機(ワンウェイ攻撃ドローン)」の迎撃にあたっていることも明かした。さらに、低空飛行を得意とする米軍のA-10攻撃機が再配備され、激戦が続く水域でイランの「高速戦闘艇」の掃討任務に従事している。
しかし、こうした強力な軍事力の行使にもかかわらず、最大の問題は依然として解決されていない。それは、米軍による掃討作戦が続く今なお、ほとんどの石油タンカーや貨物船が、リスクを恐れてホルムズ海峡の通航を躊躇しているという現実だ。
オプション2:水雷の掃海
第二の選択肢は、ホルムズ海峡の掃海(機雷の除去)だ。しかし、この問題については情報当局と実務部隊の間で見解が分かれている。米情報当局はイランがすでに海峡に機雷を敷設したとみているが、国防総省当局者は「明確な証拠はまだ確認されていない」としている。
ジョン・カービー海軍退役少将は同紙に対し、イランが船体に吸着する磁性水雷や係留水雷、さらに磁気・音響・圧力を感知する最新の沈底雷など、約5,000枚の多様な機雷を保有していると指摘。「たった一枚の水雷が爆発するだけで、すべての交通を停止させるのに十分だ。恐怖そのものが航運業界を麻痺させている」と強調した。
一方、軍事専門サイト「The War Zone」によると、バーレーンに駐留していた米海軍の掃海艇4隻はすでに撤退。後継の沿海域戦闘艦(LCS)3隻のうち2隻(タルサ、サンタバーバラ)は今週、マレーシアやシンガポール周辺に位置しており、中東海域を離れている実態も明らかになっている。
オプション3:石油拠点「ハルク島」の奪取
大規模な両棲作戦を視野に入れ、インド太平洋地域から海兵隊員約2,200名がペルシャ湾に向けて急行しており、来週にも到着する予定だ。さらに来月には別の2,500名が中東へ派遣される。しかし『ニューヨーク・タイムズ』の分析では、第82空挺師団などの特殊部隊を投入して島を奪取したとしても、周辺に残留するイラン軍の激しい反撃にさらされるリスクは極めて高いという。
オプション4:タンカーへの武装護衛
第四の選択肢は、タンカーへの直接的な武装護衛だ。トランプ大統領は護衛を「単純な軍事演習」と呼んでいるが、専門家の見方は全く異なる。
マーク・モンゴメリー海軍退役少将の試算によれば、5〜6隻の商船を護衛して海峡を通過させるには、イージス・システム搭載の駆逐艦10数隻に加え、上空からの攻撃ヘリや戦闘機の支援が必要となり、航程には10〜12時間を要するという。
『ニューヨーク・タイムズ』は、1980年代のイラン・イラク戦争時の「タンカー戦争」を振り返っている。当時、米軍はクウェートのタンカーを護衛する「アーネスト・ウィル作戦」を展開したが、巡洋艦サミュエル・B・ロバーツが触雷して沈没寸前となり、駆逐艦スタークがイラク軍のミサイルで大破し、37名の米兵が犠牲となった。歴史的な教訓からも、武装護衛が「単純な演習」ではないことは明白である。
イランが長距離ミサイル投入、イスラエルの防空網を突破 欧州主要都市も射程内か
ペルシャ湾に戦雲が立ち込める中、戦火は予測不能な方向へと拡大し、従来の地域的な「レッドライン」は完全に崩壊した。
イスラエル国防軍(IDF)のエヤル・ザミール少将は、イラン軍が射程4,000キロに達する長距離弾道ミサイル2発を発射したと指摘。標的はインド洋にある英米連合の軍事拠点、ディエゴガルシア島であった。ミサイルは目標を外れたものの、ザミール少将は「これらのミサイルの射程には、ベルリン、パリ、ローマといった欧州各国の首都が直接の脅威として含まれている」と強い警告を発した。
イスラエル南部で120人超が負傷、核施設近隣に着弾
ロイター通信およびフィナンシャル・タイムズの報道によると、イスラエルは21日深夜、凄惨な週末を迎えた。イランのミサイルが防衛網を突破し、イスラエル南部のディモナとアラドの2都市に着弾。120人以上が負傷し、うち11人が重傷を負った。
特筆すべきは、ディモナがイスラエルの核施設からわずか13キロの距離にある点だ。攻撃を受けた2都市の周辺には、同国最大規模のネバティム空軍基地を含む多くの軍事拠点が点在している。
イスラエル軍にとって最大の失態は、世界に誇る防空システムが突破されたことだ。ロイター通信によると、軍報道官のエフィ・デフリン准将は、防空システムは稼働していたものの迎撃には至らなかったことを認め、「事件を調査し、教訓を得る」と述べた。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は声明で、「将来のために戦う中で、非常に厳しい夜だった」と苦渋の表情を見せたが、同時にすべての戦線で敵を打倒し続ける決意を強調した。
イラン側は「新段階」を宣言
今回の攻撃の成功に対し、イランのモハンマド・バゲル・ガリバフ議長は「イスラエルの空は無防備だ」と嘲笑。イラン革命衛隊(IRGC)空軍司令官のマジド・ムーサヴィ氏は、採用した「新たな戦術と発射システム」が米イスラエルに衝撃を与えたと主張し、戦争は「新たな段階に入った」と宣言した。
戦火の影響は他の周辺国にも及んでいる。サウジアラビア国防省は22日、首都リヤド付近に向けて発射された弾道ミサイル3発のうち1発を迎撃したが、残る2発は無人地帯に落下したと発表。また、カタール国防省はヘリコプターが「技術的故障」により自国海域に墜落したことを明らかにした。
英国海事貿易情報センター(UKMTO)は、アラブ首長国連邦(UAE)シャルジャの北約30キロの海域で、散積船付近で不明な発射物が爆発したとの報告を受けた。乗組員は無事であったが、航行の安全に対する懸念がさらに強まっている。